乱数世界の魔法使い
秋月真鳥
第一章 封じられた大陸
黒髪の魔法医
第1話 魔法医と魔獣 序
昔々……というほどでもない、少し前のこと。
大陸の空を飛ぶ浮城、『星の舟』に一人の美しく若い魔法使いの青年がいた。彼は、魔法使いの学院である『星の舟』の中でも非常に優秀な成績を修め、卒業せずに研究者として『星の舟』にずっと残ることが決まっていた。
その美しい青年に、一人の魔女が恋をした。
魔女は青年に「地上に降りて共に暮らそう。」と請うた。
けれど青年はその願いを無下に断わった。
魔女は嘆き悲しみ、そして、青年に呪いをかけた。
その美しい顔が醜く崩れ落ちるように。
青年はその呪いを跳ね返そうとしたが、上手くいかず、結局青年の美しい顔は右半分が醜く崩れてしまった。
魔女はその様を見て満足げに高笑いして、浮城から飛び降りて命を断った。
青年はそれから、仮面をつけて生きるようになった。
呪いを解く方法を探すうちに、いつしか青年は年老いてきた。彼はついに呪いを解くことを諦めて、地上に降り、色々な村々を見回った。
そして、彼は魔法使いになる素質のある一人の少女と出会った。
彼は少女に問いかけた。
「私が恐ろしいか?」
少女は首を傾げた。
彼は仮面をとって醜い顔を晒して、再び少女に問いかけた。
「私が恐ろしいか?」
少女は目を瞬かせて彼の醜い右半分の顔に触れ、首を傾げた。
「痛い?」
「痛くはない。昔のことだから」
彼は答え、少女の手を掴んだ。
「私と共に来れば、家族には当分楽に暮らせるだけの金をやろう。お前は、私の花嫁になるのだ。」
彼の物言いに少女はしばらく考えた後、ゆっくりと頷いた。
彼は少女に、ゼルランディアという名前をつけた。
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