異形転生したら寂しさMAXになって、すごいチョロインになってしまった話

尾惹 甜馬

第0話 世界の歴史

魔女ウィッチ〉。

 この世界にはそう呼ばれる存在がいる。

 30年前に突如として現れたその超常生物達は執拗に人類を狙い、その三分の一が殺された。

 勿論人類もダダでは済まそうとはせず、軍や自衛隊が迎撃に出たが……その結果は散々足るものだった。

 銃弾は肌を破れず、砲弾は拳一つで破壊され、核でさえも何の効果も現さなかった。

 それなのに、超常生物達が作り出した剣や槍は核にも耐えうるシェルターを両断し、奴らの銃器は砲弾の1つでビルを倒壊させる。

 その普通の生物ではあり得ぬ能力と全ての個体が少女の形をしていることから、国連は超常生物達の呼称を〈魔女〉と決定したが、そんなことは何の慰みにもならなかった。

 全世界がお通夜状態となり、誰もが絶望にうちひしがれていた──だが、その状況はある時を境に一変する。

 全世界合同の研究チームが、〈魔女〉の肉体構造の解析、再現に成功したのだ。

 そうして生み出された〈魔女〉と同等の力を持つ人工生命体〈戦乙女ヴァルキリー〉の奮戦によって〈魔女〉の攻勢を押し返し、人類は滅亡を回避した。

 それらの出来事から30年が経過した現在。

 未だ〈魔女〉の襲撃は終わらないながらも、〈戦乙女〉がそれを撃退するのが日常茶飯事となり、世界は概ね平和に保たれていると、人類の誰もが思っていた。

 俺、鏡石叶かがみいしかなえもその一人だった。その戦いの、当事者となるまでは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る