第15話 高坂の独白

 ずっと、疑問だった。

 佐伯から“残り時間”を吸い取れないことが。

 “残り時間”を吸い取る……食事に失敗したと言うのに“死神”が何も言わなかったことが

 “直接的な殺し”を行うのか、と“死神”の行使に口を挟んできたことが。


 “死神”は佐伯の“残り時間”を吸い取れない理由を知っていたのではないか。或いは、“死神”が意図的に“残り時間”を吸い取らなかった。

 後者は考え難かった。

 悠久に等しいの時を生きる“死神”にたった一人の命が重要視されるとは思えない。仮に理由があったとしても、それは高坂には到底理解できないものだろう。


 “死神”は、既に選ばれている一つの選択肢を知っている。


 高坂の頭に浮かぶ、いくつかの事物が糸を結んでいく。その糸は高坂にしか見えない特殊なものだったが、事物と事物が繋がっているのは確かだ。


 そして、一つの仮説が導き出された。

 輪廻を巡らせる、最悪の仮説。願わくば、高坂はこれが選ばれることのない無数の選択肢、その一つであって欲しいと切に思う。

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