第33話

唇を離し


「俺でいいの?」


と聞いた。


ヒカルは体を預けたままコックリと頷いた。


ゆっくりヒカルの顔を起こし、もう一度じっと目を合わせ、頬にそっと手を当てて、その濡れた髪の毛に手をすべり込ませ、顔を引き寄せて、再びキスをした。


今度は、先ほどのように短い時間ではなく、お互いの唇の圧力を感じるくらい強く求めあった。


体を入れ替え、寝かすと、唇を重ね、少しだけ開いたヒカルの唇の隙間にそっと舌を挿し入れた。

ヒカルは抵抗することなく、僕の舌の侵入を許し、自ら応戦してきた。


火が付いたように一気に気持ちが高ぶり、ヒカルの唇を奪いながら、上着を脱ぎ、裸の胸をさらすと、その両手でグッとヒカルの体を抱きしめた。


それに呼応するようにヒカルも自らの体を僕に絡め、その美しく長い足を僕の太腿に擦り付けるように体を寄せた。


ヒカルのパジャマを脱がし、その華奢な体つきからは想像できなかった形のいい乳房が晒されると、思わず手で掴み、顔を近づけるとヒカルの敏感な突起に吸い付いた。


「あっ……」


小さな吐息とともに声が漏れた。


もう、頭では何も考えられなくなり、目の前のヒカルの体を欲望のまま求める、ただのオスと化していた。


ヒカルも、もうすべてをあらわにして、体中にキスするたびに、その体をピクピクと反応させていた。


ヒカルの一番敏感なところに指をやると、すでに溢れるくらいになっていて、いつでも受け入れられる状態になっていた。


しかし、わざとじらし、指でヒカル自身をゆっくりとかき回していった。


ヒカルももうたまらなくなり、堪えていた声を殺すことなく出し始めた。


しばらくすると、ヒカルの体は突然硬直して、そのかわいらしい唇から


「いく!いっちゃう!」


と声を漏らした瞬間、のけぞるように体をはねさせ、一気に力が抜けてピクピクと痙攣していた。


「いっちゃった?」


そっと耳元でささやくと、うっすらと目を開けて、コクリとうなずいた。


僕は無抵抗なヒカルの手を僕自身にあてがうと、ヒカルは一瞬ピクッと抵抗を示したが、そこからは自ら、その硬度こうどを確かめるように、優しくその輪郭をなぞった。

そして、ゆっくりと上下に動かし始めると顔を覗き込み


「気持ちいい?」


と聞いてきた。


頷くと今度は、そこへ自ら顔を近づけ、ジッと見つめ、僕の顔とを交互に見ながら、小悪魔のように微笑んだ。


僕の哀願するような目で察したのか、ついにそのかわいらしい唇を近づけ、軽くキスをしたかと思うと次の瞬間、包み込むようにその小さな口に含み、その中で激しく舌を動かした。


「うっ!」


思わずのけぞり、声が漏れた。


ヒカルは先ほどのお返しとばかり、優しく、時に激しく愛撫したため、それはより一層、硬さを増した。


ヒカルの唾液と僕自身の発露が混じりあい、硬直したそれはぬるぬるとして光っていた。


「お願い……」


ヒカルは僕自身をそっと握りながら、哀願するように下から顔を見つめた。

僕は無言でうなづくと、ヒカルの体を支え、そっと寝かせた。


その、美しく均整のとれた両足を開くと僕に愛撫をして益々感じたせいか、さっきよりも溢れているその入口に僕自身をあてがった。


「あっ……」


可愛らしい声を漏らすヒカルを見ると、恥ずかしそうに僕を見つめていた。


「いいのかい?」


無言で頷くのを確かめた瞬間ヒカルの奥へ侵入した。


「あぁ!」


ヒカルがたまらずに声を漏らす。

ヒカルの一番深いところまで到達すると思わず尻に力が入った。


そのあとは、 頭の中に霧がかかってきて目の前のヒカルの身体を貫くことだけに全ての力を傾けていた。


「あぁぁ!」


高まりを感じているヒカルを見て、さらに速度を上げていった。


そして、ヒカルの身体がその頂点に達するにつれ、僕の本体を押し出そうとしているのを感じ、さらにそこをこじ開けながら前に進むと、その侵入にヒカルは抗うことができず、より深くまで僕を受け入れていく。


そして、ついに限界を迎え、互いに唇を求め、むらぼり合い、激しく絡ませたあと、 一本のきらめく糸を引いてお互いがけ反り絶頂を迎えた。


「クッ!!」


思わず漏れた息と共に、ヒカルから離れることができず、不覚にも、その熱い液体をヒカルの中にすべてぶちまけてしまった。


お互いに身体の一部が痙攣して同じ動きを繰り返していることを感じた。


「ごめ……」

「しっ……」


中で果てたことを謝ろうとした僕の唇にヒカルはそっと一本指を立てて、その言葉を遮った。


「もう少し……」

「え?」


「もう少し、このまま……繋がっていたい……」


言いながらヒカルは僕の胸に顔を埋めた。

愛おしさが、グッとこみ上げてきて、堪らず強く抱きしめる。


「ありがとう……松木さん」


礼を言うのはこちらの方だと思いながら、言葉を返すことが出来なかった。


「ずっと、一緒にいてくれますか?」


そう言われた瞬間、深雪の顔がフラッシュバックのように浮かんだ。


埋めていた顔を上げて僕を見つめているヒカルの懇願するような潤んだ瞳に抵抗することは、どんな男でもできないだろうと思った。


「もちろんだよ。ずっと 一緒にいよう」

「嬉しい!」


そういうとヒカルは再び、僕の胸に顔を埋め、猫のように丸くなった。

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