サポーターのお仕事(1)
と、いうわけで、とりあえずその日は解散し、翌日の今日、ギルドでノエルと待ち合わせして、とりあえずサポーターのなんたるかを叩き込む。
問題は、ノエルがサポーターの仕事を荷物持ちとしか理解しておらず、あの身体より大きな荷物を見せてもらったが、要らない物が多かった。犯人は同居人のミラだ。あれか?ダンジョンなめてるだろ、絶対。それか、俺に全てやらせて護衛させる気か……両方だな。
さて、特に問題なければそろそろ来るだろ。昨日、口酸っぱく注意し、軽めの装備で来るように何回も言ったからな。
「すみません、お待たせしました」
「……いや、俺の方が遅かったみたいだな」
……そうだった。ミラと同居なんだから、ミラが仕事の日なら一緒に来るだろし、朝食食べたり、中で待ってるよな。入口に立ってた自分を殴り飛ばしてやりたい気分だ。
「んじゃ、とりあえず買い物だな」
「は、はい!」
まぁ、合流出来たので行動あるのみ。ひとまず、冒険者ご用達の店を回る。装備も……昨日からで銀貨50枚もらったので選別で見繕ってやるか。
と、言うわけで馴染みの武器屋に来た。
「ん?……1人じゃないどころか可愛い娘を連れて来たな?」
「ギルドからの依頼だからな。しばらくは2人パーティーだ。じょ……ノエル、とりあえず好きな武器選べ、適性はその都度見る」
「は、はい!頑張ります」
まぁ、パーティーを組む上で誰しも取り決めはある。とりあえず、ノエルを嬢ちゃんと言わない事。見た目は子供に近いが、一応は成人してるらしい。後は、隠し事をしない事と裏切らない事だ。
そして、武器屋の親父、頼むからニヤニヤとこっちを見ないでくれ。俺はそんな趣味じゃねぇ。
「んー……うん、これにします!」
「……は?」
ノエルが武器を選んだので見てみるが、多分、武器屋の親父も同じ感想だろう。それは、予想に反して実戦向きで、手にも良く馴染んでいるようにも見えるが、異常である。何故なら、見た目に合わないのだ。どこに、自分より大きなバトルアックスを軽々と持つ奴が……まぁ、目の前に居るが、問題点もあるため、その武器は辞めてもらおう。
「自分の役割を思い出せ。サポーターやりながらそれで戦う気か?」
「え?……あ、すっすみません!」
気づいてくれたようで急いで戻しに行った。まぁ、別に荷物を置いて戦うのは有りだ。だが、バトルアックスの戦い方だとあまりオススメは出来ない。
そこで、
「あ、おい!そいつぁっ!?」
「親父、物は取ってくるから完成までの間……コイツを代用品にする。代金は2倍払っておく」
「……分かった。このクソ野郎」
ノエルは初心者だからな、だが、バトルアックスを選ぶ辺り、多分脳筋に近いだろう。
だから、分厚い大剣二本を適当に折って武器を用意してやる。まぁ、目の前で作品を壊された親父の怒りは分かるが、その分、多少は上乗せしてから2倍の金額払うんだから、そう睨み付けるなよ。
「あの、今凄い音……」
「ほれ、お前の武器だ。ナイフの扱いは出来るだろ?後、金は俺からの餞別だから払わなくて良い」
音に反応してノエルが来たので、柄の付いてる方の二本を投げ渡す。勿論、剣先の方や破片も回収して料金を親父に渡す。
「次は店で壊すなよ?」
「壊したのは今回だけだろ?」
まぁ、当然ながら釘を刺されたが問題はない。とりあえず用件は終わったので次の店に向かう。
「次はどこに行くんですか?」
「防具屋だな。今のノエルの装備はダンジョンだと上層、そこら辺の森とか平原なら
ある程度はいける装備だが、俺はダンジョン中層から下層がメインの狩り場だからな。悪いが俺の狩り場に合わせてもらう」
「えっ!?いきなり行って大丈夫なんですか?」
「その為の買い物だ。後、ノエルがどれくらいの腕かはちゃんと見るし、訓練もしてやる。……まぁ、そうしないと俺の命がヤバイからだが」
「えと、ありがとうございますっ」
うん、嬢ちゃんに悪気はないし、ちょっと人を信用し過ぎな気もするが問題はない。少し笑顔が眩しかったが問題ない。嬢ちゃんは俺の対象外だ。だから、殺気を向けて来たり、睨み付けてくるな。全く、嬢ちゃんにやられたのはギルドだけかと思ったが、ギルド子飼いの連中もかよ。気づいた以上、ここからは慎重に行動しないと、命が幾つあっても足りないな。まぁ、店に入ればこっちのものだが……大丈夫だよな?子飼いの中に変態が居ない事を祈るか。
「珍しいお客さんっすね?」
「あぁ、嬢ちゃんか。ノエルの採寸を頼む。俺は店主とだけ話す」
店に入るなり、猫耳と鍵尻尾が生えた獣人族の女性に話しかけられるが、用件だけ言ってノエルを差し出し、俺は店主の居るカウンターに向かう。
「……久しぶりだな。ソロでやってる割に、あんまり店の方には来ないから死んだと思ってたぞ?」
「嘘つけ。今回は俺じゃなく、依頼でパーティーを組まされたノエルの装備だ。今、採寸してもらっているが、装備のオーダーは紙に書いてきた。素材は、俺が前に売ったのがあるよな?あれで頼む。足りないなら取ってくる」
「……ちょっと待ってろ。」
ドワーフ族の店主と向き合い、紙を渡して話すが、数日前に来たばかりなのに酷い言われようだ。まぁ、実際に会ったのは、店ではなく裏の倉庫入口だが、店主は直ぐに紙を手にして、店主は店の奥へと消えた。
少し待って居ると、何やら嬢ちゃんとノエルが騒いで居るが知らん。で、店主は戻って来て、笑顔のサムズアップで材料が足りてる合図をしたので、前金で先に装備代を払っておく。まぁ、多少上乗せすれば色々と気を利かせてくれるだろう。
とりあえず、用事が済んだのでノエルを呼ぶが、相変わらずうるさい。採寸は済んでいる筈なので、一体何をしているのか皆目検討もつかないが、次があるので解放して欲しい。
「……お、お待たせしました」
「……は?……ノエルか?」
「えと……はい」
あれ?ノエルって子供体型だったよな?ほんの少し目を話したら、何か体の一部が成長してるんだが?思わず本人か確認してしまった。まぁ、肯定している以上、深くは追求しないでおこう。
「まぁ、体を装備に合わせるよりは、体に装備を合わせた方が良い。……だが、一応は来店時と同じにしとけ。依頼が完了した後で大変な目に遭いたくなければな」
「は、はい。少し、待ってて下さい」
一応駆け出しで依頼中だからな、あの体型は襲う奴は襲う。1人で行動してる時に襲われたら罰金を払う事になる……それだけは、何としてでも阻止する!店員の嬢ちゃんが、何か文句を言ってるが無視だ無視。第一、ギルドのお抱え特殊部隊ともなればかなりのベテランだ。何人か後方に下がったというか、下がらせた気配があったが……成る程、流石はギルドの凄腕受付員だ。一部のギルド職員やお抱え特殊部隊まで騙すとは、なかなかやるな。
だが、今回は逆効果も発生したようだ……依頼完了後は、よりいっそう夜道や人気の無い場所は気を付けるとしよう。
「お待たせしました。次は何処に行くんですか?」
「安心しろ、今日は次で最後だ。冒険者としても、サポーター、普通に暮らしてる奴も良く足を運ぶ店だ」
と、いうわけで、行き先が分かるなり何故か目を輝かせるノエルを連れて、主に冒険者を客に扱う雑貨屋兼道具屋へと向かう。何故か防具屋の嬢ちゃんが名残惜しそうというか、残念そうな顔をしていたが、知らん。
