160話 ステージ5

 そろそろ戦場の4分の3を周回。

 北西に回ってきて分かった事が1つあるのだが、よくよくみたらチェルの連中じゃん?

 で、ぶつかり合っているのはどっかで見た事ある顔だな。


 それよりなにより、あまりにも激戦なのか残っている建造物が殆ど破壊されているので、辛うじて残っている壁や瓦礫で様子を伺っているほうが問題になる。

 そんなに余波が発生するスキルとか地形変えるほどの威力の物があるのって結構やばそうだ。魔法だと水土辺りは当たりたくないし、威力が高すぎるとそもそも私自体が耐えられないかもしれない。

 今のところ短期決戦ですぐに決着がついているから、ダメージは少なく済んでいるわけだ。


「マイカの奴は突破出来てないわねぇ……」

「北東側よりも激戦区だな」

「細かいのも合わせて大合戦ねぇ……私としてはこのまま何事も無く、最終決戦に残りたいけど」

「それはっと……どうかな?」


 1人突っ込んできたのを十兵衛が捌いて、さくっと撃破。

 初めてかな、間近で槍捌きを見たけど目で追えないくらいに速かったぞ。


「あんたも隠し玉持ってるん?」

「槍持ちは大体同じことが出来るぞ、儂の場合は突きに特化しているだけだからな」

「そういえば何が出来るのかどうかって把握してなかったわ」


 普通に考えれば自分の戦力がどれくらいで何が出来るって把握するもんだな。シミュレーションやタクティクス系のゲームでもユニットの役割を考えて動かすわけだし。

 まあ、今更聞いた所でしょうがない、それにマイカと十兵衛の戦闘力には信頼しているから問題ないか。


「どこぞの塾にいるような奴の技だったけど」

「参考にはしているがな」


 やっぱりバイブルなのかね、あれって。いや、まあ好きだけどさ、私もああいう漫画って。

 とにかく誰か1人いるだけでぐっと負担が減るってのはチームプレイの醍醐味だよな、序盤は思いっきり単独行動して好き勝手やってたけど。


「これ以上先は障害物が極端に少ないから、見つかると大変だぞ」

「このまま西抜けて南に進むしかないわねぇ……しょうがない、腹くくって倒しながら進むか」


 あと20発ちょいしかリロードのに使える銃弾が無いから、戦うのは嫌なんだけどな。連射したらすぐになくなるし、乱戦だと回収できないってのが一番大きい。

 流石にボックス漁りながら何人も相手するって無理だわ。


「もうちょっと銃弾の楽が出来るならばんばん使って撃ちまくってるってのになあ……世知辛い世の中よねぇ」

「2発直撃で確殺する奴が世知辛いとか不遇なんて言っていると鼻で笑われるぞ」

「対人よりもモンスターの方がHP高いからねー、そのまま対モンス用の仕様引っ張ってきてるんだから強いのよ、次やる時は修正貰ってマイルドになるか、ガンナー人口が増えてFPSやるかの違いじゃないかしらねぇ」


