第34話雪山にきたけど大丈夫だよね?

勇者が四天王を倒した噂は近隣の街に瞬く間に伝わり、逃げていた港町パムの人たちも帰ってきたのだった。

そしてパムの町の宿に泊まり、翌日わたしたちはギルドに話しを聞きにいくことにした。

「いらっしゃいませ、勇者さま。この度は私達の町を助けていただきありがとうございました。今日はどのような御用で?」

ギルドに到着し、受付が言う。

「この大陸のどこかにこれと同じような『宝玉』ってものがあるんだが、どこにあるか知らないか?」

兄が受付に尋ねる。

「宝玉ですか。存在は聞いたことがありますが、どこにあるかまでは…。」

受付が答えると、近くにいた冒険者が話しかけてきた。

「宝玉の話なら聞いたことがあるぜ。この大陸のちょうど中央にある『聖域』に祀られているらしい。聖域には聖なる力を宿す者しか入れはいって噂だ。」

「聖域か…。ここからどう行くか分かるか?」

兄が冒険者に尋ねる。

「ここからだと西にまっすぐ行くと、大きな雪の山脈がある。ここは魔物の巣だから気をつけろ?山脈を越えると広い森がある。そこの中心にこの町よりも大きな巨大な建物がある。そこが聖域だ。」

冒険者が説明する。

「ありがとう、助かったよ。」

兄が礼を言う。

「とりあえず行ってみましょうか。」

「そうだな。まずは雪山脈を目指そう。」

そして私たちは町を出て西を目指した。

風力車でしばらく進むと雪山脈が見えてきた。

「わー、すごい大きい山ですね〜。白くてキレイですっ!」

「ここから先は徒歩だな。」

そして徒歩で雪山を登る。少し進むとヘビの魔物が現れた。

「神速剣!!」

湊があっという間に倒した。

続いて熊の魔物がでる。

「電光關火!!」

今度は兄が倒した。

しばらく進むとゴブリンの群れが現れた。

「く、数が多いな。」

兄が言うと私は杖を構える。

「ファイヤジャベリン!!」

無数の炎の槍がゴブリンたちを貫く。

「エアカッター!」

リアが風の刃を飛ばしゴブリンを切り裂く。

あっという間にゴブリンは全滅した。

しばらく歩いていると、足元に違和感を感じた。次の瞬間雪の塊が飛び出した。よく見ると雪でできたウサギの魔物だ。それも数え切れないほどの群れだ。

「ファイヤウォール!!」

私が炎でカベを作るとウサギがぶつかり溶けていく。そしてやがて静かになりファイヤウォールを解除すると背後から残っていた数匹のウサギが襲い掛かってきた。

「空間制御!!」

湊が制御空間を出すとウサギたちは反転した自らの勢いにやられ粉砕した。

「湊さんありがとうございますっ。複数同時のベクトル操作ができるようになったんですね。」

私は湊に話しかける。

「うん、すごい苦労したけどね。でもまだ10程度までだけど。」

ウサギを倒し、しばらく登ると天候が怪しくなってきた。ほどなくして雪が降り出す。

やがて雪は激しくなっていき吹雪になる。

「これはヤバイな。どこか雪がをしのげるとこを探さないと。」

兄がそう言って先導していると、後ろを歩いていたリアの様子がおかしい事に気がついた。

「リア、大丈夫か?」

兄がリアに尋ねる。

「ん、大丈夫だ、よ?リアがんばるんだ、から…。」

そしてリアが倒れる。

「リア、しっかりしてくださいっ!」

私はリアを抱きかかえ話しかける。

そしてリアが意識を失う。

「みんな、あそこに洞窟が!あそこに避難しよう!」

湊が指差す先を見ると小さな洞窟があった。そしてみんなで洞窟に避難する。

中に入り、魔法で焚き火をおこす。しばらく焚き続けて洞窟内が暖かくなると私が抱きかかえていたリアが目を覚ました。

「あれ?お姉ちゃん?ここは?」

「雪山の中の山脈ですよ。リアは寒さで意識を失ってたんです。」

リアに状況を説明する。

洞窟でしばらく休んでいるとやがて雪がやんだ。

外に出てみるとだいぶ雪が積っていた。そして登山を再開して少し登ったところで上の方からゴロゴロという音が聞こえてきた。

「なんか変な音が聞こえるわね。」

ミンティアが言うと、兄がリアに叫んだ。

「リア、すぐに俺達を乗せて飛んでくれ!!」

「わかったっ!みんな乗って!」

そして飛び上がった直後、巨大な雪崩が発生した。

「危なかった…。あと少し遅かったらみんな飲み込まれてたな。さすがに雪崩は防ぎようがないからな。」

しばらくすると雪崩は収まり、地上に降り立った。

その後、数時間登りやがて頂上にたどり着いた。

そこに待っていたのは壮大な景色だけではなかった。着物を着た真っ白な肌の女性が立っていた。

「ふふふ、久しぶりの人間の男ね。しかも二人も。今日はなんてツイてる日なんでしょう。」

女が話しかけてきた。

「お前は何者だ!?魔王軍の仲間か!?」

兄が尋ねる。

「魔王軍?いいえ。私はただのこの山に住まう雪女よ。ねぇあなた、私の夫にならない?私が幸せにしてあげるわ。」

雪女が兄に言うと兄が答えるより先に私が叫んだ。

「お兄ちゃんは私の旦那様になるんです!!私だけのお兄ちゃんです!!」

「いやいや、ならないからっ。じゃなくて誰が雪女の夫になんてなるか!!」

兄が雪女に叫んだ。

「そう。ならしかたないわね。氷漬けにしてずっと私のそばにおいてあげるわ!!」

雪女が手を突き出すと猛吹雪が襲いかかる。

「ファイヤウォール!!」

炎のカベを作ると、なんと吹雪の威力が強すぎてかき消されてしまった。

「エアウォール!!」

リアがすぐにフォローに入ってくれたおかげでしのぐことができた。

「魔術師ね。でも雪山で雪女に勝てるわけがないでしょう。」

するとさっきよりも勢いを増した吹雪がきた。

「ファイヤショット!!」

私は最大出力で炎を出す。なんとか互角の力で押さえ込むことができた。

「お兄ちゃん、今のうちに!!」

私が叫ぶと兄が雪女めがけて走り出す。

「電光關火!!竜の息吹!!」

兄が燃え盛る刀で攻撃をしかける。しかし、足場が悪いせいか攻撃が外れ、かわされてしまった。

そして雪女の吹雪が兄に向いた。

「テレポっ!!」

とっさに転移魔法で兄のそばに行き、兄を抱きしめ、吹雪を私の背中に受け止める。

「ほのかっ!!やめろ!!」

「お兄ちゃんは私が守ります!!!」

私が強く念じると、私と兄のまわりに光のカベが現れた。光のカベが私たちを吹雪から守る。そして攻撃がおさまると、私の手にはめていた指輪が砕けちった。

「これは、あの時ほのかに買った指輪が守ってくれたのか?」

どうやら露店商から買った指輪は防御の魔導具だったらしい。

「あ、あ…。せっかくお兄ちゃんに買ってもらった指輪だったのに…。許しませんよ……絶対に許しません!!!」

私は我を忘れ、雪女に向けて全力の炎を放った。それはさっきまでの炎とは比べ物にならないほどの威力で雪女の吹雪など簡単にかき消して雪女を消滅させた。

「ほのか落ち着け!もう敵はいない!」

兄が叫ぶと私は魔力切れで意識を失った。



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