白狼という男

「しょ、少将どの・・・これは」

「あぁ、これは一体どうなっている・・・」


「し、少将どの・・・申し訳ありません、我ら公国の恥さらしを、どうかお許しください!」


 ラルスは、目の前に広がる風景の異常さに、あっけに取られてしまっていた。


 大隊での北斜面進行の裏をかいた南斜面への敵の強襲、元々戦闘が起きない可能性が高かった南斜面へは、若い兵や負傷兵、国に家族を残している者たちなどを優先して配置していた為、伝令からの報告を聞いた時、ラルスは自らの失策で戦死させてしまったであろう兵たちへの償いの為、自決する事も覚悟して南斜面へと向かっていた、だが目の前に広がる光景はあまりにも想像とはかけ離れたものだった。


 ラルス達大隊が南斜面に到着すると、配置した100名を超える兵が全て肌着1枚に無力化され、一本の大木に縄で括りつけられていた。


「・・・どういう事だ、これは」


「申し訳ありません少将どの! 我ら中隊は、少将どのの指示に従い南側斜面に分散する補給部隊の救援に向かいましたが、救助を終え拠点への帰還中に敵中隊と接敵、そのすさまじい戦闘力の前に何もできず戦死を覚悟しました、ですが敵中隊は我らを無力化すると、この大木の周りに集め縄で一括りに・・・


 そのまま武器や甲冑などを持ちこの場を去りました」


 中隊長は涙ながらにそう言うと、うなだれる様に頭を垂れた。

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