まぁ、冒険者を相手に商売をする店なだけに今まで行った店と今から行く店は、だいたいギルドに近い場所で商売している。もちろん、離れた場所にも有るには有る。しかし、新米や低ランクの冒険者は、ギルドの近くにある店を使う。俺は、あまり店自体を利用しないが、ギルド近くの店以外にも、貴族街とか都市部等にある、少し敷居の高そうな店も利用する。
「さて、ノエルはこの店を一番利用する、新人サポーターだから詳しく教えてやる」
「は、はい!」
「とりあえず、店に入る前に問題だ。冒険者が、この店で必ずと言っていいほど買う物がある。ヒントはギルドでも売っている物だが……分かるか?」
「えっ?えーと、えと、うー…………っ!?か、回復薬、ですか?」
「正解だ。ただし、こういう店で買う場合はちょっと工夫が必要だけどな」
「ほっ……え?普通に買うんじゃないんですか?」
「アホか。それだったら、少し高いがギルドで買え。安いには安いなりの理由があるもんだ」
まぁ、入口近くで話してる理由は、ちょっとした店とギルドの宣伝だ。感心しているノエルには悪いが、他の新人冒険者の育成もベテランの勤めだしな。良い獲物に育って俺に狩られてくれ。マジで。
そして、店に入るなり、店主の婆さんと目が合ったが、舌打ちして帰れというアイコンタクトをしてくる。おかしい、俺は割りと、この店を贔屓にしてるのに毎回こうだ。別に不利益になるような事はしていない筈なんだがなぁ。
「色んな物がありますね?」
「あぁ、軽い保存食に砥石、火打石、採掘用のピッケル、ハンマー、薬草各種に回復薬と各種ポーション……」
ひとまず、店主の婆さんを無視してノエルに冒険者が主に買う物を教えていく、まぁ、専門店みたいなものだし、品揃えは割りと良い、冒険者に依頼して取り寄せた物もあるが、だからこそ、質にばらつきが出てしまう。その分値段は安めだし、見極められない方が悪い。そして、ノエルに教える買い方はいつも通りの買い方で良いだろう。
「とりあえず、回復薬、回復ポーションの買い方を教えてやる」
「ほぇー……、は、はい!」
「値段は疎らだが、ここで大事なのはいきなり必要な数を買わない事だ。とりあえず、高い物で色が濃いのを1つ選ぶ。色の違いは微妙だが、見極められればパーティーで重宝される」
「……あの、1つだけ選ぶ理由は?」
「今から実践する。婆さん、良いよな?」
「……明日は槍でも降るのかい?」
あれか?俺が親切に教えてるのがそんなに変か?あぁ?……まぁ、突っ掛かった所で意味はない。1つ分の料金を店主のクソババアに渡し、今からノエルに何をするのか見せるが、簡単な事だ。
まず、自分の指をナイフで軽く傷つけ、そこに回復薬を少しだけかけ、回復具合を確認する。基本的に単純な事だが、回復薬の配分により傷の治り具合に差が出る。まぁ、経験と観察、慣れで分かるようになる。マジで最初の頃は高い奴が一番良いと思ってたが、それでも回復に差があるのだ。慎重に買うようにもなる。
「で、今回は俺が必要な道具を揃える。まぁ、始めたばかりのサポーターに金を預けるバカはそうそう居ないだろうが、逆に、全て自腹で揃えさせるバカもいるから注意しろ」
「……なるほど、分かりました!」
という訳で後は必要な物を見繕い、その都度説明をして買い物を終わらせたが……ちょっと買いすぎたかもしれないな。一応は薬草取り用の籠を買ってその中に入れたが……満杯だ。まぁ、いつもの癖だが、後でノエルにはサポーターとして生き残れるようにアレを渡すとしよう。そんなに高級でもないし、予備の予備だから問題ないだろ。
こうして、後はギルドに行って1日分の報酬を2人で貰い、ギルドで解散して俺は自分の宿に戻った。
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