第36話祟り神がいても大丈夫だよね?
森に到着し、中に入ってすぐ黒い何かに遭遇した。
黒い犬のような影だった。兄が斬りかかるが全く効果がない。
「なんだこいつは!?魔物じゃ、ないな。」
「こいつは祟り神です!魔物とはちがって神力じゃないと倒せません。」
マドカがそう言って持っていた錫杖(しゃくじょう)で攻撃すると霧になって消えてしまった。
「祟り神は神殿の宝玉から溢れ出る邪気によって時々発生するんです。森から出ることはないんですが、発生した時はこうして祓っているんです。」
「そうなんですか。巫女さんの仕事は大変なんですね。」
「まぁ、代々やってきたことですから。私の母も巫女だったのですが、私が小さい頃に亡くなりました。呪いにより、タチバナ家の一族は長くは生きられないんです。1番長生きした人で50歳くらいだと聞いています。」
「そうか。ならなおさら呪いをとかないとな。」
兄がマドカに言う。
そしてしばらく歩くと神殿に到着した。
「わ〜、近くで見るとすごい大きさですね。」
一見すると体育館ほどの大きさがある。
「今扉を開けますね。」
マドカがそう言うと錫杖をかかげた。すると扉が自動的に開く。
そして中に入ると扉が閉まった。
中には祠のようなものがあり、その後ろにはさらに扉があった。
その中に入ると部屋の中央の祭壇に置かれている宝玉から黒いオーラのようなものが溢れていた。
そしてどこからともなく声が聞こえてきた。
『ニンゲン・・・・ニクイ・・・ニクイニクイニクイニクイ!!!・・・・・・ニン、ゲン、コロス!!!』
「なんだ今の声は!?」
兄が叫ぶと、宝玉から溢れ出るオーラが具体化していき、たくさんの真っ黒なイヌのような姿に変わっていく。
「これは、、祟り神?さっきのがこんなにたくさん!?」
「私もこんな数の祟り神は初めてです。みなさん、気をつけてください!!」
マドカが叫んだ。
「リア、湊、ミンティアと一緒に安全なところにいてくれ!物理攻撃が効かない相手には不利だ!」
「わかったわ。」
ミンティアが答える。
「リアちゃんとミンティアさんはボクが守るから安心して!」
湊がそう言うとリアとミンティアを連れて距離をとった。
「お兄ちゃん、きます!!」
すると祟り神が1匹兄に襲いかかる。
「ホーリーショット!!」
兄が聖魔法を放つと祟り神に当たった。
「やはり聖魔法なら効くらしいな。よし、それなら!」
兄が力を込めるとムラクモが白く光りだした。
「なるほど、聖魔法の魔法剣なら祟り神を斬れますね。」
私がそう言うと、さらに祟り神が襲いかかる。
すると後ろから矢が飛んでくると祟り神に直撃し、祟り神が消えていく。
後ろを見るとマドカが弓を構えている。
「マドカさん、今のは!?」
私がマドカに尋ねる。
「破魔の矢です。神力をまとった矢です!それより、まだきます!!」
マドカはそう言うとさらに矢を放つ。
「円月斬り!!」
兄が魔法剣で祟り神を倒していく。
しかし、倒しきれなかった祟り神の尾が兄を叩きつけた。
「ぐはっ!!」
攻撃をくらい兄が飛ばされ、口から血を吐いた。
「お兄ちゃん!!今治します!」
私が治癒魔法をかけると兄が立ち上がる。
「サンキュほのか。しかしキリがないな。この数は反則だろ。」
そんなことを話していると祟り神の様子がおかしい事に気がついた。
「なんだ、1箇所に集まっているぞ。まさか…。」
すると思惑通り、祟り神が1つになり巨大な真っ黒な犬の姿になった。
「マズいな。さっきの攻撃でもすごい威力だったのにあんなやつの攻撃を喰らったら即死レべルだぞ。」
「いえ、これは好都合です。複数相手するより、的も大きいですし、攻撃もかわしやすいはずです。祟り神の攻撃が私達に当たらなければ…」
