エピローグ

ダンジョンから戻り、色々有ったが宿でしっかり身体を休める事も出来たし、俺はいつもの日常に戻る為に、宿を出て、色々な店に素材やらを売ってからスラム街のある場所へと向かった。

「あ、アニキお帰りなさいませ」

「……外で話かけるなって言ったよな?死にたいのか?」

「……すいません。久しぶり過ぎてつい」

「ふん……着いて来い」

「へい」

スラム街で厄介な奴に絡まれた……教育をもう一度するべきか?……俺無しでも運営出来るようにしたはずだが、色々聞いた方が良さそうだな。堂々と此処スラム街に来たのは……二月位前か?

「アニ……いえ、つけられてません?」

「……はぁ。お前は先に拠点に行け。後から行くが……派手な出迎えもなにもいらないからな?」

「……分かりやした」

「……本当に分かってるんだろうな?」

走り去る名も知らない手下を目的地に先に行かせ。俺が来る事はもう知ってるだろうが、変な事をしでかさないように釘をさしておいた。

確か……前回はアレだ。下っ端連中が拠点の入口から数十人が列を作ってやがったな。まぁ、たまに俺が戻ると変な事をしでかす連中がたまに出る。先に言っとけば問題ないだろ。問題は……。

「こんな所で何してんだ?」

「へっ!?ガ、ガリルさんっ!?」

「こっから先は無法地帯のスラム街だ。ダンジョン下層より危険だからは帰れ。というか此処より俺に何かようか?」

まぁ、尾行してた相手がいきなり目の前に現れたらそりゃ驚くわな。で、今俺の目の前に居るのは冒険者のノエル……だけでなく、レナやアンまで居る。さて、どうしたもんかねぇ。

「私達、パーティー組んだのよ。で、ノエルちゃんが貴方のダンジョン以外での活動を知りたいみたいなのよね」

「い、一応、軽く調査はしました!」

「それで、ガリルさんが言う、ダンジョン下層より危険な所にガリルさんは何しに行くんです?」

「あー……、よし。男の野暮用だ。危険というのは治安も有るが、言葉の綾で金が一気に無くなるから、ある意味ダンジョン下層より危険、という事だ」

「あー……うん。ノエルちゃん、アン、帰りましょう!」

「え?えぇっ!?」

よし、作戦通り。レナがいち早く理解してくれて、顔を真っ赤に、というか耳まで真っ赤に染めてノエルとアンを俺、というか、この場所から離すように連れていってくれたから、後はレナがなんとかするだろう。

というわけで、問題がなくなったからさっさとアジトに向かうとしよう。纏まった金も手に入ったしな。


「頭、上納金でございます」

「……おい、誰だ?こいつ」

いや、本当に誰だ?アジトに入って、俺が自分のいつもの椅子に座ったら、いきなり俺の前にやって来て、俺の前に大金を置いた野郎は?……おかしいな、スラム街の住民なら産まれたばかりのガキと流れてきた奴以外殆ど覚えていたはずだが……記憶にねぇな。

「あー……確か二月前に来た野郎です」

「頭に顔を覚えて貰おうとやって来ました」

「なるほどな……で、金の出戸は?」

「は?」

「俺の前にある大金の出戸だよ。言っとくけどなぁ、俺は上納金なんてのは国王陛下位からしか貰ってねぇんだよ」

「え?」

「だからな?……さっさと吐いて楽になれや」

目の前の野郎に魔銃を突き付け、煙草に火をつけて吹かしながら、野郎に問い詰めていく。野郎が俺の態度にあたふたしながら目を泳がせ、色々考えたり思い出しているだろうが、一応待ってやる。手下共もこれから起こる事を予測して慌ただしく準備をしたり避難を始めている。全く、厄年なのかねぇ?

