第11話 果てを知る

 酷く乾いた風と共に、果てない道を流離さすらう。

 照る太陽は道に陽炎かげろうを浮かばせ、肌を焼く。彼は過酷な環境下で水も取らず、ひたすらに、あるとも知れない目的地を目指していた。

 途中、足を止めることは何度もあった。しかしそれは、道を辿ることを諦めたのでは無く、間違った場所を歩んでいるのでは無いか、陥穽かんせいに弄ばれているのでは無いか、それらを確認するためだ。

 辺りを見渡せば、どこまでも平坦な土地が広がっている。行き先を知らせる看板も無い。もしそんなものがあったとしても、眩耀げんような太陽に反射して目に捉えることが出来ない事を彼は分かっていた。

 一通り、自分がどこにいるのかわからない、と言うことを確認すると彼はまた足を踏み出した。

 彼が歩くのは確かに存在する道だ。経年劣化が進み、所々に這い上がることのできない穴が空き、突き出たコンクリーが攻撃的に尖る、人が歩くことは困難な道だ。

 しかし、彼の目にはその困難な道は不確かなものだった。身体に蔓延はびこる不満や罪悪が彼に目に、一歩手前が断崖絶壁であるかのように演出していた。それでも彼は目に見えるものを否定して歩き続けた。

 途方なく歩く彼の元に、1羽のカラスが道の向こう側から飛んできて、先にあるものを知らせてくれた。倒れる事なく進み続ければ、望む結末が待っていると、しゃがれた声が教えていた。

 天網恢恢疎てんもうかいかいそにして漏らさず。

 目的を遂げたとしても、罰が下ることは間違いないのだろう。むしろ、それは彼の求むところだった。

 高坂はまた歩み始める。両親を生き返らせる為、自分の数え切れない罪が報われる為。

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