第14話
「そんなはずはない。財前にはお前らが騙そうとしていることも志々見さんにつけば取り分も最初の通りやることも伝えてあった。なのに何故、寝返った!」
自分が上手だと思っていたためか動揺を隠せないでいる後藤に速水がネタ晴らしをする。
「寝返るも何も元からあいつは俺の言う通りに動いてたよ。最初、お前が俺を騙すために志々見に脅されてるって会いに来たよな?その時はまだお前のことも信用していたんだ。だけど志々見たちからお前を逃がすために動いているうちに違和感を感じたんだよ。始め、俺はてっきり強盗犯は志々見と財前と思っていた」
「どういうことだ?」
力也が口を挟む。
「違ったんだよ。最初に事件を起こしたのは志々見と後藤だ。財前は事件自体には関わって無かった」
「お前、あいつのこと馬鹿にしてたよな。だったらなおのこと口止めしておくべきだったな。全部、聞かなくても話してくれたぞ」
「あいつ・・・」
「あいつはお前らから離れたがってたからな。俺の言う通りに動いたよ」
「じゃあ俺たちがカラオケボックスで話した時もあいつは全部お前の指示で動いてたのか?」
「悪かったよ。後藤が気が付いているのはわかってたからな。敵を騙すにはまず見方からって言うだろ?」
「酷いぜ全く。でも助かったよ」
「まだ手はあるって顔だな?もちろんお前らに強盗をさせた人間も特定してあるぞ」
「させた・・・?」
「あぁ覚えてるだろ?志々見を車に乗せて走り去った奴を」
「飯田が言ってたな。誰なんだ」
「強盗に入られた宝石店の店主だよ」
まさかと驚き後藤の顔を確認する。聞くまでも無いという顔の後藤を見て本当であるということを理解する。
「今頃、がっくりしながら手錠でも掛けられてるかもな」
速水の言葉に完全に抵抗する気力も無くなったようだ。動きが静かになる。
「そう言えば力也、大神さん見なかったか?」
「冷ちゃん?見てないな」
その瞬間、大きな音と叫び声が聞こえる。
「洋次の声だ」
「おい速水、力也!」
山口たちが駆け付けたようだ。
「そいつが後藤?速水君の言っていた通り悪そうな奴ね」
小林が後藤に近づき顔面に蹴りを入れる。
「おいおいあんまり乱暴してやるなよ」
力也が止めに入る。
「そう言えば速水の言った通りってどういうことだ?」
「さっきこの後藤って人が裏で動いてるだろうって速水君が私と真奈美と山口君に話してくれたの」
「それより冷ちゃん見てない?力也」
「速水にも聞かれたけど見てないよ。それよりもさっきの声、急がないと」
「そうだった。力也にここは任せて行くぞ」
全員が廃倉庫の方へ向かう。
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