あやかしばかり~現代妖怪譚~

そらねこ

序幕

 鏡が割れると不吉なことが起きる。


 白蛇を見ると良いことが起きる。


 夜、カラスが鳴くと人が死ぬ。


 茶柱が立つと良いことがある。


 目の前を黒猫が横切ったら悪いことが起きる前触れ。


 夜に爪を切ると親の死に目に会えない。




 古くより延々と語り継がれてきた言い伝えや迷信。誰しも一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。


 その多くは、先人たちの残した知恵、戒めであることがほとんどだ。しかしその中には、人知では説明できない事象が隠れていることもある。


 それを引き起こすのは人外。


 妖怪、物の怪、魑魅魍魎ちみもうりょうと呼ばれる類のもの。




 妖怪なんているはずがない。


 そう思った貴方。


 本当にそうだろうか。


 誰もいないはずなのに、背後から視線を感じたことは?


 夜道を歩いていると誰かがついてきているような気配があったことは?


 別段寒くもないのに、急に背筋に悪寒が走ったことは?







 わたしたちとソレらは必ず関わって生きている。



 細く薄いえにしで繋がっている。



 鈍い者には一生気付かず、鋭い者は嫌でも認識できてしまう、そんな程度に。






 これは、摩訶不思議で奇々怪々なソレらと関わる人たちの、ある時は刺激的な、ある時は至って平和的な物語。

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