辺境の町②

村は本当に『転ス〇』とか『このす〇』とかに出てきそうな簡素な造りで、

 風車塔の様な建物がある広場を中心に、数十件の家と畑、牛舎などが立ち並ぶ構成になっていた。


 いや、好きだからなんですよ? 愛ゆえになんですよ? エクスプロージョン!!


「よし、それじゃあ先ずは、聞き込みだ」


 蒼星は村の一番人の居そうな広場で【魔人】についての聞き込みをすることにした、もちろんディケーにある資料には一通り目を通したし、


 あのおっさんの犯した罪は何に変えても拭う事が出来ないのは分かっている、でも蒼星にはどうしてもドラグニアがそんな非道な大量殺人を行った様には思えず、少しでもあの人の罪を軽くする方法がないのかを探るというのも、この旅の目的の一つになっていた。


「え、えっとその、すみません」

「・・・はい? どなたですか?」


 蒼星が斜め下を向いたまま、消え入りそうな声で話しかけると、広場の噴水で洗濯をしていた中年の女性が、怪訝そうな表情を浮かべ返事をした。


「えっとその、実は俺ディケーの町から来たばかりでして、もしご存知でしたら【魔人】ドラグニア・ラルスについて聞かせて」


 バッシャーン!


 蒼星は、女性が持っていた洗濯桶いっぱいの水を突然頭からぶっかけられた。


「え・・・えっ」


「あ、あんたがなにもんかなんか知らないけどね! この村で二度とその名前を口にするんじゃないよ! この村にはあの悪魔に家族を殺された者も大勢いるんだ! よそ者が興味本位で首ツッコんでんじゃないよ!」


 女性はものすごい剣幕でまくしたてると、桶と洗濯物を急いで回収しそのまま走り去ってしまった。


「はぁ・・・マジかよ」


 蒼星は突然の思わぬ歓迎に鬱々としながら、すぐにこの村におけるドラグニアの認識を理解した、この村の人々にとって、ドラグニア・ラルスという男は、その名の通り悪魔の様な所業を行う人間【魔人】そのものなのだ。


「はぁ・・・どうしよ」


 蒼星はそのまま噴水の縁に座り込むと、うなだれる様にうつむいた。


「あ、あのー、大丈夫ですか?」

「えっ」


 声を掛けられ振り向くと、村の民族衣装を身に纏った可愛らしい女の人が、心配そうに蒼星の顔を覗き込んでいた。


「いや、ははっ」


 蒼星はずぶ濡れの恥ずかしさを隠す様に、自嘲気味に笑って見せた。


「あの、私話しを聞いてしまって」

「え、あの、それはちょっとした手違い、と言いますかなんと言いますか」


 蒼星は先ほどのこっぴどい経験が頭をよぎり何とか取り繕えないものかと、身振り手振りで無罪を主張した。


「少し、私の家でお話聞かせて頂けますか?」


 彼女の視線は先ほどの村人とは違い、うつむきがちに顔を赤らめてモジモジしていた。


「え・・・はい」

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