このスラム街は、国王陛下から承った物理交渉した俺の土地だってのに。

「アニキ、小耳にいれたい事が」

「ああ゛?」

「ア……頭、この上納金という大金につけてです」

「ほう?んじゃあ、この野郎は用済みだよな?」

「まっ、待ってくれ!話す!話すから命だけはっ!?」

「……良し、話せ」

で、慌てて口を開いて話す野郎によると……この上納金というのはショバ代として集めた金らしい。……殺るか。この街、このスラム街で、俺以外の外道は要らねぇんだよ。

「という訳で死ね」

「なっ!?」

「頭、この金どうします?」

「持ち主に返しとけ。後、今回の稼ぎだ。スラム街全員にちゃんと配れよ?」

「へい!」

クソ野郎だった物を手下が素早く片付け、俺が出した金と俺の前に有った上納金とかいう金を持って手下達は全員アジトから出ていった。

俺は椅子から立ち上がって外の様子を眺める。

「さて……用も済んだしまたダンジョンにでも行くかね」

「アニ……頭、あの……客が来てやす」

「……誰だ?見た目は?」

「あー……おい」

「へい。あのー……アニキ、あ、頭が此処に来る前に会った嬢ちゃんです」

「……なんで連れてきた?ああ?」

「あー……追い返そうにも嬢ちゃん達が強くて……会わせろの一点張りでして……仕方なく」

「……口を滑らして色々吐いちまってねぇよなぁ?おい」

「すんません。アニキだの頭ってのは口を滑らしてしちまいました」

「後は……頭がたまに面倒みてるガキ共も来て……済し崩し的に」

「……良し。後は任せた。俺は此処から逃げてダンジョンに行ってくる!」

「「「アニキっ!?」」」

そうと決まればもう知らねぇ。 窓口に足を掛け、いざアジトから外に逃げようとすると、今、一番会いたくない存在が遠目に見え、口から煙草を落としてしまった。

なので逃走を諦め、やって来た客人ノエル達の相手をすることにした。もちろん、血が流れたので素早く着替え、会うのは応接室で、だ。

「ガリルさん!」

「さっきはよくも騙してくれたわね?」

「酷いです」

「……で、俺に何の用だ?生憎と忙しいんだ。早く此処から逃げたいしな」

「「「逃げる?」」」

応接室に入った瞬間、ノエル達に怒られ、もとい説教をくらいそうになるが、それどころじゃない。さっさとノエル達の用件を聞いて逃げないとヤバい。いや、向こうの目的はノエルかもしれないが、厄介事は御免だ。俺は平穏に狩りをして穏やかに暮らしたいだけなんだ。

「というわけで用件はなんだ?手短に頼む」

「じゃあ、私からまとめて言うわ。私的には貴方が此処で何をしてるのかが気になるけれど、ノエルちゃんが貴方をパーティーに入れたいんだってさ」

「教える気はないし、入る気もない。というわけでさっさと帰れよ?治安が良いとは言えない場所だからな。俺は逃げ――」

「ガリル・ノースビレッジ、どこへ行く気かしら?」

「遅かったか……何の用だギルド長?というか普通に玄関から入ってくれ」

「「「ギルド長っ!?」」」

まぁ、俺が視認出来たという事は向こうも視認出来たという訳で、立ち位置的に応接室の窓からノエル達が見えたとしよう。だけどな?見えたからって何故に応接室の窓から入って来る必要があるか?無いよなっ!?しかも殺気を微妙に俺だけに向けて来るのは止めて欲しい。前回、ギルドの訓練場でやりあったけどお互いに手抜き、互いに全力だったなら……ギルド長が勝つ。というかギルド長を止めれる奴居んのかね?それこそ勇者とか言われる連中やら何やらか?一兵卒の冒険者には荷が重すぎる。

