25話 雑用開始

『To The World Roadへようこそ』


 いつもの音声を聞きながら東エリア1、2の安全地帯に降り立つ。

 リアル時間で15時。ゲーム内時間で1/6の12時。ゲーム内で丸5日経ったわけだが、やる事は既にリストアップしているし、そもそも時間とかあまり関係ない事しかしてないので、そのうち時限とか日数系のイベントなりクエストが絡む時まで気にしなくても大丈夫そうだが。


 とりあえず今回やる事はエルスタンで狙う街系クエスト、ログアウトした時に整理したデータをメニューでも確認しつつ東エリア1の方へと歩き出す。流石にあの苦戦した犬畜生には負けないだろう……多分。

 レベルも上がって、銃剣のレベルもこの間よりも上がっているし、戦い方も不意打ちから安定の受け防御の反撃。やってることは明らかに剣士系の動き方だよね。

 あと今までずっと受け防御と言っているが、それが正式名称かは分からない。このゲームの仕様上、とびかかりや速度の付いた攻撃に関してはダメージのボーナスが付与されるのでそれを打ち消している、そんな感じらしい。これも防御テクニックの一つらしく、なおかつ武器や装備の耐久度がないのも起因している。衝撃というか最低的なダメージはあるものの、加点ダメージを抑える為、ガチタンク以外前衛職は覚えておかないと泣きをみるとか。ちなみにガチタンクはそもそも盾受けが基本なので、それが武器なのか防具なのかの違いくらいともいわれてて、ダメージの軽減率が物によっても違うと、調べていると見つけた。

 

 そういうわけで、まあそれなりに危ない橋を渡りかけたが犬は余裕でボコっておいた。HPは6割残っているわけだし全然余裕、ちょっと受け防御しくじったくらいだし。


「片手間に倒せるくらいに強くなりたいか、火力がほしいわねぇ……」


 ふーっと一息付きつつあっという間にエルスタン入り、流石にこう何度も移動していれば嫌でもマップは頭に叩き込まれている。とりあえず冒険者ギルドに行ってクエストを受注しに行こうと思う。

 何だかんだであんまりギルドに来てどうこうするのは縁が無いというか、クエストとかクラン関係でしか用事がないのでやっぱり縁が無さすぎる。


「クランの情報って言うかデータも見ておかないとなあ……クランハウスとか買えるなら作ってもいいかな?マイハウスとかもあるとかきくけど、デスペナ分の金以上持った事ないし、そっちも縁なさそう」


 懐が寂しいのはしょうがない。ぶっちぎりで死んでるんだからね。そういえば実績システムもメニューにあるけど死亡回数とかで解除されないのかね、これ。まあ完全に不名誉実績だと思うんだけど。

 そういえば実績報酬はがっつりボーナスはないけど、SP貰えたり、ちょっと金が貰えたりと、それを狙うメリットはあるけど、そこまでゲームバランスを崩す物でもなく限定的な物もそんなにない。

 それでも昔は丸い箱のゲームで散々それ狙いのプレイもしてたけど。


「んー、とりあえず上から順番にクエスト受けてみるかな」


 クエスト自体は個別設定されているので、取り合いとかにはならない。まあクエスト受ける場所とか冒険者ギルドの近くにいかないと受注できないというのがあるのでは、おもいっきり混雑しまくってるのはあるけど。流石にリアルで丸一日経っているとは言え、まだまだこんなに冒険者ギルドでクエスト受けるのがいるというのが不思議ではある。


「ああいう混雑したとこは好きじゃないわ」


 一定範囲に入ればクエストの受注はメニューからできるのでそっちからぽちぽちと決定して受けておく。雑用や採取、討伐に探索、ちょっと斜め上のは謎解きだったりするが、全体的にがっつりとした報酬というわけではないので、NPCの好感度とかが関係してくるんだと思う。


「なんていったって試した事もやったこともないからわかんないんだけど」


 とりあえず狙っていた所のクエストをぽちぽちと受けておく。


「農家っていうかファーマー関係はここじゃ受けられないし、専門っぽいのよねえ……制限無しで受けられるものがあれば一番なんだけど、そっち系のギルドは場所しらないし」


 どうした物か、と考えつつもとりあえず達成できそうなクエストは受けておく、限定的な物でなければ特に時間制限も無いし受けておいて後でまとめて報告というのもできる。流石に現地で全部すぐに達成報告できますというのはできない様にしているが、まあそれはしょうがないところ。

