244話 脱獄2-1日目
白い光の輪、転移の証を眺めながら独房に降り立つと共に、まず自分の部屋を確認。
そこから全員の点呼が始まる前に、状況と1周目と同じ監獄かも確認。
確認ばっかりだけど、状況把握ってのは大事だからしょうがない。ついでにベッドの下も崩せるか見ておく、確かにちょっと脆いような感じもあるな。
あの土竜の方式で行けばトンネル掘るので大体3日~4日掛かるので、別の手段で今回は脱獄してみたいな。
そして、あれこれ自分の独房をあっちこっち叩いたり、トラッカーを使ってみたり、炙ってみたりしつつ、脆い個所を探しているうちに点呼が始まるので、ゲーム開始。
さて、今回に関してはトンネルを使っての方法はパスだな。
あれは時間も道具もいるからもっと楽に早く脱出する方法があるはず、じゃなけりゃ土竜と私が抜ける前に4人も脱出しているって話が証拠になる。
誰が何回目かも知らないし、もしかしたらそいつらが2周、3周って可能性もあるので、初見4日は早い方だと思いたい。
で、朝の点呼が終われば、独房に引きこもっている調達屋を探しまわり、さくっと発見。
「よう、ねーちゃん、何を探してるんだ」
「いたいた、何やりゃいい?」
「お、おう……じゃあ食い物でも……」
「分かった、取ってくる」
そこからはスピード勝負よ。
一気に食堂に走って行って、缶詰を拾った所にまでガンガン進んで、止められるのを無視しつつサクッと缶詰を入手、そこから数人看守をぶん殴って気絶させてから、追っ手をまいた状態で自分の独房に戻って布団をかぶっておく。
6時間ダウンではなく1時間ほど大人しくしていると警戒が解かれる。これもある意味のテクニックだな、覚えて置いて3周目に使えるようにしておこう。
「持ってきたぞ」
「はやいな……何か欲しい物でもあるのか」
「とりあえず10本煙草くれ」
「それは暴利ってもんじゃねえか?」
この辺も前回と一緒、胸倉使って鉄格子に引き寄せてガン垂れて、脅迫。
無事煙草10本を確保して、すぐさまに火を付けて一服。
前回で1日ちょいかかっていた行為をゲームスタートして3時間程度で揃い切ったぞ。
「後は脱出手段をどうするかって所なんだよなぁ……」
調達屋の話を聞く限りでは1周目と同じ要素で固定っぽいので、自由時間に西側の金網をチェック。
暇そうにぶらついているような感じに動きつつ、金網に尻尾を当ててちゃりちゃりと音をさせながら行ったり来たり。
脆いとは聞いたがどう脆いのか詳しく聞いてなかったから金網がさび付いているのか切れ込みが入ってるのか、どういう感じかしっかり確認しないと駄目っぽいな。
そんな事を思いつつ「カチャカチャ」と鱗と金網のぶつかる硬い音をさせながら西側の金網を探し回るのだが、もうよくわからん。もうちょっと押し込んだりなんだりしつつ、確認の方が良いのか?
昼前の自由時間に金網を確認しきるのだが、尻尾と音の感覚が分からないな。もう少し情報を集めるか、詳しく調べてから再チャレンジがいいかもしれん。
って言うか金網を突破するアイテムが無いから、其れの工作や入手をどうするかって話になる。
「……私の鱗でガリガリできないかな」
周りに人がいないのをちらっと確認してから、自分の尻尾を動かして鱗でがりがりと金網を削るように動かしてみるが、くすぐったいような感じでしかない。
まあ、そりゃそうだよな、キャラメイクで有利不利が起きるなら、それはそれで不公平って話になるわけだし、こんなに新規と古参の差を無くしているのにそれが残っているってのはあり得ないか。
「あくまでもキャラはキャラであって、そこに有利不利ってのは発生しないか」
しかもこの尻尾、結構意識して動かさないと動かせられないから実用性もかなりない。むしろ今まで座ったりなんだりする時に結構邪魔だったりするんだよな。
本来存在していないものを意識するわけだが、そりゃ難しいわって話よ。
「金網調べるのは続行しつつ、情報を集めるか……あと看守の服をかっぱらう事が出来るかも調べておきたいな」
看守になりすますってのは色んな映画やゲームでもやっている手法だし、それが再現できるかどうかも調べておかないと。
まだまだ調べて置けることは多いからなあ、前回は4日掛かった訳だから、今回に関しては3日を目処に脱出を目指すとするかな。明らかに前回よりも早いペースで攻略を進めているから、どうにか脱出方法と道具さえ手に入ればすぐよ、すぐ。
そもそもこの金網も余計な事しないで一番上にある有刺鉄線をどうにか突破できれば金網を切る必要も無いんだけどな。
「とりあえず金網突破の脱出は候補の1つとして、他にも何か情報が無いか集めとっかなあ」
自由時間も無くなったので、一旦昼飯。
昼食後の自由時間にもまた監獄の中を探索をトラッカーを使いながら探りつつのまた泥臭い情報収集を再開するけど……。
「やっぱ虱潰しだと時間が掛かる」
「何の話だ?」
「あんた看守の服とか持ってない?」
「そんなヤバい物持ってるわけないだろう……入手したいのか」
「あるんだ」
「北側に看守達のロッカールームがあるって言うんだが、そこで入手できるらしい」
「なるほどねぇ……」
情報量の変わりの煙草3本を渡し、また1本口に咥えて一息。
「もうちょっと楽に脱出できる経路はないの?」
「そういうのはちょっと、物がな」
「何をしたらいい?」
「この監獄で手に入るアイテムを持ってきたら、教えてやるぞ」
そういうと手渡ししてくる、紙切れ一枚。
「これは?」
「それに書いてあるアイテムを持ってきたら、脱出経路を教えてやれる」
「あるんならさっさと出しなさいよ、ったく……」
これも多分、どうやっても脱出できない人向けの救済処置なんだろう。私の場合、一度脱出しているし、新しい経路を手に入れるだけの手段になるな。
「それにしても、色々あるわね……」
受け取ったリストを確認しつつ、手に入りそうなところへと向かう。
上から下までリストを見て、どういう物を集めて来いって言っているのやらと思っていたが、どちらかと言うと食べ物や細かい日常品が多い。
缶詰、石鹸、靴下、下着、スプーンやフォークもあるな。
前回は木製スプーンを土竜が使っていたが、持ち出しできない特殊なマップなのでぺらっぺらのプラスチック製のスプーンとフォークもあったりする。
勿論それも回収リストにあるので、後で食堂に行ってかっぱらってくるか。
「今日で大体集めて、2日目で確認と道具を揃えて、3日目で脱出ってのが今の最短かしらねぇ……あー、やる事多いわ」
煙草を咥えた口の端をにぃーっと歪ませながらアイテムの徴収を始める。
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