390話 イベント待機
「はい、ご苦労さん」
ガンナーギルドの受付でクエストの報告を済ませてからぐったりしている2人の背中を銃剣のストックでぐいぐいと押す。採掘が終わった後にちょっとレベリングしようって事で連れ回してやったら、あっさり弱音はいて、結構すぐに街に戻ってきたことになった。採掘メインの動きだったのでレベリングに関しては私もそこまで対応できる装備では無かったけど、それでもへなちょこすぎないか?
「まあ、ちゃんとHSノルマを達成したのは褒めてやる」
「ど、どうも……」
「今までは結構手抜いてくれてたんだな……」
結構疲弊しているせいでストックでぐりぐりと背中押しても全然動きが無い。VRだから直接的な疲労って訳ではないけど、精神的に疲れてぐったりしてるだけだな。色々やって何もやりたくなくなるあんな状態。
「もうちょっとレベル上げてから付いてきたいって言いなさい」
「はーいー……」
「レベルの割には頑張ったと思うんだけどなあ」
「ま、足引っ張らなかっただけでも十分か……ポンコツの奴に言って鍛えて貰いな」
そんな事を言いながら現状の貢献度を確認。レベルが上がれば上がるほどギルドのクエストをこなさないといけないので、一回やっただけで上がるはずもないので次のクエストをぽちぽちっと受けておく。HSを規定回数、銃撃での撃破、銃剣を使っての撃破……前々から思ってたけど、どっちかって言うとFPS系ゲームのクエスト内容だなよな、これ。
「新しい銃が欲しいなら、ポンコツに頼め、あいつなら私の元クランに話し通してくれるだろ」
「えーっと、本店の方だっけ?あそこって紹介が無いとメンバーに話すら通らないって聞いたけど」
「ショップで売られてるものしかださねえって言われた事あったな」
私の知らない所で私の作ったクランの知らないルールが出来上がってるんだが?猫耳の奴が新しいルールを作るとは思わないし、勝手にプレイヤー同士でそんな感じになったのか?
普通に考えてうちのクランメンバーってただただめんどくさいうえに職人気質なんだよな。だから生半可な装備だと、取り扱ってねえから露店でも行ってこいって真顔で言ってくる。で、大体あいつらの手が動くような面白い事って中々ないから、装備を作ってくれと言われても大体私くらいの無茶ぶりはないから、いまいちやる気が出ない。どうせそんなところだろう。
「売ってそうな装備じゃあいつら梃子でも動かんぞ」
「だってさあ、結構お金貯めたのになあ」
「面白い銃って言われてもな……」
「色々あるでしょ、ショットガンだけでも種類はあるし、リボルバーだって使用弾種を変えれば回転弾倉のショットガンになるわけだし」
そんな事を言いながらPウサ銃を肩に掛けて外出て軽く煙草でも吸いつつこれから何しようかと考えててた所、ポニテカウボーイの2人がこっちに振り向いて、もっとないのかって顔をして詰め寄ってくる。
「その発想は無かった……」
「じゃあじゃあ、ショットガンで使える物は!」
「調べたらいっぱい出るじゃないの……マガジン変えるなりスラッグ弾にするなり工夫しなさいっての」
こいつら銃を使えるってだけで職選んでやってやがるな。まあ、分からんでもないから強く否定することは出来ないし、浪漫ってモチベーションを維持するのに大事だってのも分かるが。それにしたってもう少し銃本体に興味持って使うべきなんじゃないか?
「銃の知識を覚えろとは言わないけど、ちらっとでも目を通しておけって……自由度の高い事が売りだから大体できるだろ?」
面倒くさい感じになってきたので2人を振り解いてからスーツをぴっと直してさっさとガンナーギルドを出ていく。ちょっとヒントを与え過ぎた気もするけど、これから先はあいつらの発想次第だから、何でもかんでも私が言うのは違う。
私を言った事を全部飲んで銃を作るなり、弾を作るなりしたらそいつは長くゲームをやる事はないな。自分で考えて自分で実行に移すって事が自由度の高いゲームの遊ぶコツだし。
「おや、こんな事を思いつくなんて私も変わったかな」
NPC相手、特に長い付き合いもしないプレイヤーとのIDなんてのが主流で、このゲームに手を出すまでは一匹狼していた自分の考えとは思えないわ。人間年とっても色々何かきっかけがあれば変わるもんだね。
そんな事を考えつつ、煙草を咥えてさっさと自宅に戻る。掘ってきた鉱石類を精錬して使い物にしなきゃならんって大事があるわけだし?作業自体は任せるだけだから特にやる事は無いと言えばないんだけどさ。とりあえず取ってきたアイテム、装備していた物をフィーラに渡してから一息。
「おかえりなさいませ」
「おう」
ふいーっと大きめに息を吐き出し、先にアイテムの処理してくれと指示を出してから次の事を考える。順当に考えれば闘技場、レース場か。イベントか何かあればそっちに力を入れたいところなんだけど、運営からのイベント通達もないし、なんとも何もない状況。
だからってまた対人系イベント来ても厳しいし、最初のような協力系イベントでもきてくれたらいいんだけど、望みは薄そうだ。
「ひたすらイベント開催するのも良いけど、息切れするから良い時期か」
自宅の庭で小休憩しつつ、てきぱきと作業をこなしていくフィーラを眺める。この優秀なNPCを外に連れまわせると楽しいんだろうけど、流石にその辺はアウトで、あくまでもゲームプレイの補助しか出来ないんだよな。三姉妹の所に行ってちょっとくらい交流してやろうか?まだ出てきてそんなに経ってないからのこのこ顔を見にきたってなると何かプライドが許せん。
「アカメ様、運営からのお知らせが届いております」
「次の全体イベントか」
前回のトーナメントは全体イベント……って言うよりも対人好きの人限定のイベントなので参加者も人口に対して少ない方だったしな。とりあえずどんなイベントだろうけど、ゲームを飽きるまでは全参加する予定だし、イベント期間だけ確認しておけば大丈夫だろう。
「アカメ様、貰った素材の加工が終わりました」
「弾頭に金を使って銃弾の作成、とりあえず50発」
「了解いたしました」
そう言うとてきぱきと銃弾を作り始める。リローダーでも作ったらもっと作業効率あがるかもしれんし、ちょっと検討しておこう。
「次のイベントは全体ランクみたいなものがあれば良いんだけどねぇ……今まで取れてなかった1位って欲しいわ」
用意されていた煙草を咥え、ぴこぴこと上下に揺らしながらイベントの詳細を確認していく。
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