お湯をかけて約5分 即席冷凍彼女

りらるな

プロローグ 即席冷凍彼女

 2100年────


 男は不思議な袋にお湯を入れていく。簡素な家の中。静かな部屋で袋が膨張していく音だけが聞こえる。


 最初はカップ麺4つ分の大きさだったが、今では顎の部分まで縦に膨らんでいる。


 お湯を入れてから約5分。


 独特な音が鳴って、袋の中から一人の女の子が現れた。

 その瞬間、男は女の子を養い、女の子は男に命の保証されながらこの時代を楽しむ契約が自動的に結ばれる。


 この景色は何ら異質ではない。

 当たり前の光景である。


 「即席冷凍彼女」という商品がこのような不思議な現象を起こしている。


 カップラーメンなど即席麺のようにお湯をかけて何分か待つと完成する。最初は小さな袋だが、お湯を入れて待てば人間サイズに戻る。


 2000年代の人々は理解が難しいだろうが、今ではフリーズドライの研究が進み生身の人間も冷凍保存できるのだ。

 保存されれば歳を取らず、見た目も変わらない。ただ、未来にタイムスリップするだけ。

 数年、数十年後、数百年後彼女らは解き放たれる。


 5000円を払って商品を購入した男の手によって……


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