第37話飛空艇を見つけたけど大丈夫だよね?
「やりましたねっお兄ちゃんっ!」
私はそう言うと兄に抱きついた。
「ちょ、抱きつくなって!身体強化使いすぎてもうヘトヘトなんだから。」
「ユウタさん、すごいです!動きが変わったと思ったらあの祟り神をあっという間に・・・。」
マドカも駆けつけてきた。
「そうそう、なんか不思議なことが起きたんだよ。・・・・・・。」
兄が戦闘中に起きた出来事を説明する。
「まさか、ムラクモ様が…。」
マドカが驚いている。
すると兄が誰もいない空間に向かって話しかける。
俺がほのかたちに事情を説明していると声が聞こえた。
『さすがご主人じゃ。見事祟り神を倒したようじゃな。』
声がする方に顔を向けるとムラクモがふわふわと浮いていた。
「ああ、なんか身体が勝手に動いた感じだったよ。」
ムラクモに返事をするとほのかが不思議そうな顔でこちらを見ている。
「あの、お兄ちゃん?そこにさっき言ってたムラクモさんがいるんですか?」
「ああ、そうか。みんなには見えないんだったな。今ここにムラクモちゃんがいるよ。」
『ムラクモちゃん!?ははは。ご主人面白い人じゃの〜。妾をそんなふうに呼ぶやつはご主人が初めてじゃ。まぁご主人なら良いかの。』
「ムラクモじゃ、刀と区別できないからな。」
するとマドカが声をかける。
「あの、ムラクモ様。お久しぶりです。」
『おお、タチバナの娘か。お主もよくやってくれた。祟り神が消えたことでタチバナ家の呪いも消えたじゃろう。安心せい。』
「マドカ、ムラクモちゃんが見えるのか?」
マドカに尋ねる。
「はい、代々タチバナ家の血筋の娘には神社の守り神であるムラクモ様の姿は見えるんです。時々お話もしていたんですよ。まぁ他の人には御神刀の前で独り言を言ってるようにしか見えなかったでしょうね。」
『まぁ妾はあの場所から動くことができんかったしの。数百年ぶりにこうして外に出られて幸せじゃ。』
とりあえずムラクモが話していることをみんなにも伝える。
そして各自自己紹介をする。
『よろしくの。ご主人の仲間たちよ。』
ムラクモが笑顔で答える。
「ところでムラクモちゃんはずっとそうやって俺達にふわふわついてくるのか?」
『いや、普段は用がない時は刀の中に眠るから安心せい。頭の中で呼び掛ければいつでも起きて力を貸す。それより奥の扉の先に行ってみるがよい。タチバナ家に伝わる古(いにしえ)の産物があるから使うがよい。ではまたなご主人。』
そう言うとムラクモは消えた。
兄がムラクモさんとの話を終えたようだった。
「ムラクモちゃんが言うにはこの奥の先に何かあるらしい。」
「タチバナ家の産物ってなんでしょうね。」
マドカが答える。
そしてみんなで扉の前にきた。
「とりあえず入りましょう。あれっ、開きません…。」
私が扉をあけようとしたがビクともしない。
「どうやら強力な結界が張られているようですね。私にまかせてください。」
マドカがそう言うと錫杖をかかげ祈りを捧げた。するとゆっくり扉が開く。
「これはっ!?」
目の前にあったのはプロペラが付いた巨大な船だった。
「これは神の船!?まさか実在していたなんて・・・。」
「マドカさん、神の船っていったい?」
「タチバナ家に古くから伝わる書物で読んだことがあるんです。呪いの根源となったタチバナ一族の争いに使われたのがこの空飛ぶ船、神の船だそうです。」
「なるほど。数百年もここで眠ってたってことか。」
「そのようです。どうやら結界によりこの空間は時がとめられ劣化もしてないようですね。」
するとリアが話しかける。
「すごいおおきいおふねだねっ!リア乗ってみたいっ!」
「そうですね。とりあえず乗ってみましょう。」
マドカが答える。
そしてみんなで飛空艇に乗り込む。
「どうやら魔力船ではないようですね。どうやって動くんでしょうね。」
私が舵を握っても全く反応しない。
魔力をためる水晶も見当たらない。
代わってマドカが舵に触れたとたん船のプロペラが動き出した。
「えっ!?動いたっ?」
マドカが驚いて手を離すと停止した。
「マドカにしか動かせないみたいだな。でもこのままじゃ天井に激突するな。」
「そうですね。でもここにしまうことができたんですから出せるはずでしょうね。天井に切れ目が入ってますし、開くはずです。」
私が答えるとマドカが再び舵を握る。
しばらくプロペラがまわり、船が宙に浮くと天井が自動的に開いた。
そして空高く飛び上がる。
「わー、ホントに飛びましたよっ!」
私たちが喜ぶのもつかの間変な音を立てプロペラの威力を弱め再び神殿に降りた。
「どうやら故障しているようですね。」
マドカが言う。
「さすがに俺達じゃ直せないか。とりあえずまずは村に帰ろう。」
「そうですね。父に報告と相談もしないといけませんから神社に戻りましょう。」
そして2個目の宝玉、『黒の宝玉』を手に入れ村に戻った。
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