123話 畑と硝石丘と樽と

  ゼイテに戻り、さっそくではあるのだが、転移地点で自宅へと戻ってくる。

 ダンジョンアタックしたりなんだりで途中で散水できなかったわけだが、それによる何かしらのデメリットがあるのかどうかもこれで分かるわけだ。

 とにかく久方ぶりに戻って来た自分の畑を見つめる。

 何度見ても壮観だよな、ジャガイモ50個も植えているのは。

 とりあえず収穫しよう、後の事は後で考えればいいし。


「まー、できるもんねえ」


 「あっ」という間に収穫、引き抜いてインベントリに放り込むだけだから何一つとして苦労もしないし、別に汚れたりもしない。リアルもこんな感じにさくさくっと収穫出来ればかなり楽なんだが、そこはゲームよね。

 そういうわけでインベントリに収穫しきった、最低品質のジャガイモ250個確認。これだけで12,500Z也。

 これでまたジャガイモの苗を50個買っておけば7,500Zの上りが常に手に入るわけだ。


「先の長い金策にも程があるわね、これ……もう金銭効率の高い作物とかあればいんだけど、あの髭親父に聞いてみるか」


 とりあえずやる事を更新しておき、やる事を済ませてからあれこれやろう。変な寄り道ばっかりで何一つ先に進んでないんだからな。樽一つ作るのにダンジョン一つ攻略するなんて思わなかったし。

 あとやる事としては、貝殻だったな。


「このままバケツに火掛けて燃やしていいんかな」


 インベントリから貝殻入りのバケツを取り出してから生活火魔法で火を付け、燃やしていく……わけだが、ちょっと待てよ。


「木炭作る時と同じ処理でいいか」


 単純に燃やしたら炭化と言うか、ゴミになってダメになる気がする。またいちいち南エリア2-2まで行って貝殻拾って戻ってくるのは流石に面倒くさい。

 錬金から木炭を作る時と同じように加熱処理を選択していく。貝殻を焼くだけで石灰できるってまあ便利よね。しかし硝石を作る為に石灰を作り始めたわけだが、使い所限られるよな、これ。

 一応畑にまく分と硝石丘の分で1㎏ずつキープしておけばいいかな。

 


名称:石灰

詳細:貝殻を焼いたもの 工業農業でも使い道が多い


 

 グラウンドの白線引きと言えばこれ、って位のイメージしかないのだが、案外使い道が多いんだろう。農業漫画とかで石灰を撒くのが良いとか見た事もあるし、あの髭親父がちらっと撒いておけばいいと言っていたのも覚えている。

 どこまで実装しているんだろうな、このゲームは。

 なんならもうちょっと魔法的な物も出てくると思ったのだが、そういうのもあまりないな。いや、それが悪い事じゃないし

 そういう訳でさくっと硝石丘に1㎏分の石灰を撒き、残ったものは畑に撒いてあっという間に消化する。これもそのうち量産出来る様になればいいんだろうけど、まずはアルコールだって。


『髭親父、いる?』

『いきなり失礼な奴だな、何だ』

『例の酒の材料ってどうなの』

『あれか、ファーマー仲間からもらったのはキープしたぞ』

『じゃあ私の準備が出来れば、ね。樽作るのがいまだに目処経ってないからそこがクリアできれば酒造に手を出せるわ』

『樽、か……儂はそっちのスキルはからっきしでな』


 後はやっぱり樽か。

 此処まで来たんだからさくっと作れれば良かったんだが、どうも躓く。たまにはご都合的にさくっと揃って色々出来ればよかったのになあ。


『ちなみにあんた、どんな武器使ってん?』

『槍だが、急にどうした』

『スペックはー?』

『攻撃100程度の槍だが、どうしてだ』

『いや、ちょっと前に見つけた銛が槍だったからさあ、いるかなーって』

『物によるな』

『まー、もう捌いてたらないだろうけど……とにかく樽が出来たらまた連絡するわ』


 そう言ってコールを切ってから硝石丘の確認、畑の確認してからゼイテへと戻る。





 それにしてもやっぱり銃弾の消費量ってのが予想以上に多い。ボスだけであればまだそこまで使わなかったが、一回の生産で大体50発、ボス戦とかダンジョンアタックすると30~40発は使用している。労力に見合わないな、本当に。

