406話 意外な弱点
ダンジョンの第2エリア。
最初のエリアとやっぱり違うというかモンスターの割合に虫系が多くなっている。
これはちょっと面白いというか、防衛をせずにダンジョン攻略に力を入れれば襲撃してくるモンスターのバリエーションが先に分かるから、防衛が楽になる。逆に防衛に力を入れておけばダンジョン内のモンスターが分かるわけだからダンジョン攻略が楽になる?と、言ってもそれが正解なのか分からないので勝手に想像しているだけなんだが。
『流石に2回も狼のボスを倒す必要は無かったな』
『情報クランの仲間に検証してもらいましたが、ボスを倒してないと次のエリアに行けないようです!』
『結果的にあのクソ野郎が先に来てくれたおかげってのは引っかかりますが』
『ムカつくから話題に出すんじゃねえよ』
そんな会話をしながら道中のモンスター、主に虫なのだが、それを蹴散らしながらずんずんと奥に進んでいく。バリエーションで言えば虫がメインで狼の数は減ったので、結構トリッキーな動きをする相手が増えている。
甲虫は単純に硬い上に、いきなりの突進で不意打ち。蜘蛛は糸飛ばしてくるし、飛んでいるのは鱗粉飛ばしたり針飛ばしたりうざったい。とにかくまあ、虫って色んな生態がある訳で、狼の連中はスピードとコンビネーションだったが、特殊能力で攻撃してくるのがこのエリア。
うーん、それにしても虫かあ……。
『マップの構造も一緒見たいですし、もうちょっと先にボスがいそうですよ!』
『コンビネーションしてこねえから狼よりクッソ余裕だな』
『私としてはさっさと抜けたい所だけど』
『虫苦手ですか』
あんまり好きではないのは確かだな。地球を防衛するゲームや核戦争の世界にいる巨大な虫だったり、そういうのに出てくる奴とかは平気なんだが、リアルだと触れもしないし、見るのですらぞわぞわする。
『ゲームならまだ良いんだけど……最近のゲームってかなりリアルって言うか、リアルより造形が凄いからさあ』
『アカメさんの意外な弱点ですね!』
『そら、人間苦手な物の1つや2つあるに決まってるさ、シューティングゲームは苦手だったりな』
多少話をはぐらかしておいてボスの出現位置までやって来る。
何だかんだでそこそこの付き合いだし、連携も淀みなくなっているので簡単に来れたのだが、エリアが進むからと言ってモンスターがどんどん強くなるって訳じゃないみたいだ。
『さて、どんなのが出るかですね』
『マップは手抜きじゃねえか』
『無駄に凝ったマップでリソース使われるよりはマシですが!』
相変わらず余裕綽々だな、こいつらは。
さーて、どんな相手が出てくるかな。
パーティを組むなんざ、今までしたことも無いし、やろうとは思わなかったが、アカメがいるってので参加した。
最初に見た時はクラン対抗戦、上位入賞時に商人クランだかを運営に報告して露店周りの修正をしたうえで自分に敵対した奴を容赦なく相手にする所は尊敬に値する。
硝石の発見、銃弾、銃の製法、ギルドの発見と、ガンナーをやる上での情報をとにかく広めたプレイヤー。だからあのクソ野郎がぽっと出とかほざいた時にはマジでぶっ殺してやろうかって思った。ただ色々言われてたアカメが気にしてないと言ったらそれ以上出来る事は無い。
何で報復しないんだと聞いてみたら、情報を流したのは自分だからそういうのが出てきてもおかしくはないし、いちいち気にする暇は無いと言っていた。やっぱりずっとガンナーをやってきた人なだけあるわ。
(それにしてももうちょっと偉そうにしても良いだろうよ)
ついでに言えば装備品の執着も薄いのも不思議だ。銃を借りた事は借りたがあんなに反動がきつくて使いにくい物を貰っても仕方がないので返したが「いつでもくれてやる」って言われたが、そんなに銃をほいほい誰かにあげられる環境を持っているのもよく分からん考えだ。
そんなアカメは相変わらず一番前であれこれと辺りを探りつつ、立ちまわっているので、その背中を眺める。いつもの黒髪が見れないのは少し残念だが、あれも仕方がない事らしい。イベント片付いたら普段の姿を見せて貰おう。
『立ち回りはさっきと同じ、前がシャールと私、雑魚を散らすのに後ろにサンダースとアオメ』
作戦の立案によどみが無いし、立ち回りも俺のカバーをしてくれる、まさに理想的。しかも背中を任せても良い程に強いのだから文句が言いようがない。
『お、そろそろ出てきますよ!』
『道中の敵を考えると虫系のボスですかね』
『基本的にハンコマップだし、中央に行ったら出てくるんだろ』
1回やったのもあるので、狼の時と同じように一定の所に全員が揃うと、がさがさと茂みが揺れる音と共に、虫ボスが出てくる。
あー、すっげえ、リアル、ムカデなのかゲジゲジなのか分からんけど、やたらと足のあるぐねぐねした奴だが……。
『いやあぁぁ!?』
すぐ後ろからやけに可愛らしい悲鳴が響く。
流石に俺も驚いたので声の方向を向くと、アカメの奴が軽く放心している状態でボスを見ている。
『……マジか?』
『ああー、うん、あれは自分もきついビジュアルですね……』
『ちょっとアカメさん、呆けてる場合じゃないですよ!』
さっきまでしっかりした顔をして引っ張っていたアカメが完全に呆けて固まっている。確かにビジュアルで言えばすげえ気持ち悪いし、ダメな奴はダメな感じだが、そんなにダメか?
そう思ってぱっと出てきた虫ボスを見るのだが、いや、まあ、気持ち悪いわ……あのもぞもぞした足とか嫌悪感しか出ないし、こうなってきたらさっさと倒した方がいいだろ。
『やるしか無いだろ!さっさと起こせ!』
愛銃のリボルバーを抜いて、呆けているアカメから離す様に射撃してボスを引き付ける。うわ、きも!あんなにうぞうぞと足動かしてぐねぐね体揺らして接近してくるのは確かにきついわ。
『アカメさん、アカメさんってば!』
『サンダースさん、そこは任せますから!』
例に漏れず雑魚敵も沸いているので、前が俺1、後ろが2でどうにかやり過ごさないといけねえ。こんな事ならアカメから貰ってたアデレラを手元に残しておけばよかった。兎に角、アカメが復帰するまではどうにかこうにか時間稼ぎ……いや、時間稼ぎじゃないな。
『ここでぶっ殺したらオールオーケーじゃねえか!』
単純明快な事だったわ。
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