167話 日課は大事

「やっぱ慣れない事すると余計な事起きるわ」


 この間のイベント終わってすぐ、満足しすぎてシャワー浴びてさっさと寝たら風邪ひいたっていう。

 せっかく上機嫌だったのに2日くらい体調崩すとは思ってなかったわ。


「こういう時って一人暮らしは厳しいんだよなあ」


 レトルト食品と冷食買い溜めておいて良かった、いや、まじで……体調悪い状態で外に出るとか普通に死ねるし、下手したら救急車でも呼ぼうかって思うくらいにはゲロゲロな体調だとは。

 やっと体調が戻ってきたし、今後の事を考えながらまったりゲームしようや。


 とりあえず約束通りに訓練場と地下室の増設、樽の量産と木人形の生産は確実にやる項目として……えーっと……。

 

 庭増設が200,000Z?

 地下室3Fに200,000Z

 樽と木人形の製作費用が100,000Z~

 合わせて500,000Z~也


 あとあれだ、クランハウス。

 一等地の一番でかいので1,500,000Zくらいってのは確認しておいたので。


 全部合わせて最低2,000,000Z也



「やっべ、頭痛くなるレベル金額じゃん、私の使用総金額とトントンをまた手に入れないと行けないのか」


 家周りの増築で150万くらいで、後は細かい所で使ったのを考えれば200万はいってるだろうけど、情報売ったりなんだりってのもそろそろ限界だし、こつこつ稼ぐって手法しかない。

 いつものようにタブレットを弄っていれば「ピピピ」っと音が鳴るので体温計を取り出し、熱確認。


「36.8度、うむ平熱」


 若い時は風邪とか体調崩してもその日に体力とか戻ったからゲームしてだらだら過ごしてたけど、もう今じゃひたすら寝ていたいもんな。


 とにかく今後と言うか、暫くゲーム内でやらなきゃいけないことをピックアップして整理したうえでいつもの様にHMDに落としておく。


「2日休んだだけでゲーム内時間めっちゃ進むのよねえ……まあ、あんまし意味ないからいいんだけど」


 ああ、でも農業関係やったら日数は関係あるのかな。

 植えっぱなしで収穫しなかったらそのままって可能性もあるけど、その辺の仕様は確認しないといけないか。


「時限系のクエスト受けてるわけじゃないし、二日見なかったけどどうしたって言われるくらいか」


 HMDにデータも落としたし、家事含めて溜まり切ったものも全部終わったし、ゴミも捨てたし、掃除もしたし、これでゲームしても問題ないな。

 そういう訳でいつも通りにHMDを装着し、しっかり体に布団掛けて暖かくした状態でログインをする。





『To The World Roadへようこそ』



 久しぶりにログイン……っていうけど2日くらいなのでそんなに久しぶりでもないか。

 自宅の入口に光の輪を出しながらログイン、誰もいない自宅を見るのは久々な気もする。


 さてと、金策をして拡張するか。ついでにクラン員の状況を確認したら、2人ともまだ所属していた。

 てっきりマイカの奴は抜けるだけ抜けてフレンドとして私の家に入り浸って訓練場を使うと思っていたんだけど、そんな事は無いようだな。


 葉巻を咥えて火を付けて、紫煙を大きめに吸い、吐き出してから転移してエルスタンの街に転移する。


「あー、そういえば露店の状況確認しないと……修正案通ったっぽいからすぐ修正されたらしいし」


 まさかこんなに早く、手を入れてくるとは思ってなかった。って事は私以外の奴も何かしら修正案を送っていたか、そもそも運営側が修正の手を入れる予定だったって事か。

 それでもさくっと手を入れてくれる運営はなかなか好感が持てる。って言うか元々あの爆破事件の頃から動きが早いのは知っていたからそこまで悪い印象はないんだけどな。

 

「アイテム整理して、露店行って展開しなおしてから金策か……こればっかりはそれなりに長い期間かかるだろうし、先に農地広げてから大量生産していくのがいいかな」


 メニューを開き、処分するアイテムを決めつつ、毎回いってるアイテムショップに売買を済ませる。

 ちなみに煙草はやめました、代わりに葉巻を吸います。

 で、残っていたジャガイモ3,000個分の売却で150,000Z、細々した物も売却したうえで同じようにジャガイモの苗も購入。

 前回と同じように苗500個、50,000Z也


「もうちょっと自前でやりくりできるなら効率は上がるんだろうけどなぁ……まだゲーム開始1週間だし、手探りでやるしかないか」


 ちなみに店内だろうがなんだろうが、葉巻を吸っても怒られない。

 リアルでやられたらマジ切れするけど、これはゲームなので何にも言われない。非リアル感を味わってなんぼだからな。


 アイテムショップの用事は終わったので露店街にやってくる。

 お知らせ自体は道中確認したが、やっぱり区画整備と言う事で露店の配置に調整が入ったのは確定。露店自体が一度未展開になったのは、その区画整備で一度全員の露店を撤去した為だ。

 展開していたアイテムが消失するわけでもないし、インベントリに勝手に戻すと言う事も無いので、展開しなおせばすぐに復帰してくる。

 この手間ばっかりはしょうがない、大きい修正をしてくれたのに文句は言わないさ。


 あと露店街とは言っているが、単純にアクセスが良いってだけでみんな好き勝手に露店を起こしてる場所であって、その場で露店展開してアイテム回収でも良かったりする。


 どっちにしろどうせしばらくは目につく所で露店置いて硝石交換……も、しなくてもいいんだよなあ。硝石丘はあるし、イベントの関係で回収していたわけだから今更必死こいてかき集める必要も無し。


「それでもまあ、起こすだけ起こしておくか」


 露店密集地の所にいつも通りの文面と物を置いた露店を展開して完了。

 これであらかた休んでた時にやろうと思ってたことは終わりだ。





 相変わらず葉巻を吹かしつつ、ぷらぷらと街を歩き回る。

 そろそろガンナーギルドも探してどういう物かを確認しなきゃならんのもあったわ。


 ゲーム開始数日で銃と火薬を作って、一週間で爆弾と火炎瓶の量産をして数いるプレイヤーの中のトップクランとして名前は売れたと思うんだが、別に何かするってわけでもないからな。

 そろそろ二次職狙うのもいいかもしれん。


 なんだ、やる事まだまだあるじゃん。

 

「まだ第二の街にしか行ってないし、その先に行くってのもありだなあ……」


 いつもの様に街の中心にある転移地点近くにあるベンチに座ってマップを開きながら確認する。

 地盤固めばっかりやって、そろそろコンクリートになってるんじゃねえかな。

 結局何だかんだで一番楽しいのって安定させるまでなんだよ、安定しちゃって楽にボスなり攻略できると一気に作業感が増してくるので飽きが来る。

 かといって厳しすぎるのがいいのかって言われるとNOになるのだが、この辺のゲームバランスは難しい所か、人によって楽しみ方もやりかたも違うわけだから、全員が肯定できるゲームって中々ないわけだし。

 超有名なFPSタイトルとかも片方は得意だけど、もう片方は死ぬほど面白くないって感じるし。得意ジャンルでも得手不得手もでる。


「まー、とりあえず今はどうするかってのだなあ」


 葉巻を持ち、ぷはーっと紫煙を吐き出してから自宅に戻る。



「とりあえず稼いだ10万を貯金してジャガイモ植えるか」


 ついでに硝石も回収。


「なんか久々にみたな」

「風邪ひいて寝込んでたわ」


 ジャガイモ苗を植えるのと硝石を回収して玄関に戻ってきたら髭親父の奴がいた。

 どうやら新しい酒の仕込みを始めているらしい。


「で、何やってん」

「ジャガイモ以外の酒を造ろうと思ってな、どこかの誰かさんが全部使ったってのもあるが」

「そのおかげで2位なんだからいいじゃない……そういえば鉄砲玉は」

「ああ、あいつは犬紳士の所に行ってダンジョン攻略の手伝いしとるよ」

「先に訓練場って言うか、庭と木人形作ってやるか……あと私いない間になんかあった?」

「何人かクラン募集してるか確認しにくるのはいたが、それ以外は特にないな」

「物好きな奴がいるわねぇ……私はしばらく金策でこっちにいないから地下室は好きにしていいわよ」

「今と変わらんな」

「そう言う事」


 ぴっと指さし、正解と言う様に構える。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る