オペレーション・オペレーターズ ~戦場を駆けるにはパートナーが必要です~
@tunonashi
第1話
◼️◼️◼️
『――前方約10メートル。柵を越えた先の下方通路に敵性反応です。数は3』
落ち着き払った声。
安定した声量で聞き取りやすく、声音からはなるべく感情を排している。それでいてこちらに伝わる情報には穏やかな温度が残っているのだから見事としか言いようがない。
「了解」
胸中でそんな感想を抱きながら、青年はひとつ頷いて言葉を返した。
そのやり取りだけで、自分が無意識に身体を強張らせていたことを自覚する。
口から軽く息を吸い込み、鼻から深く吐き出す。
意識的に行うだけで、心に余裕ができたように思われた。
いつの間にか握り込んでいた拳を解きほぐすように、少し汗ばんだ手を開き、軽く握り、また開く。
じんわりと温かく、掌に血の流れを感じた。
そうして幾ばくか感覚を取り戻した手で得物を握る。
『こちらで敵の視認ができました。事前の情報通りネズミ型が3体。――位置同期、いきます』
直後、知覚が拡張される。
転落防止柵の手前2メートルほどの位置で身を屈めている自分から、地面を隔てて斜め下の位置に3つの存在が感じ取れた。
構えた武器。
一見すると金属の棒のようなソレの先端から、まるで氷柱(つらら)が形成される早送り映像のように、鋭利な刃が精製された。
ふたたび、深く呼吸。
覚悟を決めて地を蹴った。
短い助走から軽く跳躍。
柵を足裏で掴むように片足で踏みつけ、一気に眼下へと躍り出た。
浮遊感。
身体の中心に自然と力が集まる。
血液が一瞬だけ沸騰したような錯覚を覚えた。
『――頑張って』
その声に押し出されるように、携えた刃を敵へと向かって突き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます