砂糖とか、たまにコーヒーとか
解説書
夏祭り
彼女が僕との待ち合わせ場所に姿を見せたとき、僕は世界に感謝をした。
カランコロン、カランコロン
神社の狛犬にもたれ掛かる僕の姿を見つけた彼女が下駄の音を小気味よく響かせる。振袖をなびかせながら。
「ごめんね、待った?」
下駄で走ることに慣れていないのか、水色の浴衣で体が締め付けられて息がし辛いのか。少し肩を上下させながら彼女は上目遣いで僕に聞いた。
「いや、全然」
本当はもっとたくさんの言葉を彼女に言いたい。唇に薄く塗られた口紅も少し頬に差した紅も水色地に朝顔の浴衣もすべてが君に似合っている。
そんな君と今日一緒に夏祭りを回れる僕は誰が何と言おうと幸せ者だ。そうこの夜空に瞬く星だけが取り柄のこの町の皆に振れ回りたい。
「よかった、じゃあ行こ!」
「うん」
でも君を見るとすべての言葉が君を表すには物足りなく思えてしまう。
そんなどうしようもなく、くだらないことを思いながら、僕は彼女と夏祭りへ向かった。
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