6話 アカメ、ガンナーやめるってよ

 あれから何度か銃剣で殴り合いをしてみたわけだけど。

 

 ラット一匹倒すのにHPの殆どを使う上に、回復して、倒して、回復して、倒すのを繰り返すのが、死ぬほど効率が悪い。試しにもうちょっと強いラビットと黒リスを殴ってみたが、倒せるわけもなく死にかけた。

 

 ついでにデスペナルティを調べてみたが所持金全額では無かった、マイナス額が5,000Z~レベル比例で増えていくうえに、現経験値の1割を持っていかれる。

 

 今更だけど、序盤で撃ちまくったのが本当に悔やまれる。まあでもしょうがないね、爽快感とか頭空っぽにしてぶっ放すの楽しいじゃん、楽しくないとか言うやつは不感症だよ、そう感じやすいだけだね、私は。

 


「でもどーするかなぁ……まさか北エリアすら突破出来ないし、下手したらLv1の別職とか生産職のほうが戦えるんじゃないかなぁ」



 とりあえずもう一度ガンナーの情報を整理しながら今後を考える。銃弾が一般的に買えるのはしばらく先のエリアだと仮定し、その間をどう凌ぐかがポイントになるわけ。

 


 1・キャラを作り直して無難にゲームを進める。

 2・銃剣でHP回復をごり押ししながら銃弾を仕入れるマップまで強行軍。

 3・詰み、T2Wは非情である。



「自作、するか」



 4・どうにかこうにか銃弾を自作する。



 そう、ガンナーの特性には『銃弾』と『銃』の自作が可能と言うのがあった。あとは材料とそれを作れる技術があればどうにかなるという事。その辺のリアル志向の銃キチとゲームの折り合いがよくなっていて大体の知識とゲームスキルがあれば再現できる。と言っても、ネットの情報を使ってゲーム内で材料を手に入れれるかどうかがポイントになるわけだけど。



「んー……火薬さえ作れれば火縄銃とかフリントロックなら魔法併用とかで行けそうな気もするんだけど、どうだろ」



 ものすごくざっくりと構造を言えば吹き矢と一緒。それが自分の息を使うのか火薬を使うのかって話で、あとはゲーム的な処理でうまい事なるらしい。リアル追求型も嫌いじゃないけど、それはそういうゲームをしましょうって話。拘る所は拘り抜いて、手を抜く所はいい感じに抜く。やっぱ神ゲーだわ、これ。



「と、なると後必要な物は……えーっと、銃身と銃床と、火薬諸々ってのを考えると、木工、鍛冶、錬金ってところかなぁ…火薬自体は調合でいけそうだけど」



 生産系だけはレベリングの仕様が違っていて、何かを作れば作る程、経験値が入り。スキルレベルもポイント使用ではなく、物を作りまくる事で上昇する。自前で素材を集めるのもいれば、装備を作成する代わりに素材やら代金を請求したり、しっかりとした共存関係が出来上がっている。

 

 生産職は素材と手間賃を貰えば経験値も金も稼げる。戦闘職は新しい装備を安く手に入る。これがWin-Winの関係というもの。

 

 ちなみに銃弾と言うカテゴリのアイテムなので、ハンドガンだろうがライフルだろうが大きさとかが違っても特殊な物じゃない限りは兼用できる。いいよね、こういうざっくりしたの。いちいち9×19mmとか.38スペシャル弾とか5.56×45mm弾とか設定してたら普通に発狂するわ!だいたい管理大変だし。ただ徹甲とかホローポイントとかダムダムとか劣化ウランとかそういう弾薬の種類はあるらしい。



「さーて……問題は全部自前でやるのかやらないのかって話なんだけど」



 コミュ力マイナスの私が関係性を築けるかどうかが最大の壁。っていうか基本的になんでも自分でやってきたから他人を頼る方法と言うのが分からない。が、私はそんな事を言うほど甘いゲーマーではない。

 

 そう、やるなら最後まで徹底的にやりぬく。むしろここで妥協する程度の気兼ねしかないならさっさと新しいキャラクター作ってやり直してる。

 

 逆境とか不遇とか知ったこっちゃねえ、どうしても駄目だったらその時考えりゃいい、なんてったってもう最速で4回死んでるわけだし、今更デスペナの一つや二つ貰ったところで金と経験だけ持っていかれるだけ。

 

 つまり逆を返せば金と経験さえ差し出せばアイテムは手に入る!天才だな、私。



「それじゃあ……」



 うむ、大体の方向性は決まったわけだから行動を開始しよう。



「ガンナーやめるか!」



 思い切り晴れ晴れとした顔でそう叫ぶ。急に叫んだせいで近くにいたプレイヤーがびくっと跳ねて此方を向いている。そりゃあ、いきなり叫んでやめるわ!っていわれりゃ驚くよね。まだゲーム開始してリアル4時間くらいだし。

 そうと決まれば行動は早い。手持ちのアイテムをざっとみて、木工、鍛冶、錬金に必要な道具と基本スキルを覚えに行くだけ。

 



 冒険者ギルドに行って木工、鍛冶、錬金に必要なアイテムが売ってる場所を確認し、ついでにそれぞれのギルドの場所も……っていうか売ってる場所がギルド。

 

 T2Wではギルド所属の有無は関係なく、行けば売ってくれる。じゃあギルド所属のメリットは、と言うと、ランクを上げる事でもっと高性能のアイテムを買えたり、判定にボーナスが付いたりと恩恵が結構多い。まあやめたり所属したりは別に制限がないのでその都度変えるというのもできるのだが、最大4つ同時に所属でき、最大まで登録した後の入れ替えには一定額の解除料と登録料がいるけど。



「あー、懐かしいなー、防具や武器が高額過ぎて買えないから自前で作って用意してたの思い出すわ」



 別のMMOの時、レアな装備品はユーザー間のマーケットで売買されていたが高額なうえ、店売りも結構な額で売られるのに、ドロップ周りは渋くて金がたまりにくいというのを思い出した。

 だから自前で確定ドロップする採取とか採掘で素材を集め、自分で作って装備してーを繰り返していたのをまたやるだけだ。


 手持ちのアイテムを売り、必要な道具を買い揃えるだけのZ(ゼニー)を用意し、ギルドに向かって買いまわる。流石にM2ラビットまで売るという事はしなかった。これがまあプライドって奴だよね。

 

 そういえばアイテムを詳しく見てなかったけど、M2ラビットのアイテム説明欄の所を見ていたら、クリップが跳ね飛ぶのを兎に見立てたから命名と書いてあった。



「うん、普通にゲームするより楽しくなってきた」



 一つずつ出来る事が増えるって成長を実感できるから楽しい。出来る事が増えるというのは世界が広がるという事だし。いきなりなんでもできたり高ステータスのゲームなんて最初しか面白くないし、ゲームやらなくていいじゃんってなるわけだし?まあ、現状は運営に踊らされている感が半端ないけど! 



「ああ、でも一応銃剣で戦うのもやらないとかなあ……カスタムできるしステの低下も無かったから適正スキルとか生えそうだし」



 カスタマイズもいろいろ弄ってたらスキル発生したわけだし、何かがキーになるのはたぶん確定。それを探していくのも楽しいだろうなあ。



「よし、頑張るぞ」



 運営の誤算があるとしたら、私に逆境と言うゲーマー相手に燃えるものを投下したくれた事だな。

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