 アルコールと硝石の製造さえできれば水銀採掘だけで後はどうにかなるってのに。


「ああ、さっさと連絡してきなさいよ、あのおしゃべり忍者は」


 とりあえずこれからやる事として、とにかく樽だ。あとジャガイモうっぱらって所持金を増やして、新しい苗を購入して植えて、ついでに鉄鉱石の採掘をしないといけないし、減ってきた硝石も一旦増やさないといけない、水銀もこのままじゃ足りないから取りに行って、ガンナーギルドも探すのもそろそろ本格的にやらないと……。


「駄目だ、しばらく銃弾作るのはやめよう。畑と硝石丘、酒造をメインに据えてやるべきだ」


 いつもみたいにあれこれやるよりもしっかりと今やりたい事を消化しよう。硝石丘に関してはまだ成果が分からない上に、Wikiに乗ってる材料をアレンジして突っ込んでるからあれで完成しているかは分からん。

 

「って言うか、ガンナーギルドと銃弾の購入さえ出来れば畑に集中できるのよね……ギルドの場所が条件解放って言うなら私は見つけられるとは思うんだけど」


 私自身は本職ガンナーだし、銃弾関係のスキルと言うか権利もアンロックしているわけだから行ける気がする。って言うかいける。


「しばらくはエルスタンでファーマーやりながら街の探索もしていくか」


 残ってる煙草を取り出して咥えて一息。しばらくぶりに冒険者ギルドでクエスト受けるってのもありだな。街系の所謂報酬の少ない、簡単なものでも何かしらあるかもしれん。


「うーぬ……本当にどうしようか」


 インベントリや自分のステータスをいつものベンチに座りながら考え込む。

 ……そういえばスキルの確認してないわ、樽の連絡待ちの間に確認してみるか。



スキル名:ボマー レベル:0

詳細:【パッシブ】

  :爆破ダメージに補正

  :爆発物製造時に補正



 所謂、ダメージアップと製造にボーナスが付くタイプの物か。それにしてもこれ条件って何なんだろうな。多分回数的な部分でアンロックされた気がするけど、検証できないから何とも言えないのだが。

 それと合わせて残り3個のスキルルも見ておくが、何となく期待しているような物は無い気がする。



スキル名:2丁拳銃 レベル:0

詳細:【パッシブ】

  :拳銃種の2丁持ち時、命中に+5補正

  :取り回し動作に補正

備考:拳銃のみ限定


スキル名:曲撃ち レベル:0

詳細:【パッシブ】

  :正常射撃以外のマイナス補正を少し打ち消す

備考:フルオート銃には無効


スキル名:跳弾 レベル:0

詳細:【アクティブ】【MP5】【効果時間30秒】

  :発射した弾が「1回」反射する



 新しいスキルだが、取ろうと思うのは曲撃ちと2丁拳銃だろうか。なんとなーくだが、この二つは色々と夢が膨らむ例のあれが手に入る気がする。

 跳弾に関しては、まあ難しいよね。T2Wから考えてみれば多分反射角度とかも言ってくると思う。ただ、明らかに跳ねるわけないだろって角度から物陰の奴に当てるとかそういうのは出来ないっぽいきがする。やたらとバウンドするゴムボールのイメージが強いけど、そんなこったねえって感じ。


「んー……上げるべきところは二つかな、ボマーと跳弾は使い道が薄いし」


 銃撃で一撃で倒せるのであれば跳弾はいらない。今の所隠れてどうこうする相手がいないわけだし、突っ込んでくる奴にいちいち跳弾かまして撃つとか実績解除くらいでしかやったことが無い。

 ボマーに関してもそうだな、要所で使ってはいるが、あれを主力として使う気が無いから、取った所で腐りやすい。


「まー、無くてもいいからいいんだけど」


 とりあえず曲撃ちは取っておいても腐らないね。背面撃ちとかクイックドロウ的なちょっと特殊な撃ち方がしやすくなるのは、かなり使い勝手もいいし、パッシブだから腐らない。

 よくやったぞおしゃべり忍者、あの時私を吹っ飛ばして転がした事は許してやろう。


『あー、今いいっすか?』

『よし、許してやる』

『え?あ、はい、ありがとうっす……?じゃなくて、船作ったプレイヤーと連絡ついたっすよ』

『案外早いわね……いまエルスタンだけど、大丈夫なの?』

『残念ながら、第三の街のドルイテンにいるんすよね、いけるっすか?』

『転移代払うからゼイテかエルスタンって言ってよ』

『分かったっす、集合場所と時間決めてもっかい連絡するっす』


 そういうとコールが切れる。相変わらず唐突だな、あのおしゃべり忍者は。

 って言うかよくよく考えりゃ、おしゃべり忍者に樽の製法きいてやりゃいいんじゃねえのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る