第8話
コンラードの話は驚くべきものだった。
何とクラリスが王家の養女となり、ダルハウジー王国の王太子の正妃として嫁ぐという、驚天動地の話だった。
家柄血筋から言えば、自国の現王ウィリアム王の王女や王妹が嫁ぐべきだ。
だがダルハウジー王家は金狼獣人族で実力至上主義なのだ。
能力がない者や性格の悪い者は、いくら家柄血筋がよくても正妃に成れないのだ。
だから能力のある家臣の娘を養女と言う方法をとるのだ。
自分の娘や妹なら、家のため国のために見殺しにする事も可能だ。
だが、有力貴族の娘を見殺しにすれば、謀叛を起こされる可能性もあれば、隣国に寝返られてしまう可能性もあるのだ。
だから実子の願いは無視できても、養女の願いは無視できないのだ。
その事は、ダルハウジー王家も重々承知した上で、学園に第一王女ゼノビアを送り込み、弟の正妃に相応しい相手を探していたと言うのだ。
そしてゼノビアに選ばれたのが、クラリスだと言うのだから、驚くなという方が無理な話だ。
「ぎゃあぁぁぁ」
「閣下を守れ!
奥に入り込ますな!
ここから先に行かすな!」
コンラードとクラリスの父娘が奥で密談している頃、王都クレア伯爵屋敷が獣人族の奇襲を受けた。
ハリファックス子爵令嬢ドナネがまたしても独断専行してしまったのだ。
どうしても殺す必要がある場合、ハリファックス子爵が指図していたら、確実に暗殺を成功させる、厳選した刺客を放っただろう。
だがドナネが選んだのは、腕自慢の傭兵崩れや暴れ者の獣人だった。
ドナネやその取り巻きが接触して雇えるのはその程度の者だけだった。
それでも獣人族だ。
身体能力は一般的な人族の比ではない。
しかしクレア伯爵家に仕えている武官が一般的な人族であるはずがなかった。
一代抱えの騎士や徒士は、それこそ一騎当千の戦士だった。
だから代々仕える譜代家臣も、切磋琢磨しなければ役職に就けないのだ。
召し放ちを恐れる譜代家臣は、努力しない子弟しかいない場合、能力のある養子を迎えるしかなかった。
たかが人族と侮っていた襲撃者は、次々と返り討ちにあった。
歴戦のクレア伯爵家家臣団は、殺さず捕虜にして、黒幕を吐かせた。
ただの無頼漢である襲撃者は、簡単に黒幕がドナネである事を白状した。
報告を受けたコンラードは、直ぐに捕虜を連れて王宮に向かい、襲撃の報告をした。
そしてウィリアム王から報復の許可をもらい、一騎当千の戦士で編成されたクレア伯爵家軍を率い、王都ハリファックス子爵屋敷を強襲した。
「悪逆非道にも、宣戦布告もせずに屋敷を襲ったハリファックス子爵を討つ!
だがクレア伯爵家は貴族の名誉を重んじる。
卑怯なハリファックス子爵への報復であっても、正々堂々と宣戦布告を行う。
貴族の名誉が少しでも残っているのなら、尋常に戦え!」
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