第22話 金太郎
「おいらはさ。出世したわけなんだよね。山で暴れ回っていただけの子ども時代から、なんとお偉いさんに認められて侍だよ、侍」
「
「ほかの主人公に比べてじゃあどうして地味扱いされるわけよ。だって出世ストーリーよ? 豊臣秀吉と同じようなもんじゃん。好きでしょ、日本人」
「
「最近はCMとかゲームとかで取り扱ってもらえているけど、それでも絶対おいらのお話の詳細知っている人少なくない? どうせ熊と相撲して、とかだけだよ」
「
「あとそのしゃべり方何さ」
「いえ、熊としてのキャラ付けを狙っておりまして」
「良いよ、そういうのは。とにかく、どうにもこうにも地味すぎると思うんだ」
「某が思うにはですね」
「その前にその一人称やめろよ」
「私が思うにはですが、たとえば桃太郎の終わりはいかがですか」
「鬼の生首を掲げて高らかに笑い転げ、宝を奪って酒池肉林に溺れる」
「どれほど他の主人公を嫌っているかは分かりました。花咲かじいさんは」
「亡くなった犬の灰を撒いて咲いた桜の美しさに爺さんも周囲も心を奪われて感動のハッピーエンド」
「相手がお爺さんであれば優しいんですね。こぶとり爺さんは」
「意地悪爺さんにこぶをなすりつけて高らかに笑い転げ、意地悪爺さんに石を投げつける」
「あなたの許せない基準が分からない。つまりですね」
「おう」
「漠然としたハッピーエンドなんですよ。それか浦島太郎のように同情を引くか」
「ふむふむ」
「一方で金太郎と言えば、つまりはサラリーマンになって終わるわけです。出生したとはいえ、あー。こっから社畜として働くわけね。では人気が出るはずもありません。世の中漠然とした幸せが欲しいのです。結婚して見たら想像していた甘い生活が続かないのと同じですね」
「後半は私怨だよな?」
「嫁が……」
「はいはい。それで? じゃあどうしろと」
「……どうしましょう。とりあえず上司の生首でも掲げて高らかに笑い転げ、宝を奪って酒池肉林に溺れるとかはいかがでしょうか」
「不毛だなぁ……」
「そちらから始めたくせに」
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