9章
237話 火力こそパワー
大体いつも何かあって、イベントやっての繰り返しだな。まあオンラインゲームの日常ってこんなもんよね。
何かしらイベントが起こった方が飽きの解消にはなるから良いとは思うけど、若干のソシャゲ感もある。
毎週何かしらイベントを起こしてユーザーを減らさないような努力みたいな?
「もうちょっと何かしら別の事をやる……って言ってもなあ……」
属性弾の開発は現在進行形で思いっきり難航、何だったら座礁してるんじゃねえかってレベル。
貫通弾に関しては実は軌道に乗り始めている。作った弾の試射をしたら結構いい感じだったので、もう少し試してから実戦でのデータ収集段階に入っている。
別にすぐ実戦で良いじゃん、と言ったら無駄な職人気質が出てきたのか、納得できるものが仕上がらないと世に出したくないと言い出した。
材料的にもそんなに高級な物でもないので、量産して売る予定だったのだが、やはり誰かに売ると言う時点で見栄えを気にしていた。出来りゃいいのにと思っていたので、まさかあそこまでこだわるとは全然思ってなかった。
……って建前は言っているが、実際は最近苦労している闘技場の固定ダメージを防ぐ防具系の対策なんだろう。で、その防具によって完全に銃対策される前にまた撃ちのめして制圧したいって所だろ、どうせ。
「なんでもできるって自由度が高いから良いんだけど、高すぎるって問題もあるからなあ……」
クランハウスの2Fでいつものように葉巻を揺らしながらぼーっと考える。こういう中弛みの時にイベントがあればまた目標が出来て話変わるんだけどなあ。
とりあえずそんな事を考えつつシオンの頭をわしゃわしゃと撫でまわす。
「何かお知らせとか更新されてないの?」
「はい、運営からの公式インフォメーションが更新されています、閲覧しますか?」
「やっべー、うちの秘書超優秀じゃんー」
まあ、ゲーム内でも見られるんだから、そりゃ出せるよね。
……そういえば第二の街より先に行くって話、結局やってないんだよなぁ……あのクソアーマー倒してから弾の開発にのめり込んで、あれこれ材料取りに行ったり試作してたらすっかり忘れてたよ。
今からマラソンしてさくっと第三の街行ってくるか?突破力だけならジャンキーか髭親父がいれば十分足りるから連れまわすってのもありなんだが。
とは言え、私の我儘とごり押しを押し付けるってのも気が引けるので、やっぱ自力で突破しようか。そもそも考えてみれば、あれくらい1人で突破出来るだろって言われると思う。つーか突破しろよ私、それくらいの実力はあるのにサーチアンドデストロイやってるから余計な戦闘が増えるし大変になるって知ってるだろ。
「んー……またイベントやるのね、まあ大体1週間くらいのサイクルって考えれば妥当かあ」
シオンがメニューを見せるように私の目線の所でインフォメーションを見せながらゆっくりと上から下まで眺めていく。一応今回のイベントは追加生産分の新規勢向けにはなっているので既存プレイヤーとしてはまあいつものお祭り感が強い。
「そういや前回のイベントのポイントも使ってねーんだよなぁ……SP全変換でスキルの幅増やすか、新しい銃器でも仕入れるか……どーすっかなー」
こういうのって中々悩むんだよな。ってのを前に交換した時にも言っていた気がする。
「ポイントの交換一覧だしてちょーだい」
「かしこまりました」
交換レートに関しちゃ大体いつも通り。
武器、防具類は一律で50P、アイテム類が10P、SP1につき20P、武具類だけポイントの要求数は増えたな。
とりあえずSP5貰って、あとは100P分。
そろそろちゃんとした狙撃用のライフルでも手に入れるかな。ウサ銃でも良いと言えば良いのだが、ちょっと火力が物足りなくなってきた。
序盤の強力な装備もゲームが進むと入れ替わるからしょうがないっちゃしょうがない。って言うかいつまでも初期で手に入れた装備でやりくりする方がおかしいだけだが。
「さーて、何にするかなあ……Dボアとウサ銃も限界だしなあ」
銃器のラインナップのページを指で流しながら考え込む。
「なにやってんー?」
「私の新しい銃をどうするかって話」
「ほぉー、私これとこれ欲しい」
「てめえのポイントを使わんか」
「もう、ないでーす!」
そこそこイラっとしたからポンコツピンクを引っぱたく。
「いったーい!」
「痛くないだろ、まったく……」
「ぶー……職にあった銃の方がいいんじゃないのー?」
「そりゃそうだし、性能を求めてるのはゲームとしては正しいんだけどねえ」
葉巻を咥えて火を付けて貰ってから大きく息を吐き出す。
「だが、私にいわせりゃ、浪漫が足りん」
シオンがそれに合わせてパチパチと小さく拍手する。
「そこ、大事なの?」
「モチベーションってのはそう言う所が出るのよ……そういうあんたは何を交換したん」
「私はこれだけどー」
すちゃっと出した銃、ぱっと見はオートマチックピストルだが。
「……マシンピストルやんけ」
「流石ボス、よくおわかりで」
「名前なに?」
「んーとAG7、G4の後継機扱い」
「フルオートも悪くないんだけどなぁ……もうちょっと銃弾の余裕が無いと使うのこえーよ」
「サブマシンガン持ってたけど、あれはどうしたの?」
「自宅の2Fに置きっぱなし。消費に対して使うの厳しすぎるし、面白かったけどまともに使うのはきついわ」
そんな事をいいながらページをめくり、紫煙を吐き出しては肺に入れて繰り返しつつ、ライフルの一覧を見ながらどれにしようかなと。
「もー、ぐだぐだ悩んでもしゃーないじゃん、どうせただで貰えるんだし、すぱっと決めちゃいなよ」
「そりゃそーだけどさー……じゃあこれにしよ」
ポチっとな。
「で、なに?」
「110mm対艦ライフル」
メールで届いた100P分の対艦ライフルをインベントリから引き抜いてモデルを確認。
うん、でかいわ。大体全長が先から後ろまでで170㎝って所か。
「実用出来なさそう」
「こーいうのはね、浪漫なのよ、浪漫」
接近戦は拳銃を使いつつ、会敵前にライフルぶっ放すのが良い所だろう。
名称:110mm対艦ライフル 武器種:大型ライフル
必要ステータス:STR15 DEX20
攻撃力:+30 命中:(-125) AGI:-20 命中時固定ダメ:200
効果:単発 装弾数3発 金属薬莢 ボルトアクション 強反動 対重装甲
:武器持ち替え時、インベントリに収納必須 固定が甘い場合反動ダメージ
:固定した状態で撃たない場合は命中に大幅なマイナス修正
付属品:無し
詳細:対物用の大型ライフル、装備時大幅にマイナス補正
「頭わっるぅ!」
「こういうのがいいのよ、こういうのが」
「めっちゃ扱いにくいわー……ボスのFWSの方がマシじゃないのこれ」
「あれはあれで前提条件がきついからなあ、接射でぶっ放すと強いわよ、これ」
「それもったままじゃまともに動けないからきつくない?」
「じゃー、とりあえず試射しよーぜ、ほれ、付き合え」
「横暴だー!」
で、下の階の射撃場に。
この対艦ライフル装備したままだと階段降りるの大変だわ、どっかぶつけるわ、取り回しくっそ悪くて苦労したわ。
「で、あんたはその銃使ったの?」
「んー、そりゃあ、バイパーさんとここで試したよ?」
「ちぇー、つまんねーなー」
射撃台にガチャっと固定して的に狙いを付ける。
んー、アイアンサイトだからちゃんとしたスコープを作ってみないとだめかな。
とりあえず引き金を絞って一発。ガウンと大きい音をさせると共に支えていた右肩に衝撃が走る。
「うっわ、いってぇ……これだけで5ダメージ貰ったんだけど」
「的は粉砕されてるねぇ」
「すっげえじゃじゃ馬……気に入ったわ、これ」
「えーっと、通常ダメが60、固定ダメージが250だって」
この射撃場、優秀だからダメージいくつ出たかもチェックできる、あー、すげえいいわー、これ。
「防御0計算の的だから妥当かな……固定ダメ多いのは大型銃器のスキル」
「あ、そーだ、ボス、ちょっとライフルを置いて銃身を肩に乗せてくんない?」
「何すんのよ」
「宣伝かな」
嫌な予感しかしないが、付き合ってやるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます