第187話『ノンコ京都弁を喋る』


魔法少女マヂカ・187


『ノンコ京都弁を喋る』語り手:マヂカ    






 もう一度ノンコに呪をかけた。



 京都弁を喋る呪。


 京都から来た野々村男爵の娘ということにしたので、京都弁を喋った方が自然だからだ。


「いやあ、東京の言葉は大変どしたから、ほんまに嬉しおすぅ(^▽^)/」


 魔法少女としてはまだまだのノンコだけども、わたしと付き合って一年余り、わたしに合わせるのは上手くなって、級友たちと楽しく話している。


「そやけど、なんで、うちの周りに人が集まるようになったんどすか?」


 昼休み、昼食後、転入手続きの為に職員室に行った帰り、囁くような声で聞いてくる。


「京都の野宮神社は縁結びで有名なんだ」


「そうなんどすか?」


「日本で五本の指には入るよ」


「そうなんや!」


「声大きい」


「あ、かんにん(;^_^A」


「ちょっとレクチャーしてやるから、中庭にいこ」


「うん」


 女子学習院は14000坪もある広大な敷地で、終戦間際の空襲で焼けて近衛騎兵連隊の跡地に移転した後は秩父宮ラグビー場になっている。建物もほとんどは木造二階建てで、校内のあちこちに緑があって、中庭だけでも小さな小学校の敷地並みだ。


 芝生にハンカチを敷いて、できるだけ楽しそうに話してやる。楽しいことなら、ノンコは実際の何倍もの力を発揮するだろうから。


「学習院の娘たちは大半が卒業したら一年以内に結婚するんだ。早い娘は三年の夏休みに見合いして卒業と同時に嫁入りする」


「そんなに早いんやあ! て、就職とかはせえへんのんどすか?」


「それが、この時代なのさ。だからね、みんな良縁に恵まれたいから、ノンコが野宮神社に関係があると分かって寄って来るのさ。側に居るだけでご利益ありそうな気になるんだ」


「クラスみんなが?」


「まあ、そういう風にブームを作って楽しみたいって、歳相応の無邪気さでもあるんだろうけどな」


「そっか、ブームやったら分かる気ぃするわ(^▽^)/」


「だから、適当に合わせて楽しい空気をつくってやればいいから」


「う、うん」


「霧子には、そういう明るい空気が必要だと思うしな」


「うん、それで役に立つんやったら、頑張ってみるわどす(^▽^)/」


 


「野々村さん、こちらにおいでですわ!」




 校舎の陰から級友たちが駆けてくる。手に手に奉加帳のようなものを持っている。


「野々村さーん! サインをしてくださいませえ」


「わたくしにも!」


「わたくしにもぉ!」


 どうやらサイン攻めにあいそうなので、ノンコを置いて、霧子の相手をしにいくことにする。


 さて、弁当を食べている間はいしょだったけど、いまはどこにいるのか?


 一応教室に戻ったが、予想通り姿が見えない。


 ひょっとして……自分の席に戻ると机の下にメモが入れてあった。


――礼法教室で待っているわ――


 礼法教室?


 後の時代の作法教室と思い当たるのに数秒かかったが、向かいの校舎の二階にあると徳川さんに教わって足を向けた。


 昼休みは、残りニ十分だ。




※ 主な登場人物


渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員


要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員


藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 


野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員


安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長


来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令


渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る


ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員


ガーゴイル        ブリンダの使い魔


※ この章の登場人物


高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 


春日         高坂家のメイド長


田中         高坂家の執事長


虎沢クマ       霧子お付きのメイド


松本         高坂家の運転手 


 

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