願いと謀略

 ドカッ!


 ドラグニアは力の限り壁を殴りつけた。


「おい、直ぐに部隊長5名をここに集めろ・・・直ぐにだ!」


「は、はい!」


 それまでのやり取りを見て腰を抜かしていた兵は、ドラグニアの怒号に勢いよく立ち上がると、直ぐに部屋を後にした。


「二日後か、絶対に阻止してみせる!」


 強く握りしめた拳からは、ドラグニアの鮮血が滴り落ちていた。

 

【願いと謀略】


「・・・以上が、ザミエルからの指令だ」


「ふ、二日後ってそんな!」


「急過ぎます、それにもうこの村の人間達は、我々の領民なのですぞ!」


「くそっ! ふざけやがって!」


「わかっている・・・」


「わ、わかってるってそんな、少将どの!」


「黙れ! 分かっていると言ったのだ、少し話を聞いてくれ」


 あまりの突拍子のない話に、副官たちは慌てふためき取り乱したが、ドラグニアの一声で部屋は再び静寂を取り戻した。


「ザミエルの言っていた時間までは、まだ一日以上の余裕がある、俺は今から村長の元へ出向きこの村を捨て避難する事を進言するつもりだ」


「で、ですがそんな事をしたら反逆の罪に」


「知った事か! それに私がザミエルから受けた命令は、二日後にこの村を焼き払いドリアードへ侵攻するという事だ、それ以外の動きに関しては何ら指示は出ていなかった」


「・・・であれば、我々がするべきは」


「あぁ、俺たちはすぐさま村人達の避難を誘導し、出来るだけ早くこの村を無人の廃村にする」

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