リロード・オブ・リリーフ-Reload of relief-
紫雨
プロローグ-prologue-
Prologue(1)
聞こえてくるのは
それに耳を塞ぐことも許されず、慄く気持ちを押し殺して銃を握る戦場。死体は転げ、辺り一面を真紅の液体と共に埋め尽くす。まさに地獄絵図とはこの事だ。
しかし、この戦争は数百年前に終結した戦争とは訳が違う。一方はおよそ数百人といるのに対し、もう一方はわずか数人……いや、数機しかいない。
奴らは数だけでは劣勢であるものの、その強靭たる金属の躯体は警察の持つ拳銃では傷一つ付かないほどの防御力を兼ね備え。それに加えて、圧倒的な武器の量と感知能力、計算力を持ち、戦場を蹂躙する。
もはや人間ではない————まさにその通りだ。
相手は敵ではあるが人間ではない。SFに出てくるような宇宙人や異世界人ともまた違う。奴らは人類が自らの私欲の為に作り出した、ただの機械。もはや機械ですらなくなろうとしている造られた非生命体。
それが────汎用AI戦闘支配特殊兵機、通称、《ルーラー》。
人間のような二つの手腕を多種多様な武器とし、巨大で頑丈、且つ機動力の利くキャタピラで前進する。人間の頭部ような、横に長い楕円柱が乗せられていて、その中心に据える赤い眼光……もとい、超機能カメラが閃く。
そんな《ルーラー》の目的はただ一つ……〝人間を殺すこと〟。
その理由は不明瞭だが、国際的軍事力が散り散りとなっている今、その目的は容易く達成される事だろう。世界を征服され、人類はこの世から絶滅することだろう……。
だがしかし、それはあくまでも。
『彼ら』がいなかったら、の話だが──────
現にAIによる支配が始まって二年と数ヶ月経つが、人類は滅亡していない。人類が未だに生存できているのは、『彼ら』が大きな影響を与えていることはまず間違いないだろう。
その『彼ら』とは、即ち。
唯一、《ルーラー》との対抗手段を持ち、戦い合える存在。
英雄と呼称され、伝説や迷信とさえされている存在。
人間であり、人間を凌駕したような存在。
それ即ち────『彼ら』は人類最後の希望である。
しかしその力量は、この世界の最強とは言えるような強さではない。現在『彼ら』は《ルーラー》とやり合えるだけの技能を得ているが、恐らく今後、それ以上に強大な汎用AIが現れることは明白であった。
そう考えると、この二年と数か月────汎用AIの攻撃から逃れ、人類が未だ絶滅していないというのは奇跡的であると言えるだろう。何せ《ルーラー》たる存在以上の存在は、未だ確認されていないのだから。
だから『彼ら』は自覚しなければならない……………自分たちはもう一番(ヨタ)や二番(ゼタ)ではない、この世界で劣等な存在であることを。
それを忘れないために、下剋上であることを示すために。そして自分たちがした過ちを正すために。
『彼ら』は自戒として、自分たちのことをこう称したのだ。
その名も————【
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