 

「うーん……あるのは簡単な討伐と採取くらいかあ……採取クエスト受けるだけで採取のスキル貰えるのはちょっと魅力」


 スキル1と2と勝手に言っているが、採取やら伐採等は条件さえ満たせば取得がすぐできて、ひたすら製作やら収穫等でレベルを上げる方式なのでSPを使わないものを勝手にスキル2と言っているだけで多分正式名称は別にあるはず。

 こういうのはマルチとかPT組んでたりするとそこで通じる略語を話さなきゃならないのが面倒くさい所。その点、私はソロなので私が分かればオールオーケー、何て気楽なんだろう。傍からみたら寂しいとか言われそうだ。


「とりあえず採取スキルは取っておこうかな、ちょっと外でて薬草摘んでくればいいだけだし」


 また戦闘外のスキルが取れるわけだけど、別にデメリットがあるわけでもないので取り得。先に取っておこうと言う事で、さくっと採取スキルを取りに行く。



クエスト名:初めて採取

詳細:薬草5個の納品

報酬:採取スキルLv1取得



「別に苦労するわけでもなく、クエストマーカーも出るし、何ならこれで苦労する要素ないよね」


 何ならと言って南エリア1に来たわけだが、特に代わり映えはせず、モンスター的にも最初のエリアの中じゃ三番目に強いエリアなのでちょいちょいと単純なアクティブモンスターもいる。


エルスタン南エリア1

Lv3 ラット

Lv4 ラビット

Lv6 フライ

LV6 灰リス


 この中じゃフライ……大きい蠅なわけだけど、結構これビジュアル的にきつい、この中じゃ唯一のアクティブモンスター。でかいわりに素早いのが結構トラウマ級。こういうのが苦手な人の対策もできているので、設定でビジュアルの調整も可能だったりする。そりゃあ全年齢だしそういうのは大事だよね。


「でも、結構なトラウマものだよね、これ」


 銃剣を構えて早速という様に喧嘩を売ってくるフライを相手にする。ぶんぶんとなかなかの速度で飛び回り、体当たり攻撃をしてくる。これも正直いつもの様に受け防御で反撃を……と、思っていたら結構な苦戦。

 

「おとなしく北エリアいけばよかったって後悔してるわ!」


 今まで高レベル相手にしていたからとか、銃剣のレベルが上がったからとか言っていたが、単純に飛んでいるという部分で隙が少ない。受けて返しても相手は普通に飛んで体勢を立て直すから攻撃に転じるのが遅いと当たらない。ついでに言えば突きだけで倒すのが結構大変でもある。


「此処に来て、飛ぶ相手ってどうなのよ、まったく……!」


 こっちのHPが減る前に大体のパターンを見て、反撃するのはいつも通り。思い切って体当たりに対して突き攻撃を繰り出してカウンター気味に当ててみると、あっさりと命中し、ポリゴン状になって消滅していく。


「最初の数発でHP半分前くらいまでやられたよ、まったく……飛ぶ上に高速移動する分HPは低めに設定されてるのは助かったけどさ」


 座っていつもの自動回復しつつ、メモに対策というか攻略方法を追加しておく。DEXと銃剣のLV上げておいたの本当に良かったって思う。カウンターに関してはたまたま上手くいっただけなんで同じ事やってうまくいくかはちょっとわからない。もう数回やって具合を確かめて確立させるのもありとは思ったが、南エリアはまだ先に進む予定も無いのでさくっとクエストマーカーの付いてる採取ポイントで薬草五つを回収して戻る。


「動物は多かったけど、虫って蜂と蠅以外にもいるよなあ、メジャーな敵なの」


 蟻とか蛾とか蜘蛛とか虫のついた漢字は全体的に強いイメージ。状態異常が多いとか、ステータスにデバフ掛けてくるとか、そんなのもあるが、今の所力押しの奴らしか出会ってないので、先のエリアに進めば嫌らしい相手も出てくると思うっていうか出てくるでしょ。


 とりあえずサクッと冒険者ギルドに行って、クエストの達成報告を済ませると採取スキルが解放される。可能な限り、こういう取れるスキルは取得しきっておくのもいいかもしれない。


「効果は……草花を採取できるポイントが分かって、取れるって、まあ普通ね」


 このままガンスミスとかそっちになった方が楽しいかもしれない。

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