第9話 隣のおじさん
母から聞いた話ですが、この件が起きたのは私が子供の頃です。
また、幼い私を怖がらせたくない、という配慮から、私が大人になるまで、この件に関して母はずっと黙っていました。
私の実家の隣には個人で経営している、車の修理工場兼、経営者の自宅がありました。
工場を経営していた、おじさんは幼い私とよく遊んでくれました。
幼稚園から帰ると、仕事の合間にキャッチボールをしてくれたり、自転車の乗り方を教えてくれたのは、このおじさんでした。
しかし、おじさんの工場も平成不況の煽りを受け、だんだんと開いている事が少なくなりました。
しかも、自宅が火事で半焼する事故が起きたり、離婚して奥さんが出ていく、工場の閉鎖など、おじさんに様々な不幸が重なました。
そして、ある日、おじさんは亡くなり、葬儀が行われたのです。
おじさんが亡くなってから何年も経ち、私は無事成人して社会にも出てました。
ある日、帰省するとおじさんの工場と自宅は更地になっていたのです。
「工場なくなったんだね」
私が感傷に浸りながら、母に言いました。
すると母は、時間も経っているし、私も大人なので、当時起きた事を話してくれました。
おじさんの亡くなってから一週間経った日の事です。
そう、ちょうど初七日の夜ですね。
何故かおじさんが、母の夢に出てきたのです。
おじさんは母に、「一人で向こうに行くのは寂しいから、K君(私の本名)を連れていってもいい?」と、尋ねて来たのです。
勿論、母は夢の中で「絶対にダメ!」と拒否しながら、深夜に飛び起きたそうです。
もし、母が連れていく事を了承していたら、私はどうなっていたのでしょうか?
最後に母は「あの人、良い所に行けないと思うよ」と言いました。
何故、そう思うのか尋ねると「あの人、自殺だったのよ」と言いました。
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