228話 他人から見ると
散々だ。
そりゃもう散々よ。
ボスに引っ掻き回されてボスを倒しに行ったら大炎上。
いや、まあ、チャンネル登録者数と視聴者数は凄い増えたから万々歳だけど。
しかもその上で、大炎上ポンコツピンクチャンネルって名前変えたらどうだって思いっきり笑われたって言うね。
あまりにもしっくり来たから変えようってちょっと思っちゃったけど。
「ポンコツ、援護」
「またそうやってー!」
今日も今日とて配信をしながらボスのワンパンショーを配信する。
本日の獲物とやり方はいつも通りだけど、私が前線に出てボスを捌きながら良い所でFWS?ってので吹っ飛ばすやり方。
獲物の方に関しては中型のレッドパンサー。動きの素早い、でかくて大きい猫って所。
素早い相手に対しての実験も含めてやるらしいけど、その前に、私がガンフーになって35にもなったから、手に入れた奥義系スキルも見せていこうって話。
こういう情報は隠した方が良いとか言ってたのに何で公開するんだろうか?って思ったけど、そもそも配信してるからそんな隠す意味なかったよ!
あと、だんだんと要求してくることがきつくなってるよね!
ついでにいえば今日は犬耳っことボスと私だけだから私の負担くっそ重いんだけど!
「やっぱり獣相手ってのは厳しいと思うんですよ!」
「ヒーラーはいるから無茶は出来るぞ」
明らかにキャパオーバーになって、目がぐるぐるになっている犬耳っこが、私とボスの回復と補助をしつつ必死に立ちまわってる。
あの子も可哀そうだよなあ、ボスの知り合いから貸してもらった子って聞いたけど、まさかこんなに振り回されるとは思ってなかっただろうにさ。
あ、カバーが遅いって怒られてやんの、ぷーくすくす。
「ポンコツ、前!」
「おほ?」
あー、もー、食らったー、やっべ、ガンシールド割れちゃったよ、あーあー、バイパーさんにまた報告しなきゃあ!
「チャージは完了したけど、このままじゃぶっ放せないんだけどー」
「こっち、回復、あっち、補助、ああ、向こうは回復して……!」
「ブラック企業はんたーい!」
ガンフーの二次用スキルを使い、G4を2丁構え、向かってくるにゃんこの横っつらを蹴り払い、蹴った勢いのまま軸足で回転しながら、すぐに2丁拳銃で射撃。
当たって怯んだら接近してすぐに銃のグリップで殴り、たじろいだ所を殴っていない方の銃で追撃。
一度後ろに飛んでからのばねを生かした噛みつきを割れたガンシールドを噛ませて防ぎ、すぐに離させる為に射撃。
口を離した隙を見計らって空マガジンを落とし、新しいマガジンを二つ宙に放り上げてから、銃のグリップで殴るのに合わせて空中リロード。
とにかく接近戦でガンガン撃ち殴れる、これぞガンフー。もうちょっとガンカタだと思ったけど、違うみたい。
「何か知らん間に強いのが揃ってるじゃない」
「オートマチックしか装備できないけどー!」
噛みつきを上体を倒して、女の子座りでぺたんと背中を付けながら回避し、銃口で顎下をボスのFWSの射線上に持ち上げる。
「……もう、このクラン、わけわかんないんですよ!」
「違いないね」
ここ最近毎回見ている光速弾がにゃんこを貫いて瞬殺。固定ダメージ∞って暴力だよなあ。今はまだ私やマイカさんが前線を抑えられているからいいけど、抑えられない攻撃やもちーっと嫌らしい敵が来たら、戦法変えないとだめっぽい。
「三等分の経験値じゃ中々レベルあがんないわね」
「等分で全員じゃないかんねー、ドロップは?」
「いつもの感じでいいんじゃないですか?」
「そう言う事」
砲身を立てた状態にしてから思い切り葉巻を吸っているボス。ブラックマフィアだけど、かっこいいんだよなあ。
ブラックだよ。
もう、とことんブラック。
とにかくあっちこっち連れまわされるうえに、ヒールタンク扱いされるから信じられないくらいに神経を使う。
しかも兄さんと違って「じゃあ、こういう感じで」って言うものすごい雑な指示でアドリブであれこれさせてくるし、本当に大変。
「っていう訳で、早くそっちに戻りたいよ」
「相変わらずですね、アカメさんは」
家じゃ玄米茶ばっかり飲むくせに、このゲーム中は紅茶ばっかり飲んでいる。別に飲むのが悪いって訳じゃないけど、戦闘中にも一息入れるのは勘弁してほしい。ダメージ回復するのは僕なんだから。
「それで、楽しいですか?」
「楽しいわけないよ……あっちこっち連れまわされるし、回復が遅いと怒るし、適当にやれとか……具体性が無さ過ぎるし……」
「随分と楽しくやってるじゃないですか」
そんな事はないって言っているのに、どうしてこうも前向きに考えて言うんだろうか。こっちは前線で戦っている時よりも神経すり減らしてるってのにさ。
大体防御力も0、避ける事も出来ない。かなりの前提条件をクリアしなきゃいけない一撃を当てるためだけに駆り出されているってどうなんだ。
「兄さん達とあれこれやってる方が圧倒的に楽だなんて……」
「……1つ聞きますけど、アカメさんと何をやってるんですか?」
「ボスを一撃で倒すってだけですよ、これからもどっかの猫科のボスを倒しに行くって」
「道中も大変そうですが」
「機動力の高い前衛と火力のある後衛が2人ですから、突破力は凄まじいですよ……またこの3人がですね」
ああ、もう、また思い出したよ、突破力が高すぎて、モンスターハウスにも突っ込んでいくから、ヒールが間に合わない場合が多くなったし、いきなり進む道を切り替えて迷ったりもするんだった。
出向って形だからいずれは兄さんのクランに戻るけど、並みのヒーラーだったら数分で潰れるね。
「次は兄さんが一緒に行ってあげてくださいよ……かばうスキルでやってくれた方がよっぽどいいですよ」
「はっはっは……振り回されるので嫌です」
「……だから僕に押し付けたんでしょ!」
「さて、何の事やら」
くつくつ笑いながら紅茶を啜ってる時点で自供してるようなもんだよ……。
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