238話 戦闘力の高さ≠実用性
「で、この画像上げてもいい?」
「はいはい、良いわよ」
何個かショップで言われた通りにSSを撮った後、肩にライフルを担いだままゴリマッチョ……の所に行く必要はなかったか……あまりにも作業場で籠ってるから存在をちょいちょい忘れてしまう。
裁縫の作業場、1Fショップの奥にあるわけだが、常に金髪エルフが真剣な顔をして集中しているってので微妙な名物になっている。イケメンが汗をかいているってだけで見れるらしい。あんなど変態のどこがいいのやら。
「おるけー」
「今、良い所なんで!」
何を作ってるのやら……とりあえずクランショップに並んでいる作った服飾を見ながらしばらく待つ。うーん、ちょっと奇抜な色使いのもあるけど、全体的に高水準な性能ではある。
そう、性能はぜんぜん悪くはない、なんだったら店売りで買うよりも少し安い上に性能がいいから全然ありなのよ。
ただ今着ているスーツに比べるとやっぱ弱いんだよなぁ……ゴリマッチョの凄い所って、デザイン良し、性能良し、価格良しの3拍子は勿論だけど、ゲームとしての防具、見た目としての防具としてしっかり高水準なんだよ。
あの金髪エルフはデザイン良し、性能まあまあ、価格まあまあなのよね。こういっちゃなんだけどもうちょっとゲーム脳になればもっと良い物を作れるんだろうな。だが敢えてそう言う事は言わない。分かってても言わない厳しさってのも大事なんだよ。
そんな事を思いながら、うちのクランショップに来ている客を眺めて、売れ行きを確認しておく。例の偽物騒動が終わってからは緩やかではあるが客足は伸びている。
ショップのラインナップももうちょっと整理整頓した方がいいかも?雑多を通り越してぐちゃぐちゃになってきているので品物を少し絞らないと。
サイオン姉妹が追いつかないレベルでぼんぼん新しい物をショップに並べるので、姉妹の1人はショップに付きっ切り、残りの2人のうち1人は銃工房か裁縫場で手伝いをしている。結局空きがあるのが1人だけで、私がいる時にはあれこれ指示するので残った1人が私の所にいる事になる。
つまるところ3人でぎりぎりの状態だったりする。
「もう1人ふやそっかなー……」
「終わりましたよ、アカメさん」
「やっとかい……じゃー、クラマスとしての仕事を頼むかね」
「お手柔らかに」
「こいつの反動が凄すぎて、支えてる肩に衝撃がくるからそれを抑えつつの装備が欲しい」
「……やけにごついですけど、どのくらい反動がくるので?
「数値で言えば5ポイント、今のスーツがこんな感じ」
名称:パンツスーツ(黒) 防具種:衣服
必要ステータス: STR5 DEX10 AGI15
防御力:+30
効果:衝撃耐性(中)斬撃耐性(中)魔法耐性(小)
詳細:一般的にビジネススーツとも言われるもの
:内部素材に革、金属糸等を使用している為、要求ステータスが高い
製作者:薫
「何ですか、この装備は……」
「あんたの元ボスが作ったオーダーメイドよ、防御力と衝撃耐性があるのに抜けてくるから、その辺の強化が欲しいわね」
「皮に金属糸、布ベースなのにこの完成度……どうやったらこんな風に……!」
頭抱えて唸りながらレシピを考えている。やっぱりここなんだよなあ、ゴリマッチョとの違いって。どうしてもリアル基準で考えるから、見劣りしてしまうってのがね。
「ゲームだから何でもできるっての、忘れてない?」
結局口出しちゃうんだよね。言われた本人は少しきょとんとした感じでそれを聞いてくる。
「ピンときてないか……現実じゃない出来ないことをするためにゲームをしてるでしょ?」
よっこいしょっと肩にライフルを担いでその場を後にする。
「じゃ、頼んだわよ、なるべく早く欲しいから」
「了解、作っておくよ」
ぱんぱんと頬っぺたを叩いて気合を入れなおして作業場の方に向かうのを確認し、満足そうにうなずく。私の言いたい事がちょっとでも分かれば、多分もっと良くなると思うんだよな。
それで私はと言うと、ライフルの試射をする為にいつもの実験場にやってきている。
一応立ち、しゃがみ、伏せの状態で撃ってみないとわからんし、動いている奴にどこまで偏差が必要かってのも大事なのよ。
で、やってきたのはいつもの北エリア1-1。兎と鼠のパラダイス。
とりあえず立ち状態で狙いを付けてそこら辺にいる兎に対して狙いを付けるのだが……重量がなかなかあるっぽく、全然照準が定まらない。
重いし長いしでかいしで、普通のライフルとして持つのは無理だわ、これ。でも選んじまったのはしょうがないので、1発ぶっ放してみる。
相変わらずの「ガウン」と言う銃じゃなくて砲としての音をさせて大きく体がぶれる。反動で支えている右肩の部分が思いきり押されるのだが、今回は15ダメージ。
「んがぁ、いっだぁ……!」
撃った瞬間に大きく銃身が跳ね上がるし、よくわからんところに飛んでいくわ、ダメージ受けるわで立ちじゃまともに使えん。
ベルト作って肩に提げながらだったらまだ実用範囲内って所かな。
後はしゃがみと伏せだが、嫌な予感しかしねえ。
「あー、いってぇ……」
結局35ダメージも貰って帰ってくる羽目になった。
立ちも伏せも一緒で、反動何て抑え込むことはできないし、反動ダメージがほぼ直撃、命中もマイナスだから知らん方向に飛んでいくわ、制御出来ないわで散々よ。
伏せ撃ちに関しては射撃場で撃った時と変わらないんだけど、単純にバイポットの開発しないと安定しないのでまともに当たりはしなかった。ただ反動だけは多少抑えられたので5ダメージで済んだが。
結果として、現状だと扱いがクッソ困る上に、扱えるまでの前提条件がFWSよりかは緩いが中々難しい。ただ、浪漫はある。外れた銃弾が木に当たったらへし折れたのでやっぱり大砲みたいなもんだな。
「反動ダメージってなんだろ、衝撃耐性が大きくなったら少しは軽減してくれると思うけど、金髪エルフに期待するっきゃねーなあ……」
ついでにいえばAGI値が0になると移動が出来なくなる。
ガンベルトにCHとG4、銃弾20発を提げているので-3の補正、さらにライフルの補正で-20、Agi値1のLv1状態と変わらない。ただ補正前のステータスを参照して、防具類は装備が出来るのはまだ助かった。
「やっぱアタッチメント作らんとだめかあ……反動抑制できる物とかあれば、さらに良いんだけど」
移動戦で使えるんだったらもっと実用が上がるんだけど、現状じゃまずバイポットだな。で、次にスコープ。せめて2倍率くらいの物を作っておきたい。
「ふーい……やっぱり色々あれこれ開発して何かやってる時が一番ゲームやってると思うわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます