第99話『サマンサ・レーガン』

魔法少女マヂカ・099  

『サマンサ・レーガン』語り手:マヂカ 





 えと……そういうのはしまってくれる?



 落ち着いた笑顔で、そいつが言った。


「そいつじゃなくって、サマンサ・レーガン。サムって呼んで」


「サマンサ・レーガン……レーガン司令(霊雁島の第七艦隊司令)と関係があるの?」


「遠い親類。でもって、カオスから送られたスパイ」


「な!?」


「おっと」


 サムはミニテレポして、わたしの目の前まで迫ってきた。


 ングググググググ!!


「脊髄反射になるのは無理もないんだけど、話は最後まで聞いてくれる」


 サムの右手は風切丸の柄頭を押えて抜けなくしている。こいつ、相当の使い手だ。


「仕事するつもりはないの。立場上、配置には付かなきゃならないから、敵対心が無いことを宣言しておこうというわけ」


「どういうことよ……」


「昨日までは霊雁島の艦隊司令部に居たの。あそこの司令はバカみたいに見えてるけど、なかなかのやり手でね」


 霊雁島にスパイがいることは、第七艦隊に出向する前に知っていた(安倍先生が説明の最後に股座開いて注意喚起していたでしょ)が、出撃し、今に至るまで気配も感じなかった。


「なんにもできなかった。あなたたち、わたしの気配さえ感じなかったでしょ。あそこまでやられると、スパイとして存在しないも同然。だから、日暮里の方に乗り換えたのよ」


「存在を宣言するスパイ?」


「ええ、存在するだけで充分。あなたたちに知ってもらえていたら、サマンサ・レーガンは敵に食い込んで仕事をしていると記録に残るわ。それで、わたしの顔が立つから。お願い、そう言うことにしておいて。ここでは、単なる交換留学生として振る舞うだけだから。部活も、あなたたちの調理研に入るからね。どうぞ、よろしくお願いしまーす(^▽^)/」


 そこまで言うと、やっと柄頭から手を放した。



「やあ、ごめん。とっ散らかってて、やっと……あ、マヂカ、来てくれてたんだ」



 やっと安倍先生がやってきた。


「入部届が見つからなくって、はい、じゃあ、サム、これに書いて出してね」


「OK、あ、ハンコ押すんだ」


「サインでいいわよ」


「でも、せっかくだから、ハンコ買って押します(^^♪」


「そう? でも、サマンサ・レーガンなんて、オーダーメイドしなきゃないわよ」


「じゃ、作ります。マヂカ、いや真智香、ハンコ屋さん付き合ってね」


「先生は知ってんですか、こいつのこと!?」


「うん、あの時は一大事と思ってマル秘連絡したけど、この子、力の割には害意が丸っきりないでしょ。カオスの事もいろいろ喋ってくれて、調べたら嘘も無いし。学校を戦場にするわけにもいかないしね……まあ、よろしく頼むわ」


「そういうことだから、よろしく!」




 完全にペースに載せられる。




 しかし、調理研の友里たちには、どう説明する? 学校での友里たちは特務の隊員だと言う意識はないんだぞ……。


 

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