第13話 春の報せ
穂海のガトーショコラ事件か一段落して、一週間後。
学校から帰ってきた悠誠が、一通の封筒を持ち帰ってきた。
「雪乃、この前の試験結果来てるぞ。」
「え!もう結果でてるの!?」
「まぁ、一人分のテストの採点はすぐ終わるしな。あと一週間もすれば中学生の高校入試が始まるからな。そっちの準備が忙しくなるからだろ。」
「そっかー、穂海ちゃんの入試もあとちょっとだね。」
「とりあえず、それ渡したからな。後で結果教えてくれよな。」
雪乃は落ちていないか不安でドキドキしているが、悠誠はニヤニヤしながら部屋に戻っていった。
悠誠は何故かニヤニヤしていたし、結果を知っているような口ぶりなのが気になる。
「もしかして、悠誠くん、結果知ってる……?」
さすがに勝手に中身を見たりはしていないだろうけど、何故か雪乃よりも自信ありげな態度をとる悠誠が気になった。
自分の部屋に戻った雪乃は早速、封筒の封を切る。
そこには、合否の結果が書かれていた。
この度の編入試験の結果は、合格となります。
三好 雪乃さんには来年度、四月から二年生として我が御山高等学校へ編入して頂くこととなりました。
別途、パンフレットや制服採寸に関する書類をお送りしていますので詳しくはそちらに目を通してください。
他にも色んなことが書かれていたが、要は後日届く書類を読んでくれということだった。
とりあえず、合格通知でほっとする雪乃。
どれくらいの点数で合格なのか気になるところだけど、最初の難関を乗り越えることが出来た。
その喜びだけで今は胸がいっぱいになる。夢にまで見た学校生活。その切符を手にすることが出来た。
まだ、体力面であったりとクリアしていかなければならない問題はあるが、今なら全部乗り越えられる気がする。
編入試験が終わって数日は、開放感というか試験に対する緊張が無くなり気が楽だった。
しかし、しばらく時間が経つにつれ、不合格だった時の不安感が強くなっていた。
そういう時には、高校に通い始めたらやってみたいことリストを眺めて妄想に浸っていたのだが……。
今となっては、そんな妄想すら現実になろうとしている。
「みんなに報告しなきゃね。」
夕食の時、合格だったことをみんなに伝えると歓声が上がった。
悠誠は当然だと頷き、お母さんはおめでとうと抱きしめてくれた。
穂海に至っては嬉し泣きする始末。
「これでゆき姉と一緒の学校に通えるね。」と言い始めた時の悠誠の顔は思い出したくもなかった。
すぐさま、「お前の方が頭悪いんだからもっと勉強しろ。」と悠誠にこっぴどく怒られていた。
(お父さん、早くLiNe見てくれないかな。
きっと喜んでくれるし、制服姿も早く見せてあげたい。)
「今までありがとう、これからは自分の力でちゃんと歩いて行けるんだよ。」って、そう伝えて少しでも安心させたい。
身体が悪く、凍りついて止まった時が春の暖かさに包まれ動き出す。
雪乃の人生はこれから始まるのだ。
これまで他人より苦労し、当たり前のことすら出来なかったのだ。
これからは人よりいっぱいの幸せで満たされてもバチは当たらないだろう。
春夏秋冬、季節が巡るように。
長き冬が終わり、暖かな陽射しが指す春が、雪乃に訪れた。
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