第11話 シスコンなお兄ちゃん


「お兄ちゃーん」


「うん?」


「ちょっとお願いが」


「良いぞ」


「あるんだけど、早いよ! 返事が早すぎるよ!!」


「はっはっは、可愛い妹の頼みを断る兄なんて居るわけがなかろう」


「実は、今度のバレンタインデーでクラスメートの隆くんにチョコレートを作ってあげたいんだけど」


「悪い、少しだけ席を外すぞ」


「うん? 行ってら、釘付バット持ってどこへ行く気なの!?」


「隆くんと話し合いに」


「行かせないよ! そんな物騒な話し合いになんて行かせないからね!?」


虐殺話し合いをするだけだぞ?」


「殺意が隠しきれてないよ! 隆くんに酷いことしたらお兄ちゃんなんか嫌いになるからね!」


「あ、ちょっと死んでくるわ!」


「お願い嫌いにならないから待って!! そんな良い笑顔で縄を取り出してどこへ行くのさ!!」


「富士山を見たくなってな」


「樹海だよね! それ樹海のほうに用があるんだよね! 絶対駄目だよ! ごめん、言い過ぎたから早まらないで!!」


「シズカに嫌われて生きていく理由がない」


「まっすぐ過ぎる瞳がもう怖すぎるよお兄ちゃん……。もう! じゃなくて、チョコレートを作るのを手伝ってほしいの!」


「頼ってくれるのは嬉しいが、スイーツ作りで役に立つかァ?」


「お兄ちゃんの職業って何だっけ」


「ショコラティエだが?」


「これ以上誰に頼れと?」


「仕方ないな。ちょっと店から材料と器材取ってくるわ」


「市販のを溶かして固めるだけだからそういうのは別に」


「……、本当に俺は必要か?」

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