神様別に読む「古事記・日本書紀」

モンキー書房

『古事記』と『日本書紀』について

 日本最古の歴史書である『古事記こじき』が完成したのは、和銅わどう五(七一二)年のことであった。

 これは、古事記序文に太安万侶おおのやすまろという臣下が、古事記成立までの過程を記していたことで確認できる。

 それによると和銅四年九月十八日、今上天皇(第四十三代・元明天皇げんめいてんのう)が太安万侶に言ったそうだ。

稗田阿礼ひえだのあれめる勅語みことのり旧辞ふるきことばえらしるして、献上たてまつれ」

 それまで各々おのおの地方で伝えられていた神話を整理し、矛盾をなくし国として正しい神話を後世に残そうとした天皇(第四十代・天武天皇てんむてんのうのこと)の意思を汲み、稗田阿礼が語る伝承を太安万侶が書き起こした。

 そうして和銅五年一月二十八日、全三巻にまとめた古事記を元明天皇へ謹んで献上った、と書かれている。

 この序文のあとに、本文が始まる。



 対して『日本書紀にほんしょき』の成立年に関しては、日本書紀にその記述はなく、次に完成した『続日本紀しょくにほんぎ』に記されている。

 全四十巻ある続日本紀のうち、第八巻目に記述された養老四(七二〇)年五月二十一日の条である。

「これより先、一品舎人いっぽんとねり親王のみことのりをうけたまわり、日本紀を編纂した。ここに至って完成したので奏上した。三十巻と系図一巻である」(『六国史りっこくし 日本書紀に始まる古代の「正史」』遠藤慶太えんどうけいた

 残念ながら系図一巻は現存していないが、書名が『日本紀』ということを除けば、全三十巻あるのは日本書紀に当てはまる。

 天武天皇の治世十年(六八一)三月の条において、歴史書を編纂するよう命じられた、との記載あり。



 どちらも、もともとのベースは同じであるため似ているが、異なっている部分も非常に多いのだ。

 それを次章から、突き詰めて語っていこうと思う。



 出典

『日本書紀(一)』校注:坂本太郎さかもとたろう家永三郎いえながさぶろう井上光貞いのうえみつさだ大野晋おおのすすむ(岩波文庫)

『新版 古事記 現代語訳付き』訳注:中村啓信なかむらひろとし(角川ソフィア文庫)

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