「あっ、ちょっと待ってください、


カルテを作るんで、仔犬の名前を教えて下さい。」


如月医院長に呼び止められた。






美奈子はうっかりしていた、一日立つのに家族の誰からも名前を決める話が上がっていなかったのだ。






見た目で犬種はなんだろうとか、何歳かが気になり過ぎて、名前を決める事を忘れていた…


いや、もしかしたら直ぐに飼い主が現れて居なくなると思っていたから、あえて名前の話を避けていたのかも知れない。






呆然と立ち尽くす美奈子を見て如月医院長が尋ねる。


「どおしました、大丈夫ですか?」






「あ、ああ…


犬の種類は何ですか?」






如月医院長が仔犬の顔に触る。


「そうですね、


ポメラニアンとパグの雑種ですね、


他の患者さんでいたんで間違いないですね…」








「お母さん、名前決めてなかったねー。」


今日子が割って入った。




「そうね…


後でいいですか?」






「あ、はい、それでは来月の予防注射の時に教えて下さい。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る