「で、ギルド長は此処に何の用で?」

「私はふと思い付いたのよ。ギルドにとって、もっとも良い事をね」

「ふぅん」

「ガリル・ノースビレッジ、ノエルちゃん達とパーティーを組みなさい!」

「は?」

「そうすると、ノエルちゃん達に悪い虫がつかないし、更なる技術向上に繋がる。更に、ガリル・ノースビレッジの無駄な狩りを抑止出来る」

「……俺の意思と役割とかの問題は?」

「貴方への脅は……尋m……幾つかのは……まぁ、悪い条件じゃないわ。はい、契約書」

ギルド長のミリシャから書類を渡され、ノエル達には悪いが、流し読みなんて危険な真似はせず、ルーペや蝋燭、水を用意して書類に罠が無いかきちんと探しながら読む。

まぁ、結果的には罠(隠し文章やら暗号)はなかった。ミリシャが書類の内容を口にしないのも分かる。これはノエル達には聞かせられない。パーティーを組む場合はな。まぁ……ミリシャからの提案という形だが悪くない。表だって俺が動けないだけで手下達は今まで通りだしな。

「契約成立ね」

「まぁな。今回のはかなり太っ腹な条件じゃないか?」

「ノエルちゃんのためよ」

「……公私混同せずに職務を全うしてくれ。頼むから。ギルドの会議で窮地に陥っても知らないぞ」

「大丈夫よ。切り札はいくつも有るもの」

「…………そういや、こんな奴だった」

「と、いうわけでノエルちゃん達のパーティーに不承ながらガリルがはいるわ」

「本当ですかっ!?」

「えぇ!」

「これで楽にダンジョン内に拠点が手に入った!」

「……お姉ちゃん」

「まぁ、ノエルはともかく、お前らが賛成する理由としちゃ妥当だな。そんなことだろうと思ったよ」

さて、話は終わりだ。だから、早くアジトから去れ、というか帰れ。何のためにドアを今開けたと思ってる?悪いがこっちにだって都合が有るし、パーティーを組んだと言ってもソロ活動が禁止されるわけでもない。


その後は先に応接室から出て、手下共に指示を出し、ミリシャ達とギルドに行って、ノエル達とパーティー申請を無事に終えた。まぁ、複数のパーティーに入っても依頼期間やら何やらが絡まなければ基本的には問題無い。

「んじゃ、用が終わったから帰るわ」

「「「えっ!?」」」

「……はぁ。今から依頼を受けるなり、ダンジョンに向かうとしても時間的に厳しいだろうが。それから、受付嬢、特にミラな?アイツが笑顔で依頼書をこちらに見えないように丸めて持ってくる時や、わざと依頼書を視界に入れさせようとしてくる時は要注意だ。高確率でろくでもない依頼を渡される」

「え?良い依頼ばかりですよ?」

「そりゃ、ノエルは特にミラのお気に入りだからな。だが、奴が基本的に高位の冒険者に依頼を受付させる場合は割が会わない依頼が多いのも事実だ。いいか?奴は間接的に冒険者をさn……」

「ギルド内で受付嬢の悪い噂を流すのは止めてくれませんか?」

「ギルド内?ギルドの外に出てるぞ?ギルド内に居るのはノエル達の方だ」

「チッ……それよりガリルさん、良い依頼の話が有るんですよ?」

「悪いが今日は帰る。それから、依頼は基本的にパーティーで受けるから、しばらくソロ活動はダンジョンだけだ」

とりあえず、云うことだけ言ってギルドから逃走する。そう、全速力でだ。流石に急発進したからノエル達も追いつけはしないし、ギルドお抱えの部隊も問題無いだろう。なにより、今の俺は完全装備じゃない。そんな状態でダンジョンに行ったり、依頼をこなすのは無理だ。多分、ミラが持っていた依頼は俺のみが受ける条件なはずだ。そして、ノエル達とパーティーを組ませるという願いと邪魔な俺を排除する狙いだったろうが甘い。こうなったらもうしばらく休んでからダンジョンに籠ってやる!

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中堅外道冒険者と新人サポーターの日常 双頭蛇 @soutouja

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