第97話『北斗に救助される』

魔法少女マヂカ・097  

『北斗に救助される』語り手:マヂカ 





 間に合ってよかった!



 懐かしい顔が微笑んでいる。


 ポリ高においては担任であり、特務師団北斗隊長である晴美ちゃん、いや、安倍先生だ。

 前方のシートには友里とノンコと清美が配置に着いて、高機動車北斗の制御に余念がない。任務中の彼女たちはクラスメートとしての意識が無い。早く学校に戻って調理研の部活がやりたいものだ。


 どうやら、北斗に救助されたようだが、記憶が飛んでいる。


 ブリンダも同じなんだろう、わたしが懐かしがっているうちに口を挟んだ。


「北斗のレストアは済んでいたのか?」


「うん、二人が取り返してくれたM資金の半分を使う許可が下りて、ついさっき再稼働したところよ」


「スーパマンは撃破できたの?」


「目つぶしを食らわせて怯ませた程度、ノンコ、モニターに出して」


「ラジャー」


 学校では見せたことのない頼もしさでコンソールを操作する三人娘。


 モニターには、両手で目をこすりながらわたしたちの行方を探しているスーパーマンが映っている。どうやら、索敵機能に影響が出たようで、見当違いの方角にキョロキョロしている。


「スーパーマンの頭部を中心にディフエンス機能低下、コア機能には損傷はない模様」


 エンジンの操作をしながらアナライズもこなしているノンコ。潜在能力は見かけによらず高い。


「よし、この隙に、一気にパージポイントへ向かう。進路、霊雁島!」


「霊雁島パージポイント、ヨーソロ」


 うんうん、友里のオペレーションも板についている。


「キヨミ、うちの高機動車は無事なんだろうか?」


「大丈夫、炭水車の後ろに牽引している」


「こんな感じです」


 ノンコが、モニターを切り替えると、フロントガラスにヒビが入り、あちこち傷だらけのT型フォードが北斗に振り回されるようにして付いて来ている。


「アリスは無事なんだろうか?」


「位相変換して北斗に取り込んであります」


 清美が照準用モニターを点けると、レチクル(視野内に刻まれた十字線)に張り付けられたアリスが現れた。


『ちょっと、この待遇は無いでしょ! 仮にも鏡の国のアリスさまなのよ!』


「すまない、まだ鏡の国の住人を完璧に変換する術が無いのでねえ」


『それにしても、これは無いわよ! せめてベッドとか用意しなさいよ!』


「またあとで」


 プツン。


 無慈悲にもスイッチを切る晴美隊長。


「まもなく位相変換点、各自対ショック防御」


 友里の指示で、全員がシートベルトを締める。




 グガガガガ グガガガガ




 多少の軋み音が続いたかと思うと、最高速の新幹線ほどの落ち着いた走行感に変わって、北斗は抜け出した。


 眼下には霊雁島脇、隅田川の霊雁島水位観測所が見えた。あそこからパージしたようだ。


「第七艦隊とは独立した位相変換所を確保したの。これも、マヂカとブリンダのお蔭よ」


「ということは……」


「その分、余計に働けということなのね」


「高機能化と言ってちょうだい」




 北斗は、基地の大塚台公園を目指して降下し始めていた……。

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