空を切る包丁。






私は、何を望んでいたのだろう?






博が勝ち、私があの詰まらない日常に戻る事…






それとも、誠也君が勝ち、新しい生活、どうせ直ぐに飽きられ一人になると分かっていても?








どっちの結末も私には幸せが訪れない…何故、何故私だけ幸せが待ってないの…






二人の争う中、私は、自分の事しか考えられなかった、包丁を振り回している以上、大怪我や死が待っているかもしれないのに。






「…くそ、何でこんなことに、なったんだろ、くそ、我が儘な元カノと別れて、やっと…普通の女性と出会えたのに…不倫かよー。」






「……え。」






今のが、誠也君の本心…?








「ガキ…やっぱりお前には、恋愛は早かったんだな。」






博の蹴りが包丁を飛ばした。






「くそー。」








「観念しろ、ガキ…お前に奈緒美は勿体無いんだよ。」








ドス。








「…え?奈緒美…」






「ぐふっ…奈緒、美さ…ん…」








「ごめんね…ごめんね…」






床に落ちていた、小さな手紙…






白い紙に、黒い字、モノクロのはずのその小さな紙切れが…




赤に、染まっていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る