第一記
(上)夢のうちに朋友と逢ふ
闇へ溶け込むような黒に身を包んだ面々が、
電気が
いたたまれなくなった
人間はいつか必ず死ぬ。保食神は、死者が出るたび悲嘆に暮れるほど若くもなかった。
その少女は帰り際、より一層、母親の喪服にしがみつく。父親の遺体を
「
その女性に、母親が声をかける。「園長先生……」
「
「はい……
「
微笑みを
「
「
「はい……」
弥兵衛と呼ばれたキツネは、一瞬で人間の女性に化け、斎場のなかへと入っていく。そのあとを追って覗きこむと、斎場のなかには見知った顔もあれば顔のない顔もあり、だいぶ賑やかになってきた。人間の参列者よりも、妖怪のほうが多いように感じる。これだけ
「ウケモチさん、このたびは……」
「
これ以上、稲穂を怖がらせるわけにいかない、と保食神は思い、とりあえず三つ目を帰らせる。玉串奉奠の終わったあと、保食神が弥兵衛と入れ替わりに斎場へ戻ると、こちらに気づいた女性がぺこりと会釈する。稲穂の母親である早苗が、
「
「
「受持さんはいいんですか?」
「あたしは……特別だから」受持は
「自由の
「そう……。一応、あたしも手は尽くしてみたけれど。どうなるかは、この子が成長してからじゃないとわからないわ」
「はい、ありがとうございます。お気持ちだけで充分です」
「その……」保食神は
「いえ。受持さんのせいではありません……」
「あたしも
…………。
……。
それから、十年近くの歳月が流れ、稲穂は今年、小学六年生へと進級した。いまでも稲穂は、ときどき同じ夢を見ることがある。
稲穂の足もとを、ニワトリが疾走していく。スズメは
そして棺の最も近くには、幼馴染みである受持
この夢は、稲穂が彩に声をかけようとしたところで、いつも終わりを迎える。そして、きょうも。
ときおり雷鳴が
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