第22話 襲撃

「私達は冒険者です。手が足りないようなので参加するのですよ」

「でも…っ」

「大丈夫ですよ。ちょっと私も手伝ってきますね」


まだ何か言いたそうなエメアを馬車に残し私も彼女の手伝いへと向かいます。少しは働きませんとますます彼女のレベルに置いておかれてしまいますからね。


「ファイアストーム」

「ぬあーアルクウェイずるいのじゃーっ」

「ふふっ 早い者勝ちですよ」


私が範囲魔法でゴブリンを倒しますと彼女から文句が出ます。言葉にもしましたが早い者勝ちです。彼女だって剣の一振りで何匹も倒しているのです。


「はあああああああっ …っし」


こうしてみますとレベルが低いとはいえ流石勇者という感じですね。護衛の人達より全然動きがいいのです。もちろん護衛の人達も頑張ってゴブリンを倒しています。ですがやはり一匹一匹倒していますので、少し危うくみえますね。


「あの子達って雑用だろう…?」

「つえぇな」

「まけてらんぇーぞ!」


全くその通りです。雑談する余裕があるくらいならもっと働きなさいといいたいですよ。予想よりも数が多いので少し面倒なのです。横目で彼らをちらりと見た私は軽くため息をつき魔法を使います。…ちまちまと面倒ですほんと。


「すみませんっ 少し広範囲の魔法使ってもよろしいでしょうか?」

「んあ~? 俺達はどうすればいいんだ?」

「こちらの方へ少し後退してください」


数の多さにもうまとめて処理することにいたしました。先ほどから彼女も頑張っていますが少し飽きてきたような顔をしていますので。


「ではいきますっ」


私は両手を前に突き出しますと魔法を使用しました。その魔法はグランドウォール。ストーンウォールよりも強度があり、広範囲に壁を作ることが出来ます。その土で出来た壁でゴブリン達を覆いつくします。目の前が壁で覆われゴブリン達の姿が見えなくなったことに護衛の人達も口を大きく開けて驚いています。


「はは…で、どうするんだこれ?」

「これですか? そうですね…」


ゴブリンは壁の中へ閉じ込めましたがどうするか考えていませんでした。少し壁が高いので私も彼女も上には上がれません。まして宙を飛ぶようなスキルはまだもっていないですからね。


「ではこうしましょうか」


私は再び両手を前に突き出し魔法を使用しました。今目の前にありますグランドウォールを操作するのです。それによって壁で囲まれている範囲が徐々に狭くなっていきました。つまり…追い詰められたゴブリン達はお互いの圧力によって体をつぶされているのです。


「うわぁ…」

「ひぃっ」

「子供のやることか…?」

「あ、これ以上は無理なようですね」


目の前にあった壁は今では円柱状の背の高い筒のようなものになっています。上のほうで多少腕や足がはみ出ているのが見え、そこから壁を伝って血が流れていますね。


「お、おい…どうするんだそれ」

「あ、魔石とかどうしましょうか?」


私の言葉に護衛の人たちはお互い顔を見合わせ困惑しています。まあ…そうでしょうね。魔石を回収するとなりますとこの壁を取り払わないといけないと思うでしょうから、その後目の前に広がる惨状でも想像したのかもしれません。


「坊主が倒したんだから坊主が貰っておけばいいんじゃないか…? なあ??」

「そ、そうだなゴブリンの魔石とかあの数解体するのも骨が折れるし…」

「……」


なるほど、そういった考えもあるのですね~ こちらとしてはたとえクズ魔石だとしても魔石は魔石。使い道は色々とあるというものです。ありがたくいただいておきましょう。


「そういうことでしたらありがたくいただきますね」


思わぬところで大量の魔石が手に入りました。少し嬉しくなって笑顔も自然とうかぶというものです。私はその円柱状の壁に手を添えますとそのまま空間収納へ放り込みました。


「「消えた!?」」

「…っ」


ちょっと収納の中で整理しないといけないですね。容量は大丈夫ですが…30…50…まだゴブリンの魔石がありますね。ん、81個で止まりました。どうやら回収したゴブリンの魔石は81個だったみたいですね。


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