第137話『突撃!』

魔法少女マヂカ・137


『突撃!』語り手:マヂカ    






 十銭玉の威力は絶大だ!



 醜女たちは一円玉を頼りに、自分たちこそ『これ以上崩しようのないブス!』を自任していたが、戦後生まれの悲しさか、一円以下の貨幣価値など想像も出来ず、一円の1/10の威力に恐れをなした。正面から十銭玉の威力を目にした者は、瞬時に『醜』の字が霧消してしまい、普通のモブやNPCに還元されて昇天してしまう。


 昇天の間際にブスブスと煙を上げるのが、せめてもの醜女の意地であろうか。


 かろうじて直視することから免れた醜女たちは煙を引きながら地底深く千尋の底へ潜っていく。


「くたばれええええええどす! いてまえええええええどす! 黄泉の風穴は幾十、幾百に枝分かれ、枝に潜られる前に、いてまえどすうううううう! くたばれどすううううううう!」


 ジュババババババババババババババババババババ!


 ウズメは、四方八方へ首を回し、十銭玉光線を目につく限りの枝穴に照射する! 我々も見習って十銭玉光線をせわしなく照射するが、ウズメほど機敏になれず、一つ二つと見落としが出ているような気がする。


「ウズメ、もう少し速度を落とせない? 見落としがあ……」


「一気呵成に底を、あやつの奥つ城を目指さなあきまへん! 一刻も早よおに!」


 なにを、そこまで焦らなければならない?


「後ろから来る!」


 ブリンダが叫んだ! 首を巡らしてチラ見すると、見落とした風穴から醜女たちがわらわらと湧いて出て、背後を脅かしにかかる。


「喰らえ! 十銭玉こーーーーーせーーーーーーんんんんんんんんんんんんんん!!」


 ジュババババババババババババババババババババ!


 裂ぱくの十銭玉光線をお見舞いする!


 しかし、この新手の醜女どもは、たじろぐことなく眉間の一円玉をかざしながら突き進んでくるではないか!?


「ウズメ、十銭玉が効かないぞ!」


 ブリンダが、バリアを張りながら叫んだ。


「あれは……一銭玉どす! 十銭の1/10! 口惜しいけど、しばし撤退どす! バリアを最大にして回れ右いいいいいい!」


 三人、バリアを前方に集中し、音速で突き抜ける!


 させるものかああああああ させるものかああああああああ


 呪いを呟きながら、醜女たちは次々に襲い掛かってくる! バリアはバチバチと音を立てて弾いていくが、一銭醜女たちは、数を増すばかりで、まるで、イナゴの大群に盾一枚で立ち向かっているようなありさまだ。


「ク……方向を見失う」


「ま、前が見えない」


 ズコ ゴッ ゴツン ガツン ボコ ドゲシ ガシッ


 風穴の側壁にぶつかり、並んだブリンダともクラッシュして、このままでは自滅と思った瞬間……。




 ズボボボボボーーーーーン!!




 数多の一銭醜女たちをまとい付かせながら、風穴を飛び出た。


 なんということだ、風穴はあちこちに広がり、そこから、無数の一銭醜女どもが雲霞の如く湧き出してくる。掲げたバリアは、半分ほどに擦り減り、これ以上の進撃はおろか防御も困難に思われた。


 醜女どもは、ほとんど満天を覆うほどになり、醜女どもの瘴気で隣にいるブリンダの姿もかすみ始めている。


 もう撤退しかないと観念しかけた時、何かが…………弾けた!




 ズッゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!




 電柱ほどの太さの光の束が雷のように走り、光はプラズマを発して、半径二十メートルほどのトンネル状に醜女どもを蒸発させた。


 穿たれたトンネルの向こうに見えたものは…………北斗だ!


 嵐山のトンネルで瘴気に絡めとられて足止めされていた北斗が、ようやく追いついて、主砲である量子パルス砲を発射して、醜女の山に一穴を穿ってくれたのだ!


「撤退どすうううううう!!」


 光速でトンネルを抜けると、バシュっと音を立てて醜女のトンネルは閉じてしまった。




 

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