第3夜 AVおじさんと火の玉

 これは私の友人のS君から聞いた話です。


 S君は高校生の時、学校が終わると真っ直ぐ帰らず、バイトに行ったり、バイトが休みの日はゲーセンや本屋で寄り道していたので、いつも帰宅する頃には日が暮れていたそうです。


 S君が通る帰り道には、大きな霊園がありました。

 霊園の側なので、夜になると交通量は少なくなり、かなり不気味ですが、その近道なのでS君はいつも通っていたそうです。


 そしていつからか夜になると、その道の隅に車を停めて、カーテレビでAVを観ているおじさんが現れるようになりました。


 勿論そのおじさんの事を、S君は『AVおじさん』と呼ぶようになりました。


 AVおじさんが現れるようなってしばらく経ち、S君もその人の存在をあまり気にしなくなりました。


 そんなある日、S君が霊園の側の道を通ると、いつものようにAVおじさんが車中でAVを観ていました。


(またAV観てるよ)

 そう思いつつ、S君がその車の横を通り過ぎようとした時。


 数十メートル先にある霊園の入り口の所で、青白い光がゆらゆら揺れていのが見えました。


 最初 S君は自転車か懐中電灯の光だと思っていたのですが、電球の明かりとは様子が違います。

 

 しかも霊園と道路の間を行ったり来たりしていて、懐中電灯などの照明器具を持っている人はみえないのです。


 ゆらゆら揺れているその光を、S君は火の玉だと思いましました。

 さすがに怖くなったので道を引き返し、違うルートで家に帰る事にしたのです。


 その時、去り際にAVおじさんの方を見ると、おじさんはじっとAVを凝視していて、火の玉には全く気付いなかったそうです。


 S君曰く、火の玉には驚いたけど、それに気付かないAVおじさんも、色々な意味ですごいと言っていました。


 

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