第2話 妨害なのか幽霊なのか。

電話が鳴ってから一時間半後。

事務所の応接間には作業着を着たおっさんとちょっとくたびれたスーツを着たおっさんが仲良くちょこんと座っていた。

ちなみに、このおっさん’sは人間である。

あたしはお茶とお茶菓子をおっさん’sの前に置くと、対面席に腰を下ろした。


「詳しいお話をお聞かせください」


実はですね…と話し始めたおっさんの話が要領を得ない上に長ったらしかったので、割愛しよう。この二人代表で来たわりに、仕事できないな。

メモを取りながら必死に耳を傾けた結果、要約するとこういう事らしい。


『ショッピングモール建設中に、桜の木を切ろうとしたところ、機械が壊れたり暴走したり作業員が高熱出したりゲガしたりで作業が進まないどころか被害が甚大なので、原因を突き止めて何とかして欲しい。』


「お話はわかりました。とりあえず工事は中断し、作業員がいない時間帯を教えて下さい。現地調査に向かいます。立ち会いは不要です。幽霊の仕業なのか他の要因なのかわかり次第、連絡させていただきます。基本料金はこちらとなっていますが、調査後、結果によって詳しくご相談させていただきます」

「「ありがとうございます。よろしくお願いします」」



おっさん’sが揃って仲良く帰るのを見送った後、横で聞いていた三人を見た。


「どう思う?」

「んー、今の時点ではなんとも言えないなー」

「桜の木の下には死体埋まってるって言うしなあ」

「そうなんですか?」

「あれ? ゆーさん知らへんの? 桜の色は下に埋まった死体の血を吸ってできた色だ、って話」

「おや、初耳ですね」

「めーしんだろ、迷信」

「ちょっと、ゆーさんが信じちゃうでしょ!」

「おやおや、嘘だったんですか?」

「いや、嘘というか…琥太郎が言ったように、迷信よ、迷信。誰が言い出したかわからない根拠もなーんもないただの噂話」

なるほど、と納得するゆーさんを尻目に、書き留めたメモを報告書に起こしていく。別に報告する相手もいないんだけど、事務所としてちゃんと営業してますよー、不正とかぼったくりとかしてませんよー、ってアピールの為に残しておかないといけない。

一通り纏め終え、時間を確認する。そろそろいいかな?


「さて。とりあえず、現地調査と参りますか!」

「「「おー!!!」」」


事務所の戸締まりをし、人間のお客様と幽霊のお客様宛にそれぞれ留守の旨を記し、あたしたちは現地へと足を向けた。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る