私が言い終える前に祟り神が尻尾で攻撃してきた。
「テレポっ!」
私は兄をつかみ転移した。
すると破魔矢が祟り神に命中した。
祟り神の動きが少し鈍くなる。
「電光關火!!」
そのスキに兄が祟り神に斬りかかる。
右前足を直撃し、斬った先が消えた。しかし再生する。
「再生した!?」
私が叫ぶとマドカが口を開く。
「いえ、全体的な大きさが小さくなりました。効いています!!このままお願いします!!」
そしてさらに破魔矢を放ち、命中する。
さっきのように兄が斬りかかるが紙一重でかわされてしまった。
「く、同じ攻撃じゃダメか・・・。」
祟り神の攻撃を兄が回避している。
「なかなか攻撃できるスキができませんね。」
あらかじめ兄には加速魔法をかけているが、回避で精一杯のようだ。
「ユウタさん!もう少しこらえてください!私が今から祟り神の動きを止めてみます!」
すると、マドカは武器を床に置き代わりに装飾が施された扇子を手に持つ。そして神楽舞を舞いだした。
しばらく舞をおどっていると、祟り神の動きが止まる。
「お兄ちゃん、今です!!」
少し離れたところでマドカが破魔矢で援護している。
俺は祟り神の速く重い攻撃をなんとかかわすので精一杯だ。
(ヤバイ、このままじゃ俺の体力のほうが先に力尽きる。)
そんなことを考えていると、突然目の前の祟り神が止まった。それだけじゃない、俺の体も動かず、ほのかたちも止まっている。
すると頭の中に声が聞こえてきた。
『ご主人の力はそんなものか?しかたないの〜。今回は妾が力を貸してやろう。』
そして目の前に着物を着た少女が現れた。
「誰だ、お前は!」
『妾はムラクモじゃよ。安心せい、今は時間をとめている故攻撃は受けんよ。』
「時間をとめてって、お前はいったい…。」
『じゃからムラクモだと言っておろうに。ご主人が今その手に握っているムラクモじゃよ。まぁ、ムラクモに宿る力そのものということじゃな。』
「なんだって!?ムラクモに意思があるっていうのか。」
『そういうことじゃな。まぁ妾のこの可愛らしい姿はご主人にしか見えんがな。』
「可愛らしいって自分で・・・」
『妾は元は人間だったのじゃが、昔祟り神を封印する際人柱として祀られてムラクモとして御神刀になった。ご主人がムラクモの封印をといたことで祟り神も力を増したようじゃな。』
「そうか、俺がムラクモを折ったせいで。」
『いや、ご主人がムラクモを真の姿に戻してくれたのでな。妾も先程目が覚めて力を取り戻した。ムラクモの真の力とご主人の力が合わされば祟り神も倒せるじゃろう。タチバナのムスメが長年かけてだいぶ祟り神の力を鎮めたしの。そろそろ時間を止めるのも限界じゃ。妾はムラクモに戻るので後は頼んだぞ。また後での、ご主人よ。』
すると時間が動き出し、祟り神との戦闘に戻る。しかしさっきまでと比べてムラクモが軽くなった。まるで重さを感じない。
そして遠くから声が聞こえた。
「ユウタさん!もう少しこらえてください!私が今から祟り神の動きを止めてみます!」
するとマドカが神楽を舞いだした。だんだんと祟り神の動きが鈍くなり、完全に止まった。
「お兄ちゃん、今です!!」
ほのかが叫ぶ。
『ご主人、妾を信じるんじゃ!』
頭の中に声が聞こえた気がした。
「閃光朧連斬!!」
ムラクモが眩い光を放ち、祟り神に連撃を放つ。さっきまでと違い、身体が勝手に動く感じで攻撃する。
そして攻撃を終えると完全に祟り神は消失し、黒い宝玉だけが残っていた。
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