 それでも鳳仙花だと銃剣が使えないので、持ち替えが結構手間になるんだよな。

 銃で殴っても大したダメージ与えられないし、何だったらそのままごり押されてやられるなんて可能性も高い。

 それでもMP多いから装填スキルごり押しでもいけるんだけどさ。


「さーて、それじゃあ西にいる大クランを片付けるとしますか」

「作戦は?」

「混戦の最中に火炎瓶とパイプ爆弾放りこんで、さらに混乱させるってのはどーかな」

「いつものだな」

「よく分かってんじゃない……『そろそろこっちから仕掛けるから合図したら私達の方に強行突破な』

『うーいー』


 緩いクランだな、ほんと。そのうちシノギとしてタピオカ屋でもやるってのもありだな。

 バフを掛けられるアイテム何て開発して、良いブツあるよって言いながら稼ぐってのもありだが、アイテム係は別にスカウトしなきゃならないな。


「こうさ、色々考えているわけだけど、余計な事を思いついて新しい事やりたくなるのは悪い癖よね」

「何を考えていたのやら……戦線に大分近づいたぞ」


 残っている壁に隠れながら、数十メートル先でやり合っている戦闘状態を見ながらふーっと一息。

 そろそろ葉巻の数も無くなってきたから、切れる前に片付けたいな。


「炎上効果って油と松明の組み合わせでもできんのかって思うんだけど、どう思う?」


 ウサ銃に持ち替え、壁の上に銃身を置いて構えつつ、インベントリから油と松明を出しておく。

 火炎瓶は爆破物ってカテゴリーだからボマー効果が乗ってると思うんだよね、油と松明だったら普通の炎上効果だと思う……多分。


「燃やせれば炎上になるんじゃないか」

「まあ、やったら分かるか」


 油と松明を渡して投げてもらう。移動中に聞いたが、投擲スキル持ってるならさっさと言ってほしいんだけど?


「職業LV30分って絶妙だよなあ、浅く広く、狭く深くのどっちかになるし?」


 葉巻を咥えたまま引き金を絞り、乱戦の中どいつでもいいので当てる。流石に混戦してる所に撃ち込んでもこっちにすぐに振り返ってやってこない辺り、すげえ楽。

 

「倒した奴の場所覚えてって、言ったら怒る?」

「分からんだろうに」


 横では油を投げ、容器が割れて辺りが油まみれになったのを見てから松明を投げ入れてる。おー、結構燃えるな。こう言ったアイテム効果って結構やってみないと分からんのよね。


 そんな光景を見ながら2発、3発と打ち込み、削って行く。

 まー、乱戦してるから一気に50ダメージ近く入るからがんがん倒れるわ。


 それにしてもこの倒したクランがどこの所属かってログが出ない方が問題だな、狙い撃ちして倒す必要が出たりするから敢えて出してないんだろうか。

 どれくらいの人数がいてどれくらい削ったかを把握させないってのはどういう意図なんだろうな。


「撃つたび倒せるのはすげー楽だし、楽しいわ」

「どこから撃たれたか分からないし、カモ撃ちなのは変わりないな」

『そろそろ突破出来ると思うわよ、良い感じに混乱してるし』

『じゃあ、そっちいくねー』


 5発撃ち切り、クリップの排莢音をさせてからまた5発押し込んで装填。炎上効果に銃撃、ついでに乱戦でのHP最大状態じゃないのも合わせるとこんなにも楽な事はないな。


「やっぱ銃弾回収できねえなあ」


 デスボックス化したのはがんがんけられたりなんだりで位置がずれるわ、スキルや魔法でボックス自体が消失していく。

 そんな仕様があるとは知らんかったが、回復されない様に回収されない様にするって手段を考えてみれば納得は出来る仕様だな。


「もうちょっとガンナーが参加してると思ったんだけど、そうでもないのかね」

「そんな事はなさそうだがな」


 そんな事を言うと同時に銃声が響き、十兵衛にヒットする。25ポを使ってる辺りダメージ的にはまだそこまで高くないので拳銃弾か。


「ガンナーって言うけど、どのレベルのガンナーかって話にもなるのよね」

 

 残骸の壁に隠れながらちらちらと撃たれた方向を確認すると、見知った顔が1人。


「あー、まさかの作り直ししたのかね……いや、まあ作れるって言うのならやりそうな気はしてたけどさ」


 混戦から少し横にずれた所いる奴が、懐かしい銃を構えてこっちを見ている。

 まさかあいつも火薬の量産に成功したとは……まあ、そんなに秘匿しなかったしいつかは生産してくると思ってたけど、まさかのガチ勢が参戦してくるとは思ってなかったわ。


「作り方も教えたし、興味があるって言うのならやるに決まってるか……」

「知り合いか?」

「名前は知らんけど、あの面は良ーく知ってるわね」


 銃口から溢れる紫煙と土煙が軽く晴れた時に見えた相手、四苦八苦していた時に世話になったよ、あのトカゲ顔にはな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る