第5話 ギルドで登録しよう
彼女を抱えたまま門をくぐろうとすると、門番だと思われる人に声をかけられた。
「おや、その子怪我をしたのかい?」
「あーはい。転んだだけですけども…」
何を思って私達に声をかけたのか…まあ怪我をした彼女を抱えているためだとは思うのですが、今までの生活を考えると簡単に油断をしてはいけないでしょう。
「ほら…これで治ったな」
声をかけてきた男性がなにやら液体状のものを彼女の足に振りかけてきた。瓶の形状とそこから発する匂いで薬だということは理解できる。だがその後がよくなかった。何を思ったのかこの男性は彼女の頭を触ったのだ。
「なっ…何を…わら…むぐぅっ んーーっ んー…」
「直していただいてありがとうございます。えーと…ちょっと代金は持ち合わせていたいのですが…」
「このくらい気にするなって」
「はい…ではいずれ何かでお礼をさせてください」
彼女の口を手でふさいだまま私は軽く頭を下げると、門番の男と別れた。少しだけ町の中を歩いて進み、最初の角を左へと曲がる。
「ぷはぁっ こらーーっ アルクウェイなんで口をふさぐのじゃっ」
「ではお聞きしましが、何を言われるおつもりでしたか?」
「あやつは勇者であるわらわを子供扱いしたのじゃぞっ 文句くらい言ってもいいであろうが!」
「些細なことで文句…勇者がですか?」
「ぐっ…」
言葉を詰まらせた彼女は少しだけ悔しそうな顔をしたのだが、それ以上騒ぐことはしなかった。なので私は抱えていた彼女を足元へとおろす。
「さて、冒険者ギルドを探しましょうか」
「そうだ、冒険者ギルド!」
目的を思い出したのか彼女の顔に再び笑顔が戻ってきた。膝の痛みもなくなったのもあるのだろうけれど、やはり怒っているよりはそのほうが断然いいだろう。まあ…色んな意味で?
町の中にいた人に話を聞きながら私達は冒険者ギルドを探すことにして再び歩き出す。すると冒険者ギルドはあっさりと見つかった。というか反対側にある門のすぐ傍にあった。
「ここが冒険者ギルド…」
彼女は見上げるようにその建物を眺めている。3階建ての木造作り。小さな彼女にとっては見上げるほどの高さがある。まあそれでも魔王城よりは小さいのだけど、そんなことは彼女は気が付いてもいないようだった。
中へ入ると多少なりに人がいて流石の私も少しだけ緊張する。誰がどのような目的で私達に近づいてくるのかわからないのだ。現在LVは1…最弱な2人なのだから警戒するのに越したことはないであろう。
「冒険者ギルドへようこそーっ そこのお兄さんは新規登録者ですか?」
「な、なぜわかるのですか…」
「見たことがないお顔だからです」
「はあ…まあそうです」
声をかけてきた女性に案内されるまま私達はカウンターへと近づいた。どうやらここで冒険者登録をすると仕事がもらえる仕組みみたいだ。話に聞いてはいたのでそれが間違いじゃないことがわかりほっとする。
「ではこちらの用紙に記入をお願いしますね」
登録すべき内容をどうやら紙に書き出すようだ。上から…名前、年齢、種族、職業…職業!? 職業も書かなければならないのか?? 流石に魔王とはかけないだろう…なら魔…真? あー…魔法使いでどうだろうか。魔法を使うことだけは嘘ではないし。
「おい、わらわも登録じゃっ」
「え…あなたも? ちなみに年は??」
「この間12歳になったのだ」
「12かぁ~…じゃあ仮登録しか出来ないけどそれでいいかな?」
「ん? よくわからないが登録できるのならそれでいいぞ」
私が職業について悩んでいると彼女も登録用紙を受け取っていた。そういえば冒険者登録は15歳からだと聞いたことがあるのだが彼女は大丈夫なのだろうか? 用紙の記入を終えた私と彼女はそれを女性に渡すと記入もれがないか確認をされた。
「こっちは問題ないです。で…勇者??」
「わらわは勇者なのじゃっ」
「あら…とてもかわいらしい勇者さんね」
「ははは…」
まさか彼女が馬鹿正直に職業を書いているとは思いませんでした。でも女性があまり信じていないようでほっと胸をなでおろす。
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