391話 イベント開始
「うーむ、こうやってみると中々に壮観」
地べたに座ったままいつも通り煙草を咥えて紫煙を吹かしながら周りを見てそんな事を零す。今周りにいるイベント待機のプレイヤーを見ながらふーむと唸り、煙草の先を唇を動かして上下にゆらゆらと。
「お、ボス……やっぱ参加したか」
「そりゃまあ、参加しないって理由がないしな」
「向こうにはももえの奴もいたけど、顔合わせは」
「あいつはあいつで囲まれてるから来ないだろうし、来てもしゃーないだろ」
違いないと肩をすくめ、くつくつと悪い笑みを浮かべたトカゲが同じように辺りを見回してから私の隣に座って少し真面目な顔をしてひそひそと。
「で、何持ってきたんだ」
「これからライバルになる相手にばらすわけないでしょ」
「そりゃそうか……どこまでやる気なんだ」
そこそこの付き合いだってのにまだ私の事を分かっていないんだな、こいつは。そんなの1つしか無いだろうに。はーっと大きめにため息を吐きだしてから人差し指をぴっと立てて上に向ける。それを見てトカゲの奴はにぃーっと牙を見せる笑みを浮かべてから立ち上がる。
「負けねえぞ」
「言ってろ」
そのまま背中を見せつつ手をぷらぷら振って私の元から離れていく。
さて、今回のイベント、最初にあったイベントと同じようにグループ分けされて特設マップでの競い合いになり、全体ランク、グループ内ランク、個人ランクの3種がある。
そして前回と違う所がこのグループ分け。前回はランダムで振り分けられたが、今回は職別に分けられている。つまるところ、今周りにいるのは全員ガンナーって事になる。
人口的に人数が多い所が有利とされてるわけだけど、その辺はしっかり対策されていてモンスターの総数が一定らしい。人口が多い所ほど、人数よりもモンスターが少なくされていて、競争が熾烈。逆にガンナーを始めとした不遇系の職業はモンスターのほうが人数より多いらしい。らしいってのはまだ始まってないし、一応こういう感じですよーってイベント概要を流し読みしただけの物なのだが。
「さーて、どこまで通用するかな」
大きく紫煙を吐きだし、もう一度周りを見るが、やっぱりこっちをちらちらと見ている節はある。まあ、それもそうだよな、絶滅しかけたガンナーをやり続けたど変態だし、大会チャンピオンなんだから名前と容姿が売れてるって事だな。何で見てるんだろうとか、自覚のないアホではないさ。
とりあえず、このイベントはどうやって攻略していくかな。
最初のイベントと同じような感じでなのであれば、まずは周辺情報を集めてある程度情報を揃えてから動き出すか?単純に同じ職同士で放り込まれているなら立ち回り方も前回とは違うようにしないといけないし、結構考えなきゃいけない事は多そうだ。ま、何にせよイベントが始まってからそういう事は考えろって話なんだけどさ。
「あー、アカメさんだー」
「数日ぶりだな」
当たり前だがポニテとカウボーイの奴もいるわな。
ちょっと世話してやったら凄い懐かれたけど、お前らポンコツのクラン所属だろうに。
「私の所に来るのは良いけど、一緒にやるんだったらポンコツの所抜ける覚悟で来いよ」
「別に仲が悪いわけじゃないなら良いんじゃないのか」
「そうだけど、私としてはそういう覚悟の無い奴と一緒にやれるテンションじゃないわけよ」
今回と言うか、毎回そうだったけど私としてはずっと本気でやってきたから、ぬるくゲームをするって相手と噛み合わせが悪い。だからどっちつかずでクラン抜けてでもやるって気概が無いとこういうイベントでは付き合いが難しい。
別に本気でやっていない事が悪いわけじゃないし、一緒にやっている奴が本気かどうかなんてわからないが「ゲームになんか本気出すの?」みたいな奴とは組みたくはないし、付いてこれない奴の介護なんてもっとやってられん。
「ももえさんも言ってましたけど、アカメさんはガチ勢なんだよね」
「私はずーっとガチだよ、それに此処で勝てば事実上のガンナー最強だろ?今まで1人になってもやってきたプライドってのもあるんだよ」
「ならライバルだな、ここにいる奴ら全員相手にする気なんだろう?」
当たり前だろ、と言った顔をして頷いてから紫煙をふーっと細く吐き出し、あっちに行けと言う様に手を動かす。
「ももえの奴に言っとけ、お前も潰してやるって」
「ひゅー、かっこいいー!」
「俺たちは眼中にないって事か」
「視界に入りたいなら強くなりな」
ポニテの奴は相変わらず元気に手を振り、カウボーイの奴も一礼してポンコツの所に戻るが、顔は少し暗かったな。私が何かを教えないくらいに手の掛からん奴になったらライバル判定してやるかな。仲良しこよしは私の柄じゃない。
何て事を考えているといつものアナウンス音が響く。
『お待たせいたしました
これより職業別イベントを開催致します
イベント概要は公式インフォメーションに記載されていますが、改めて説明を致します
今回のイベントは特設マップによるポイントランキング形式となっております
職業別に拠点を一つ割り当てさせていただき、その拠点を防衛するという事を目的として行動してもらいます
勿論ただモンスターを狩ればいいという訳ではないので、その点も留意していただきます
期間はリアルタイムで2日 ゲーム内時間で1週間となります』
毎回イベントの期間が短いけど、週末に合わせるとこうなるか。まあ私も何だかんだで週末休みの方が楽だし、平日跨いでくるとどうしても社会人が不利になるから仕方がないな。
『さらに詳しいイベント内容につきましては
お手元のメニューからインフォメーションを参考にしていただければ確認する事が出来ます』
この辺に関しても特に変わらずって所か。
『それでは皆様、ご健闘をお祈りいたします』
そう言われると共にいつもの様に転移の光が発生して、その特設マップとやらへと転移が始まる。
転移自体そんなに時間の掛かる物でもないので視界が開ければ確かに拠点と言った感じの何とも頼りのない砦の放り出される。結構なプレイヤーがいたと思ったのだが、ここにいる人数が少ない?と、思ってマップを開いて周辺状況を確認。
なるほど、どうやら大本の拠点が最奥にあって、防衛線として砦が何個かあるようにしているのか。配置から「W」の字を浅くした感じだ。狩るだけじゃないのは防衛線を保ちながらって事か。周りもマップを開いたり辺りを確認し始めてざわついてきたので、私も移動して高所に移動しよう。
「いきなり襲撃されて防衛戦って事には……なるのか」
どのくらいの頻度で襲撃されるのか分からないが、砦から少し先、開けた平原があってさらにその奥の森やら山やらの地形からモンスターがこっちにやってきている。
「拠点を落とされたら終わりだろうし、初回の事を考えたらパーフェクトにイベントを終わらせないと上位には食い込めない、ついでに言えばモンスター討伐数も重要と」
個人で突っ切ってデスルーラを駆使してポイントを上げるってのもいまいち効率が悪そうだ。
それはともかく、まずは初めの襲撃をこなさないといけないか。
「……おっと、こんな事なら倍率のあるスコープでも開発するんだった」
こういう時に等倍だと使いにくいんだよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます