161話 ステージ6

 余裕のある時の撃ち合いってのは楽しいわ。

 個人的にバトロワ物は別パとか気にしなきゃいけなくて、疲れるんだよね。別に漁夫が悪いって事じゃないし、漁夫される方が悪いってのは大正義だけどね。


「あいつどんだけ、弾抱えてんだろ」


 数十メートルでの撃ち合いをしているわけだが、相手は相手で銃弾か?ぱっとみた構造的には火縄銃っぽいんだけど、トカゲの奴って事は刻印銃か。

 それにしても私が発見って言うか作り始めた刻印銃ってすごい発明じゃないか。火薬が湿気る事が無ければ確実に発火して撃てるって物凄い使えると思うのよ。


「流石に一発がでかいな、ガンナーってああいうのばっかりか」

「拳銃で20~30かな、パイプライフルが30~40ってとこ」

「通りで痛いわけだ」


 流石に撃ち合いしている近くに他のプレイヤーは近づいてこない。

 まあ、そりゃそうだよね、流れ弾で死ぬのも嫌だし、巻き込まれの余計なダメージってのも避けておきたい終盤戦なんだし。

 

「まー……ガンナーになったのかガンスミスになったのかは分からんけど……私以外の銃持ちを見たのは2人目かな」

 

 壁の横から撃ってくる相手をちらっと見て、すぐに隠れ直して葉巻で一息。

 横やりしてこないだけマシだけど、たまに別方向から魔法が飛んでくるのだけは気を付けておきたい。


「本当は移動したいんだけど、マイカの奴が来ないし、動くにしても動けないわねぇ」


 相手の出方と言うか銃口の向いている方向を見ながら火炎瓶に火を付ける。

 障害物裏に攻撃するのにやっぱ便利だわ、これ。


「炙り出して攻撃するか、移動するかだが……隠れられそうなのは南西の方にあるな」

「どうやったらこんなに廃墟が出来るのか不思議なんだけど」


 火炎瓶の投げ入れるタイミングを計りつつ、どうするかを考える。

 混戦と言うか、この撃ち合いをしている周りでも戦いは続ているし、移動中にやられる可能性も考えられる。余計な所に首突っ込んできた気がするわ。


 そんな考えを吹っ飛ばすかのように銃声が響き、隠れている所の壁を一部吹っ飛ばす。やけに威力が高い気もするけど、銃ってそういう物か。

 とりあえず連射できるのかどうか、どのくらいの間隔で射撃してくるのかを計算しつつ、リロードタイミングで火炎瓶を投げ入れて、移動してポジション取っていくのがベストか。


「やっぱ読み合いするの苦手だわ」

「混戦で他のプレイヤーもこっちに来ないってのがまだ救いだがな」

『そろそろそっち着けるよー』


 合流できるのはいいんだが、タイミングが良くも悪くもあるな。

 このままマイカの奴に相手の裏を取って強襲を仕掛けさせ、火炎瓶と援護射撃で殲滅していく方に切り替えるか。

 いや、それでも駄目か、トカゲがいるって事は鍛冶クランの連中がいるとして、あいつら馬鹿だから極振り装備とか持ってそうだし。


「マイカの奴、どういう突破力をしているんだ」

「私に聞いても知らんわよ」


 撃ち返させるために軽く顔を出して、あまり狙いの付けない雑な感じに撃ち、そのまま構えた状態で眺める。

 流石に撃って来いって誘ってるうちには撃って来ないか、多少なりと心得はあるみたいじゃない。

 私だったら確実に撃ち殺すために喜んで撃ち込むってのになあ。


「こんなに誘ってるのに撃って来ないのはどういう事だと思う?」

「装填しているか、移動したか、やられたか」

「どっちにしろ火炎瓶放り込んで移動しよう」


 こういう時にトラッカーを使っておくべきなんだろうけど、トカゲ以外も引っかけるからあんまりここじゃ効果的じゃないんだよな。

 そんな事を考えつつ、火を付けた火炎瓶を一度十兵衛に手渡して投擲でうまい事放り込んでもらう。

 いつものようにガラスが割れる音と、燃え盛る音を聞いて、一度周りを確認してからすぐに移動を開始。

 北西から西寄りの障害物に走り、また隠れて周辺の確認。

 なるべく他のプレイヤーがいない、少ない所を狙って移動するの結構大変だってのに。


『ちょっと、今どこにいるのよ!』

『えーっと、西の方に進んでるけど、鍛冶クランの連中強いんだもん!』

「トカゲ頭とエルフ、ドワーフがこっちに寄ってきてるぞ」

「ああ、もう鬱陶しいな……こっちはこっちで忙しいってのに!」


 パイプ爆弾に火を付けて近づいてきている顔見知りの所に放り込んで爆破。

 相変わらずの轟音と土煙、叫び声を上げさせながら余裕の葉巻を一息。


「キルログ出てないし、耐えたっぽいけど、暫くこっちには手を出さないと思ってくれんと割には合わんな」


 これ以上西に移動すれば、マップ収縮の関係で逃げ道が無くなるし、地味に追い詰められているのはこちだったりする。

 それにしても辺り一面にデスボックスが出るけど、すぐに処理されているのはもったいない。

 あー、あれに銃弾とポーションどれくらい入っているのか気になるわ。


『ごめーん、やっぱそっちいけんわ』

『北西側に抜けそうな方に突破して、マップ外周回って合流な』

『普通に一撃重すぎて相手してらんないんだけどー!』


 AD2極型だからそんなにきつい事は無いと思っていたが、そうでもないのか。

 回避しきれないとか、受けたときのダメージが大きいのか、どっちにしろマイカがきついっていう相手なんだからまともにやってりゃ勝ち目薄くない?


「やっぱ西に来たの失敗だったかな……っと」


 手持無沙汰になった他プレイヤーが1人こっちに来るので、銃撃、体勢が崩れながらも切りこんでくるのでいつも通りと言うか、対モンスター用に使っていた立ち回り。銃剣と銃身での受け防御を使う。

 素直な剣なら結構受けやすいからあまりダメージは抜けないけど、やっぱり結構体勢としては押し込まれる。

 十兵衛のカットを、と思ったが、別の相手に苦心しているのでたまには自力で戦わないといけないな。


 まあいくらゲームで補正が掛かっているとしても変則的な軌道じゃないし、普通の振り下ろし攻撃なら銃身受けで耐えて、引いたのを見計らって押し返し、すぐに接射に移るだけの作業に近いんだが。


「思い出したかのように銃剣、格闘使ってるわ」


 ガンガンと振り下ろされてる剣戟を耐え、上から押さえつけられる状態になった所で、銃格闘を使って蹴り飛ばして距離を開けさせてからDボアを抜いて速射2発。やっぱり接近戦には拳銃だな。

 ADS移動と構え速度の関係で機動力の高い銃と遠距離用の銃で二つ持つのが基本だし、それに準じてるって事だろうな。


 あとは何よりも連射出来るってのが強いので、瞬間的にダメージを与えられる量が違うのよ。

 スキルでバフ掛けたり、強襲して来ないのなら案外余裕じゃね?


 ポリゴン状になって消失して、デスボックスを漁ろうにも、次々……と言う訳ではないが、それなりにプレイヤーが入れ替わり立ち替わりで戦闘になるので、ゆっくり物色するのも難しい。

 

「タイマンなら簡単だってのになあ……ちょっとぎりぎりまで北西まで下がろうか」

「追撃はどうするんだ」

「まあ、どうにかなるでしょ、ここでやられるよりかはね」


 また次のプレイヤーの攻撃を受けていると、十兵衛がカットし、槍で一突き。やっぱり火力高いよな。


『あんたの回収難しいから、必死こいて抜けてきてくんない?』

『えー、ひどくないー?』

『こっちが持たないからしょーがないでしょ』

『しょうがないなぁ……じゃあ頑張ってそっちいくわぁ』


 こっちがしょうがねえんだぞ、まったく。


「よし、逃げよう、消耗がきついわ」

「で、どっちに抜ける?」

「北寄りの北西に一旦抜けて、そこから様子見て再アタックとしよう」


 油2個と松明2個取り出して、目線で投げろと合図を送る。

 初めて共闘して、そんなに時間は立っていないけど、私の考えている事を理解してるのか、すぐに追撃出来ないようにする地点に投げこんで、炎上させる。

 こんなに動けるのに何でファーマーやってんだろうな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る