第8話 時系列が飛んだときは大体一気に話を終わらせに来てる

 この話からはシュールに送らせて頂こうと思う。

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 僕がインフルエンザにかかってから一年がたった。

 おうおう一気に時系列が飛んだじゃないかよ、筆者さん。どうしたい書くのがめんどくさくなってしまったのかい?そりゃあ粋じゃあねぇってもんよ。

 と思う読者さんもいるかもしれない。だが別に僕は飛ばしたわけではない。


 飛ばしたほうがおもしろくなるのだ。


 断然面白いのだ。


 さあ、面白いと言ってしまった手前、なかなか編集には時間をかけたのでどうぞあまり期待せずにお読みになってほしい。


 僕の馬鹿さ加減を。


 そして天使様の美しさを。

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 僕はその時、割と必死で数学の勉強をしていた。確か数列の問題が全然わからなかったのであったと思う。周りの状況など気にする余裕はなかった。

 そんな僕に前の女子が話している言葉が飛び込んできた。


「なんかBちゃん浮気されてたらしいよ」

「え、まじ!」

 え、まじ?

 これぞまさに青天の霹靂である。そして、僕の心の中がたくさんの疑問符という名の雲で覆われていくのを感じた。

 なんせそのBちゃんとは何を隠そう、僕が信仰している美の化身、天使様こと、彼女のことであり、その子からどこの馬の骨とも知れない男と付き合っていることなどゆめゆめ聞かされていなかったのである。

 続きが気になった僕は耳をそばだてた。もはや数学のことなど頭の中にありはしない。あるのは彼女のことだけ。そして彼女と付き合っていたという馬の骨のことだけである。


「Bちゃんが付き合ってたのってOくんだよね?」


 情報ゲットである。そういえばそいつと一緒に彼女が文化祭を回っていた現場を見たことがある気がするがそんなことは後でいい。


「そうそう! なんであんなかわいい子と付き合っておきながら浮気するのかね?」

「ね!」

「二時間目の放課にトイレで泣いててほんとにかわいそうだった。」

「え!なにそれ!リアルトイレの花子さんじゃん!」


 とりあえず僕はここで天使様のことを‘‘リアルトイレの花子さん‘‘などとのたまったクソ女を後で必ず血祭りにあげることを心に固く誓いながら、彼女のクラスへと向かった。

 二年生になり彼女とはクラスが離れてしまっていたのだ。


 僕は彼女のクラスに着いた。

 果たして彼女は数人の女子に囲まれそこにいた。

 いつも通り輝くような存在感を放ちながら。

 だがいつもとはどこかが違った。なにが違うのかはわからない。いや、わからないわけではない。何かが違うのはわかるのではあるが言葉にうまく言い表すことができないのだ。

 そんな彼女を遠めに見ながら、僕は友達にあたかも教科書を借りるために来たかのように話しかけ、古典の教科書を借りた。

 そして無事に借りる必要のない教科書を借りた僕は、何を思ったか彼女のほうへと向かった。

 彼女の取り巻きが僕の接近を許さないかのように前に立ちふさがった。僕はそこに立ち、


「少しだけBと話させてほしい」


 と言った。

 取り巻きの子らは少し困ったような表情をして顔を見合わせたのち、警戒しながらも僕に道を開けた。

 その先にいる彼女は美しかった。この世に存在するどんな美しい言葉も彼女の美しさを表すには足りないと僕には思えた。

 泣いたためか少し腫れたように見える目から伸びる長いまつげは物憂げに僕を見る大きな目、入学式のあの日に僕を虜にしたその目に不謹慎ながらとても似合っていると僕には思えた。


 そんな彼女を前にした僕は彼女に一言尋ねた。


「大丈夫か?」


 彼女は悲しそうに微笑むと


「うん」


 と言った。


 僕の中で感情が爆発した。

 そんなわけがないだろう?泣くほどに悲しかったんだろう?君を泣かせたのは誰だ?言ってみろよ?そいつを僕が殺してやる。この世で最も苦しい死を与えてやる。どうして君が泣くんだよ。悪いのは君じゃない。どこまでも悪いのはあいつ、Oの野郎なのに。


 でも僕は何も言えなかった。どす黒い感情に心の奥底の僕をなす根幹の部分まで浸されながら僕が言えたのは


「そっか」


 の一言だけだった。


 ◇


 僕は帰りのバスの中でゆらゆらと揺られていた。もちろん彼女のことを考えていたのである。彼女に彼氏なる人物がいたことについて。そしてその彼氏なる人物がどうして彼女を裏切ったのかについて。

 そしてどうして彼女が僕に彼氏の存在を教えてくれなかったかについて。

 僕は二年生になった最初のほう、五月くらいに彼女に告白をしていた。

 当然今のこの状況からもわかるように振られた。だが、のちに聞いた話では彼女はこの時すでに件の男と恋仲であった。

 だがその時、僕は彼女からこう伝えられているのだ。


「いま私、集中したいことがあるからごめんね」


 彼女が頑張りたいことがあるのならば仕方がない。僕は身を引こう。そして陰ながら応援しよう。そんなことを考えながら僕は彼女とそれなりに良好な関係を築けていたとは思うのだ。

 そしてそんな良好な関係を築けていたと思っていたからこそ、彼女に嘘をつかれたこと、僕が自分の気持ちの下に彼女に真摯に向き合ったにもかかわらず、彼女に事実を隠されるような真似をされたことが何よりも悲しかったのではないかと思う。


 そんなときにふと僕は思った。


 では、彼女はいったいどうなのか?


 ぼくは一方的に好きだと言い続けた相手にちょっとした、もしかしたら、いやもしかしなくても僕を傷つけないための嘘をつかれただけではあるが、彼女は違う。

 彼女の彼氏なる人物がついた嘘は一方的に彼女を傷つけ、自分を守るためだけの嘘、いわばただの保身としての嘘ではないのか。


 ではそれをよけることも許されず、正面から無理やりに受け止めさせられることになった彼女の心は果たしてどうなのか。


‘絶対大丈夫なわけないよね‘


 気づいたときには彼女とのLINEのメッセージ画面にはそう表示されていた。今とは違いまだ送信取り消しの機能もないころである。僕は、絶対に嫌われたな、と思いながらバスを降りた。


 そして家に着き、携帯の通知欄を見た。


 そこには


 十時ころから電話しない?


 と彼女からのメッセージを知らせる通知があった。


 僕は思わず携帯に熱烈なキスをしそうになった。

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